物流時間管理の基本

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SCM 

1. 標準化の必要性

 製造メーカーであれば必ずといってよいほど整備されているのが「標準時間」です。この元には標準作業が決められており、誰もがその通りに仕事を実行することがルールです。作業手順を決められたとおりに行うとともに、作業時間も決められた時間で実行することが求められます。原則として決められた手順で行えば、かかる時間に大きな差は出ません。一方で物流はどうかというと、標準作業が決められていない現場が多いと思います。その結果として作業者によって出来高にバラつきが出ます。かかる時間にも差があります。品質にもバラつきが出ていることも事実です。つまり仕事が標準化できていない物流作業が多いことによるロスが多々あるということです。ではなぜ物流作業は標準化されていないのでしょうか。決して標準化ができない仕事ではない物流ができていない理由を探る必要があります。
 
 一つに「標準化」そのものを知らないということが考えられます。特に物流事業者の場合にありうることです。製造メーカーであれば標準化は当たり前なので、物流にも標準作業を導入しようという動機づけが働きますが、そもそもそういった環境にない物流事業者ではありうることです。二つ目は「標準化」を行うスキルを持った人がいないことが挙げられます。これは主に製造業で理由にされることです。やりたいけど、できない、という考え方です。三つ目は「標準化」は物流になじまないという誤解があります。半ば言い訳に近いものがありますが、同じものを繰り返し生産する製造とは物流は違うと言いたいのだと思います。しかしこれは全くの誤解ですので、物流作業でも標準化は可能だということを素直に学び、理解することが必要だと思います。ですから物流事業者でも製造等の他の事業者であっても最初に「標準化」の大切さを学び、それを理解してから取り組む必要がありそうです。まず作業ごとの時間値を決める前に、この「標準化」を先に進めることが求められます。
 

2. 標準時間の設定

 物流作業を標準化することは真っ先に実施したいことです。標準化について手を抜くことによって会社に発生するデメリットは数え切れません。もしかしたらそのデメリットにすら気づいていない会社もあるかと思います。その一つが『労働生産性』です。ある会社はある物流作業を1分でやっているとします。何の疑問を持つこともなく。しかし同じ作業を他社では30秒でこなしているかもしれません。ということは自社は他社に負けていることになるわけですが、それに気づいていないことになります。この現象は社内でも発生している可能性があります。ある人は1分でやっている作業を、別の人がやると30秒で済むことがあります。この差をベテランだから、新人だから、あるいはアルバイトだからという訳の分からない言葉で片づけていませんでしょうか。たしかに経験年数の差が処理時間の差になることもあります。しかしその差を分析してみると作業手順の差が大半であることがわかります。つまり会社側が手順を示していないため、気が利く人とそうでない人の差が処理時間の差となって表れているだけなのです。
 
 そこで標準作業の設定の次に標準時間の設定が必要となるのです。手順があればそれぞれの手順ごとに時間値を定めていきます。フォークリフトに乗車する動作で何分、30m走行で何分、部品を指定場所に投入で何分、といったように各プロセス単位に時間を定めるのです。そしてその時間値を合計すると「フォークリフト供給」という作業の時間値になります。これが会社のルールとなります。つまりそれぞれの作業者はフォークリフト供給をその時間で行う必要があるわけです。もし作業者で時間値に差が出たとしたら、標準作業の手順が守られているかチェックすべきでしょう。もしルール違反(標準作業以外の作業)を行っていたとしたら、それは指導して是正させる必要があります。もちろん、標準作業は常に不変であるわけではありません。現場改善を行うことでより良い標準作業に改定していく必要があります。
 

3. 物流標準時間の目的

 物流標準時間を導入するに際し、目的を明確にする必要があります。この目的が的外れな場合、長続きしない標準時間が出来上がってしまう可能性がありますので注意が必要です。まず物流のペースメーカーの役割について確認しておきましょう。今日はどの物流作業をどれくらい、何時何分までに終えなければならないのか、これは物流現場管理の基本です。このベースになるものが物流標準時間です。物流標準時間×物量が必要工数です。かかる時間がわかるので、ゴール(終わらせたい時刻)から逆算で着手時刻を定めることができます。この計算を行って仕事を組み立てることで秩序ある物流現場作業が成立するのです。常にペースメーカーが必要です。これは最優先課題になると思います。
 
 次に物流生産性について確認します。物流業は日本では労働生産性が最も低い部類に入ると思います。ですがそのことに気づいていないか、生産性を数値で示せていないか、いずれにしても問題があることは事実。物流標準時間を使って必要工数を計算する...
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1. 標準化の必要性

 製造メーカーであれば必ずといってよいほど整備されているのが「標準時間」です。この元には標準作業が決められており、誰もがその通りに仕事を実行することがルールです。作業手順を決められたとおりに行うとともに、作業時間も決められた時間で実行することが求められます。原則として決められた手順で行えば、かかる時間に大きな差は出ません。一方で物流はどうかというと、標準作業が決められていない現場が多いと思います。その結果として作業者によって出来高にバラつきが出ます。かかる時間にも差があります。品質にもバラつきが出ていることも事実です。つまり仕事が標準化できていない物流作業が多いことによるロスが多々あるということです。ではなぜ物流作業は標準化されていないのでしょうか。決して標準化ができない仕事ではない物流ができていない理由を探る必要があります。
 
