【新環境経営 連載 主要目次】
新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、その後、省エネ、創エネ、畜エネについて紹介してきました。最後に、環境経営を行っている事例をいくつか紹介してきました。本連載の最終回は、「人工物の飽和」についてです。
1. 「人工物の飽和」について
元東大総長で現在三菱総合研究所理事長の小宮山宏さんは「人工物の飽和」について、以前より一貫して発信されています。
『日本をはじめ先進国では、エネルギーを消費する家やビルの床面積、自動車の数、工場などが頭打ちです。こうなるとスクラップした分だけ新しいものを作れば足りる社会になる。消費する場が増えず、効率は上がるので、エネルギー消費は減っていく。日本はここ10年でエネルギー消費量が平均して年1.6%ずつ減っていて、今は1990年ごろと同じ水準。2050年には「人工物の飽和」が世界中で起こる。人工
物が飽和すれば新たな金属資源はいらない。廃品からリサイクルで取り出せばいい。化学製品も木材を使った生分解性のものに置き換えればいい。日本は工業製品の加工貿易を得意としてきたが、どこでも工業製品が作れる時代にき残れるシナリオではない。人工物が飽和のこれからの時代は、エネルギーと資源の自給国家を目指すべき。』と言われています。
2. 日本の電力消費量見通し
パリ協定は、今世紀後半に「脱炭素社会」を目指すと宣言しました。2050年には、エネルギーの相当量が電気になり、電気の大半を風力、水力、太陽光、バイオマス、地熱等の再生可能エネルギーでまかなう社会です。再生エネルギーの価格は、急速に下がってきています。
又、省エネは我慢といったイメージがありますが、冷蔵庫やエアコンなどの家電製品は省エネ化が進んでおり、定期的に買い替えることで、エネルギー効率がよくなり元が取れます。住宅を高気密・高断熱にすると、光熱費が減ると同時に、心疾患やアレルギーが減るでしょう。生活の質を上げながら省エネすることが可能です。断熱住宅の義務化が進み、2050年には電力消費量が現状の3分の2程度になると予測されています。
3. エネルギーと食の自給自足
人口物が飽和すると、後はリサイクルしかないでしょう。17世紀の科学の時代と、20世紀の技術の時代を経て、人口物は作って壊して再利用の方向、使い捨ては有り得ない時代です。そうなると、21世紀、22世紀は、エネルギーと食の自給自足がテーマとなるでしょう。
(1) エネルギー
エネルギーは再生可能エネルギーでまかなえる目処が付いたようです。太陽光、風力共、化石燃料で発電したものを買うより安く調達できます。地熱、水力も同様です。今となっては、原子力は後始末の課題はあっても、発電に使い続ける選択肢は有り得ません。
(2) 食品廃棄のゼロ化
食品廃棄が問題になっていますが、見込みで作り、売れ残りは廃棄がこれまでの常識です。廃棄食品の問題は、20世紀社会が生み出した大変な欠陥であり、これまでに獲得された科学・技術をフル活用して、食のデマンドレスポンスを実現する必要があります。これからは、需要に応じて作る(デマンドレスポンス)でなければならないでしょう。讃岐うどんの丸亀うどんの方式です。
丸亀うどんは客の注文があると連動して上流が動き始めます。まず注文を受けて、うどんが茹で釜に放り込まれます。すると玉の不足分を補うべく麺が切りだされ、所定量切り出されると不足分のうどんが打たれます。打たれたうどんが不足すると、粉からうどん生地が煉られるのです。
牡蠣の養殖も進化してきています。生育期間も短くなってきており、牡蠣が消費された分、稚貝を仕込む方向が可能になりました。漁業資源は、これまで自然任せで、獲れ過ぎれば価格を叩かれ、場合によって捨てられることがありましたが、これからは陸上を含めた養殖で、牡蠣と同じように、魚が消費...