パフォーマンスを示すKPI 物流現状把握の重要性 (その4)

投稿日

 

1. 作業のボリュームを示すKPIを設定

SCM
 今行っている物流作業が本当に必要な作業なのかどうかは、『現状把握』を実施していくと見えてきます。「必要だからやっている」、という声が聞こえてきそうですが、でもここは盲点になりがちです。試しに会社の別の拠点や職場を見て下さい。その必要と思われる作業を実施していないかもしれません。
 
 仮にやっていたとしても、別のやり方で実施しているかもしれません。その別のやり方の方が効率がよいかもしれません。このように社内で同じ業務をやっている、やっていない、やっていてもやり方にバラつきがあるといった事例は多々あるのではないでしょうか。そこで複数拠点、複数職場がある会社の場合には類似業務の洗い出しと比較をやってみるとよいのではないでしょうか。
 
 業務の洗い出しとともに「作業の方法」、「その作業に要している時間」、できれば「原単位」、つまり1部品あたりの作業時間やコストなどを調査するとよいでしょう。もしかしたら社内で業務にばらつきがあるということは標準化できていないということかもしれません。標準化はすべての物流作業に必要ですが意外と行われておらず現場任せになっている可能性があります。標準化できていない場合には効率がよくない可能性があります。
 
 また、標準が無ければそれに対する効率、すなわち仕事のパフォーマンスが測定できないことになります。同じ仕事をしていても職場で効率に差があるはずなのにそれが見えないということは問題です。『仕事のパフォーマンス=標準からの乖離度』とも考えられます。仕事のパフォーマンスに差があるにもかかわらず同じ給料をもらうとするとこれは平等とは言えません。
 
 一方で、このような状態を放置しているということは現場を管理できていないということになります。ということで作業の標準化は現状把握と同時に並行して進めていくことが望ましいでしょう。一気に標準化は難しいとしたら第一歩として、その作業のボリュームを示すKPIを設定しましょう。これはこれで難しいという会社もあるでしょう。では簡単にある程度のパフォーマンスが見えるKPIの把握方法について考えてみましょう。
 

2. パフォーマンスが見えるKPIの把握方法

 簡単に物流のパフォーマンスを測ることができるKPIについて考えてみましょう。物流にはさまざまな業務がありますからKPIの種類は多岐にわたります。倉庫でも工場でも共通に使えるKPIとして一人一時間あたり処理数が挙げられるでしょう。このKPIはいろいろな業務に応用できますのでぜひ覚えておいて下さい。
 
 もし運搬作業であればこのKPIは「一人一時間あたり運搬量」ということになります。ここで取り決めておかなければならないのは運搬量の定義です。物流では一般的にはkgやトンが使われます。ということでこのいずれかということで始めてみてはいかがかと思います。主として嵩が張るものを扱っているのであれば「kg」、重たいものを扱っているのであれば「トン」でよいと思います。これを「箱数」とすることもありだと思います。要は「容易にその基礎データを把握できるか」です。いくつものデータを引っ張り出して計算しなければつかめないKPIは長続きしません。シンプルイズザベストです。
 
 ピッキング作業であれば「一人一時間あたり処理件数」となります。処理件数は個数であったりオーダー件数であったりします。物流業界では「ピッキング行数」をデータに持ってくる指標を使うことが多いようです。「行数」は聞き慣れない言葉かもしれません。これはオーダーシートの中にある「オーダー」のことを示しています。一行の中に一つの品目をいくつ、と表現されていることが多いと思います。将来的に市場ベンチマークをするのであればこういった今あるKPIに合わせておくことも一つの方法です。まずは無理せずにその会社ですぐに把握できるデータを使ってKPIとしましょう。
 
 別の角度から見ると「一出荷あたり労働時間」というKPIも考えられ...
 

1. 作業のボリュームを示すKPIを設定

SCM
 今行っている物流作業が本当に必要な作業なのかどうかは、『現状把握』を実施していくと見えてきます。「必要だからやっている」、という声が聞こえてきそうですが、でもここは盲点になりがちです。試しに会社の別の拠点や職場を見て下さい。その必要と思われる作業を実施していないかもしれません。
 
 仮にやっていたとしても、別のやり方で実施しているかもしれません。その別のやり方の方が効率がよいかもしれません。このように社内で同じ業務をやっている、やっていない、やっていてもやり方にバラつきがあるといった事例は多々あるのではないでしょうか。そこで複数拠点、複数職場がある会社の場合には類似業務の洗い出しと比較をやってみるとよいのではないでしょうか。
 
 業務の洗い出しとともに「作業の方法」、「その作業に要している時間」、できれば「原単位」、つまり1部品あたりの作業時間やコストなどを調査するとよいでしょう。もしかしたら社内で業務にばらつきがあるということは標準化できていないということかもしれません。標準化はすべての物流作業に必要ですが意外と行われておらず現場任せになっている可能性があります。標準化できていない場合には効率がよくない可能性があります。
 
 また、標準が無ければそれに対する効率、すなわち仕事のパフォーマンスが測定できないことになります。同じ仕事をしていても職場で効率に差があるはずなのにそれが見えないということは問題です。『仕事のパフォーマンス=標準からの乖離度』とも考えられます。仕事のパフォーマンスに差があるにもかかわらず同じ給料をもらうとするとこれは平等とは言えません。
 
