物流を理解していない人を説得する法

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SCM 

1. 物流を定量的に示す重要性

 
 物流は当たり前に行われると軽く考えている人が多いようです。気にしなくてもモノは届く。モノを運ぶことに特に気にかける必要はない。こう認識されているのです。このような状況ですから物流の担当者はいつも苦労しています。モノが届く時刻が遅れるとなると「当たり前のことが行われない」と騒ぐ人を説得しなければなりません。海外ではロジスティクスが重視されているため、戦略的にモノを動かしたり、低コストで行ったりすることは誰しもが理解しています。
 
 日本では一般的に「物流はコスト」だと認識されています。そのため物流に関わるコストが上昇するとなると大変です。その際にも物流担当者は理由を理路整然と説明しなければなりません。会社の中で物流を理解している上司が少ない場合、部下の方は苦労すると思われます。一方で物流を定量的に示すことができないスタッフがいることも事実です。今の物流の状況を数字で示すとどうなるのか。それをどこまで改善すれば会社収益に貢献できるのか。営業や生産部門はこのような数値化は当たり前に実施しています。しかし、これが上手くできていない物流部門は苦労すると思います。
 
 日本は過去から物流を重視してこなかった社会ですが、この背景は今更変えることは不可能です。でも今から将来に向かって変えていくことは可能です。そこで、物流を理解してくれていない人を説得するためには後にも先にも「物流を定量化」することが必須となるのです。まずは社内の物流コストがどれくらいかかっているかについて調査してみましょう。一般的に売上高に占める物流コストの比率は約5%と言われています。
 
 しかし、実際には販売管理費や人件費、情報システム費や減価償却費などの中に含まれ、顕在化されていない物流コストがあることに気づく必要があります。これらを含めれば8%程度の比率になる可能性があり、見過ごせないレベルだということがわかります。物流をコストだと認識していればなおさらです。多分大多数の企業の営業利益率より大きい数値であることが推測されます。もし、この事実を経営層が知ったとすれば物流をおろそかにすることはないはずです。
 

2. 他社情報を提供する

 物流についての情報は新聞で報道されている内容であれば容易に把握することができます。しかし、一般的に皆さんは物流に関する関心度が低いため、新聞記事もスルーしている可能性があります。そこで、社内で物流を理解していない人たちを説得するためには、まめにこのような記事を集めておくとよいと思います。社内の人たちは他社の動向を気にしているので、そのような情報を提供すると喜ばれます。特に同業他社の情報は貴重です。他社ではこのようなやり方をしているのだから、という話し方には説得力があります。どこも同業他社に負けたくないと当然思っているからです。ですから、できるだけ「他社の物流情報」を集めてそれを社内で提供していくことが望ましいでしょう。
 
 では、他社物流情報は新聞からしか得られないものなのでしょうか。決してそのようなことはありません。むしろもっと生でホットな情報を得られる場があります。それが「セミナー」であり「物流施設見学会」であるのです。要はそのような場所に積極的に出かけていく人が重要情報を得られるということにつながるのです。セミナーや見学内には同じような悩みを抱えた人たちが集まります。ですから積極的に声がけをし、意見交換をすることをお勧めします。
 
 まず、セミナーで自分が知らなかった知識を習得する。実際に物流施設を見学して自分の目で確認する。そして他者と意見交換を行うことで自分の困っていることを他社ではどのように対応しているのかを知ることができるのです。生の情報、自分の目で見た情報は社内でもより説得力が増すことでしょう。これを聞けば物流に関心がない人も少しは物流の重要性に気づくことだと思います。セミナーに参加した場合はその時の資料を、見学会に参加した場合は写真を撮って来て見せると説得力が増します。他社情報を提供することでその人が焦りを感じてくれればしめたものです。さまざまな情報を上手く活用することで、物流を理解していない人を説得していきましょう。
 

3. 物流業務の質を上げる

 物流が社内でなかなか認知されない会社にはそれなりの原因が考えられます。一つはPR不足です。そしてもう一つはそれなりの仕事しかしていないことです。PRについては物流情報を入手し、ことあるごとに発信していく努力が欠かせません。このPRについては物流月報を作成し、それを社内に展開していくことが効果的です。物流月報ですからその月の物流の成績を数字で示します。
 
・どれくらいの物流コストを発生させたのか。
・単位当たりの物流コストは着実に下がっているのか。
・物流品質で不具合比率はどれくらいだったのか。
・物流安全での問題はなかったか。
 
 こういったデータを毎月示していくとともに、それが確実に改善していることを示さなければなりません。このようないわば当たり前の努力を怠っているようでは、社内で物流を理解させていくことは困難かもしれませんね。難しいことではあ...
SCM 

1. 物流を定量的に示す重要性

 
 物流は当たり前に行われると軽く考えている人が多いようです。気にしなくてもモノは届く。モノを運ぶことに特に気にかける必要はない。こう認識されているのです。このような状況ですから物流の担当者はいつも苦労しています。モノが届く時刻が遅れるとなると「当たり前のことが行われない」と騒ぐ人を説得しなければなりません。海外ではロジスティクスが重視されているため、戦略的にモノを動かしたり、低コストで行ったりすることは誰しもが理解しています。
 