 一つに「標準化」そのものを知らないということが考えられます。特に物流事業者の場合にありうることです。製造メーカーであれば標準化は当たり前なので、物流にも標準作業を導入しようという動機づけが働きますが、そもそもそういった環境にない物流事業者ではありうることです。二つ目は「標準化」を行うスキルを持った人がいないことが挙げられます。これは主に製造業で理由にされることです。やりたいけど、できない、という考え方です。三つ目は「標準化」は物流になじまないという誤解があります。半ば言い訳に近いものがありますが、同じものを繰り返し生産する製造とは物流は違うと言いたいのだと思います。しかしこれは全くの誤解ですので、物流作業でも標準化は可能だということを素直に学び、理解することが必要だと思います。ですから物流事業者でも製造等の他の事業者であっても最初に「標準化」の大切さを学び、それを理解してから取り組む必要がありそうです。まず作業ごとの時間値を決める前に、この「標準化」を先に進めることが求められます。
 

2. 標準時間の設定

 物流作業を標準化することは真っ先に実施したいことです。標準化について手を抜くことによって会社に発生するデメリットは数え切れません。もしかしたらそのデメリットにすら気づいていない会社もあるかと思います。その一つが『労働生産性』です。ある会社はある物流作業を1分でやっているとします。何の疑問を持つこともなく。しかし同じ作業を他社では30秒でこなしているかもしれません。ということは自社は他社に負けていることになるわけですが、それに気づいていないことになります。この現象は社内でも発生している可能性があります。ある人は1分でやっている作業を、別の人がやると30秒で済むことがあります。この差をベテランだから、新人だから、あるいはアルバイトだからという訳の分からない言葉で片づけていませんでしょうか。たしかに経験年数の差が処理時間の差になることもあります。しかしその差を分析してみると作業手順の差が大半であることがわかります。つまり会社側が手順を示していないため、気が利く人とそうでない人の差が処理時間の差となって表れているだけなのです。
 
 そこで標準作業の設定の次に標準時間の設定が必要となるのです。手順があればそれぞれの手順ごとに時間値を定めていきます。フォークリフトに乗車する動作で何分、30m走行で何分、部品を指定場所に投入で何分、といったように各プロセス単位に時間を定めるのです。そしてその時間値を合計すると「フォークリフト供給」という作業の時間値になります。これが会社のルールとなります。つまりそれぞれの作業者はフォークリフト供給をその時間で行う必要があるわけです。もし作業者で時間値に差が出たとしたら、標準作業の手順が守られているかチェックすべきでしょう。もしルール違反(標準作業以外の作業)を行っていたとしたら、それは指導して是正させる必要があります。もちろん、標準作業は常に不変であるわけではありません。現場改善を行うことでより良い標準作業に改定していく必要があります。
 

3. 物流標準時間の目的

 物流標準時間を導入するに際し、目的を明確にする必要があります。この目的が的外れな場合、長続きしない標準時間が出来上がってしまう可能性がありますので注意が必要です。まず物流のペースメーカーの役割について確認しておきましょう。今日はどの物流作業をどれくらい、何時何分までに終えなければならないのか、これは物流現場管理の基本です。このベースになるものが物流標準時間です。物流標準時間×物量が必要工数です。かかる時間がわかるので、ゴール(終わらせたい時刻)から逆算で着手時刻を定めることができます。この計算を行って仕事を組み立てることで秩序ある物流現場作業が成立するのです。常にペースメーカーが必要です。これは最優先課題になると思います。
 
 次に物流生産性について確認します。物流業は日本では労働生産性が最も低い部類に入ると思います。ですがそのことに気づいていないか、生産性を数値で示せていないか、いずれにしても問題があることは事実。物流標準時間を使って必要工数を計算するとともに、実際に要した工数を把握します。たとえば必要工数が20時間とし、実際工数が24時間だったとしましょう。そうすると、ここに4時間のギャップが発生し、20%余分に時間がかかったことが明確になります。これで生産性を数値化したことになりますよね。各職場でこのギャップがどれくらいあったのかを把握できるのは物流標準時間があってこそです。もちろん、ギャップが小さい職場ほど生産性が高いということがわかります。そして正しい所要人員の算出も物流標準時間があればできる話です。つまり物流標準時間は多方面での活用ができるすぐれた管理ツールであると言えるのです。物流は昔から数字で語ることが苦手です。そのために誤解されることがあったり、低く見られることがあったりしています。
 
 自分たちの仕事を評価して欲しい、もっと気にかけて欲しいと考えるのであれば、今回お話した標準作業の設定と標準時間の設定は必須項目です。あまり難しく考えずに、今の仕事を標準化してみましょう。そしてその仕事に標準時間を付けてみましょう。これを行うことで今まで見えていなかった風景が見えてくること確実です。物流もカンコツ度胸のKKDからはいい加減脱却すべき時期に来ています。物流は科学的に実施していくべきなのです。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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