 一方で、このような状態を放置しているということは現場を管理できていないということになります。ということで作業の標準化は現状把握と同時に並行して進めていくことが望ましいでしょう。一気に標準化は難しいとしたら第一歩として、その作業のボリュームを示すKPIを設定しましょう。これはこれで難しいという会社もあるでしょう。では簡単にある程度のパフォーマンスが見えるKPIの把握方法について考えてみましょう。
 

2. パフォーマンスが見えるKPIの把握方法

 簡単に物流のパフォーマンスを測ることができるKPIについて考えてみましょう。物流にはさまざまな業務がありますからKPIの種類は多岐にわたります。倉庫でも工場でも共通に使えるKPIとして一人一時間あたり処理数が挙げられるでしょう。このKPIはいろいろな業務に応用できますのでぜひ覚えておいて下さい。
 
 もし運搬作業であればこのKPIは「一人一時間あたり運搬量」ということになります。ここで取り決めておかなければならないのは運搬量の定義です。物流では一般的にはkgやトンが使われます。ということでこのいずれかということで始めてみてはいかがかと思います。主として嵩が張るものを扱っているのであれば「kg」、重たいものを扱っているのであれば「トン」でよいと思います。これを「箱数」とすることもありだと思います。要は「容易にその基礎データを把握できるか」です。いくつものデータを引っ張り出して計算しなければつかめないKPIは長続きしません。シンプルイズザベストです。
 
 ピッキング作業であれば「一人一時間あたり処理件数」となります。処理件数は個数であったりオーダー件数であったりします。物流業界では「ピッキング行数」をデータに持ってくる指標を使うことが多いようです。「行数」は聞き慣れない言葉かもしれません。これはオーダーシートの中にある「オーダー」のことを示しています。一行の中に一つの品目をいくつ、と表現されていることが多いと思います。将来的に市場ベンチマークをするのであればこういった今あるKPIに合わせておくことも一つの方法です。まずは無理せずにその会社ですぐに把握できるデータを使ってKPIとしましょう。
 
 別の角度から見ると「一出荷あたり労働時間」というKPIも考えられると思います。一回の出荷にどれくらいの労働時間をかけているかという指標になります。その物流現場でかけている経費が把握できればもう少し高度化した物流KPIを設定することができます。この経費には人件費や倉庫費、設備費や燃料費、本社経費などさまざまな費目が含まれます。
 
 これをデータで持って来て「売上高」と比較してみましょう。つまり売上高物流経費比率というKPIが出来上がるのです。まず物流現状把握では実態を客観的に示す数値データが必要になるのです。そこで簡単なKPIを作ってそれを運用していくことが望ましいと思われるのです。最初は無理せず、あまり背伸びせずに数値管理を始めてみましょう。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
調達物流 儲ける輸送改善 (その5)

  【儲ける輸送改善とは 連載目次】 1.輸送改善はなぜ『おいしい』のか 2.輸送改善のための工場環境整備とは ...

  【儲ける輸送改善とは 連載目次】 1.輸送改善はなぜ『おいしい』のか 2.輸送改善のための工場環境整備とは ...


レイアウトの考察 物流改善ネタ出し講座 (その9)

  【物流改善ネタ出し講座 連載目次】 1. なぜ物流は宝の山なのか 2. 宝の山の見つけ方 3. フォークリフトを考える 4. 荷姿...

  【物流改善ネタ出し講座 連載目次】 1. なぜ物流は宝の山なのか 2. 宝の山の見つけ方 3. フォークリフトを考える 4. 荷姿...


サプライチェーンもTビジネスからeビジネスへ

 あらゆるビジネスが、伝統的な従来の商売のやり方(トラィデショナル:Tビジネス)から、コンピュータとインターネットを使った商売のやり方(エレクトロニクス:...

 あらゆるビジネスが、伝統的な従来の商売のやり方(トラィデショナル:Tビジネス)から、コンピュータとインターネットを使った商売のやり方(エレクトロニクス:...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
物流作業者(人)の管理 物流4M管理の重要性(その1)

 事業を行っていると4M管理をしっかりとできている会社とできていない会社で差がつくことがわかります。事業の基本として4M管理をきちんと行うことについてレビ...

 事業を行っていると4M管理をしっかりとできている会社とできていない会社で差がつくことがわかります。事業の基本として4M管理をきちんと行うことについてレビ...


購買業務の要点:情報提供依頼の実施

 前回のその1に続いて解説します。取引をするサプライヤーはどのようにして探せばよいでしょうか。普通はインターネットで簡単に探し出すことができます。例えば、...

 前回のその1に続いて解説します。取引をするサプライヤーはどのようにして探せばよいでしょうか。普通はインターネットで簡単に探し出すことができます。例えば、...


サプライチェーン全体の改善へ 会話を通して物流改善スキル向上(その3)

◆ 製造、販売との会話  物流の問題を知りたい場合、小売りの最前線にいる人や、製造現場で働く人たちと話をしてみるのです。そうすると、そういった人たち...

◆ 製造、販売との会話  物流の問題を知りたい場合、小売りの最前線にいる人や、製造現場で働く人たちと話をしてみるのです。そうすると、そういった人たち...