 日本では一般的に「物流はコスト」だと認識されています。そのため物流に関わるコストが上昇するとなると大変です。その際にも物流担当者は理由を理路整然と説明しなければなりません。会社の中で物流を理解している上司が少ない場合、部下の方は苦労すると思われます。一方で物流を定量的に示すことができないスタッフがいることも事実です。今の物流の状況を数字で示すとどうなるのか。それをどこまで改善すれば会社収益に貢献できるのか。営業や生産部門はこのような数値化は当たり前に実施しています。しかし、これが上手くできていない物流部門は苦労すると思います。
 
 日本は過去から物流を重視してこなかった社会ですが、この背景は今更変えることは不可能です。でも今から将来に向かって変えていくことは可能です。そこで、物流を理解してくれていない人を説得するためには後にも先にも「物流を定量化」することが必須となるのです。まずは社内の物流コストがどれくらいかかっているかについて調査してみましょう。一般的に売上高に占める物流コストの比率は約5%と言われています。
 
 しかし、実際には販売管理費や人件費、情報システム費や減価償却費などの中に含まれ、顕在化されていない物流コストがあることに気づく必要があります。これらを含めれば8%程度の比率になる可能性があり、見過ごせないレベルだということがわかります。物流をコストだと認識していればなおさらです。多分大多数の企業の営業利益率より大きい数値であることが推測されます。もし、この事実を経営層が知ったとすれば物流をおろそかにすることはないはずです。
 

2. 他社情報を提供する

 物流についての情報は新聞で報道されている内容であれば容易に把握することができます。しかし、一般的に皆さんは物流に関する関心度が低いため、新聞記事もスルーしている可能性があります。そこで、社内で物流を理解していない人たちを説得するためには、まめにこのような記事を集めておくとよいと思います。社内の人たちは他社の動向を気にしているので、そのような情報を提供すると喜ばれます。特に同業他社の情報は貴重です。他社ではこのようなやり方をしているのだから、という話し方には説得力があります。どこも同業他社に負けたくないと当然思っているからです。ですから、できるだけ「他社の物流情報」を集めてそれを社内で提供していくことが望ましいでしょう。
 
 では、他社物流情報は新聞からしか得られないものなのでしょうか。決してそのようなことはありません。むしろもっと生でホットな情報を得られる場があります。それが「セミナー」であり「物流施設見学会」であるのです。要はそのような場所に積極的に出かけていく人が重要情報を得られるということにつながるのです。セミナーや見学内には同じような悩みを抱えた人たちが集まります。ですから積極的に声がけをし、意見交換をすることをお勧めします。
 
 まず、セミナーで自分が知らなかった知識を習得する。実際に物流施設を見学して自分の目で確認する。そして他者と意見交換を行うことで自分の困っていることを他社ではどのように対応しているのかを知ることができるのです。生の情報、自分の目で見た情報は社内でもより説得力が増すことでしょう。これを聞けば物流に関心がない人も少しは物流の重要性に気づくことだと思います。セミナーに参加した場合はその時の資料を、見学会に参加した場合は写真を撮って来て見せると説得力が増します。他社情報を提供することでその人が焦りを感じてくれればしめたものです。さまざまな情報を上手く活用することで、物流を理解していない人を説得していきましょう。
 

3. 物流業務の質を上げる

 物流が社内でなかなか認知されない会社にはそれなりの原因が考えられます。一つはPR不足です。そしてもう一つはそれなりの仕事しかしていないことです。PRについては物流情報を入手し、ことあるごとに発信していく努力が欠かせません。このPRについては物流月報を作成し、それを社内に展開していくことが効果的です。物流月報ですからその月の物流の成績を数字で示します。
 
・どれくらいの物流コストを発生させたのか。
・単位当たりの物流コストは着実に下がっているのか。
・物流品質で不具合比率はどれくらいだったのか。
・物流安全での問題はなかったか。
 
 こういったデータを毎月示していくとともに、それが確実に改善していることを示さなければなりません。このようないわば当たり前の努力を怠っているようでは、社内で物流を理解させていくことは困難かもしれませんね。難しいことではありませんから必ず実行するようにしましょう。
 
 次に仕事の水準です。単純な運搬作業や保管作業だけでは評価されません。ユーザーが喜ぶようなレベルの高い仕事をして初めて認知されるものです。私たちは物流の質を上げる努力が欠かせませんね。自分たちの事しか考えない身勝手な物流作業、たとえば、目先のコストにこだわり「まとめ輸送」を行ったり、次工程に「まとめ運搬」を行ったりしているようではマイナス評価しか得られないことは当然でしょう。
 
 ジャストインタイムでモノを届ける、しかも混載を駆使してコストも下げる努力をすることでようやく物流というものを理解してもらえるのです。特に、各社が気にしている在庫水準の適正化について物流が活躍できるフィールドは大きいものと思われます。発注行為や生産管理を積極的に実行することでそれが可能になるのです。このように仕事の質を上げることこそが物流を認知してもらえる近道だと思います。受け身での仕事をしている限り、自分たちへの理解度は高まらないと思った方が良いかもしれません。物流を理解してもらえない背景には必ず要因が隠れています。自分たちが会社に貢献できているかどうか、冷静に見つめなおすことが必要だと思います。すべてのボールは物流が持っていると考えましょう。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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