1. 重量能力とは
物流現場を見ているととても残念なことに気づきます。それは保有する能力を使いきっていないために本来得られるべき効率をムダにしてしまっているのです。その典型がトラックです。トラックは積載量に応じてサイズが異なります。2トン車、4トン車、10トン車といったように保有能力(積載量)別に異なる車種が設定されているのです。輸送では皆さんご存知の通り、かさばる割には軽い荷物(容積勝ち荷物)と小ぶりの割には重い荷物(重量勝ち荷物)があります。前者は別名「綿」、後者は別名「鉄」とも呼ばれます。前者の典型荷物にはスナック菓子、後者の典型荷物には鍛造品などがあります。
トラックは荷台に「綿」ばかりを積むと本来持てる重量能力を余らしてしまうことになります。逆に重量物ばかりを積むと荷台がスカスカになってしまいます。物流のあるべき姿としては、荷台の容積目いっぱいかつ保有重量能力目いっぱいで輸送を行うことになります。10トン車でいえば容積53立方メータ、重量10トンということになります。要はこうなるように荷物を組み合わせて運ぶことが物流現場の責務であり、そうなるように配車を行うことが配車担当者のテクニックということになるのです。
フォークリフトでも同様です。理想を言えば重量能力を100%使い、容積的にも2立方メータ程度を同時に運搬または荷役できるということになります。常時あるべき姿でのオペレーションは簡単ではありません。しかし、今のオペレーションでどこまで保有能力を使い切ったのかがわかるよう、データ把握しておかなければなりません。一日が終了した段階で、物流設備ごとに保有能力に対してどこまで使ったのかを評価してみてはいかがでしょうか。顧客からのコストダウンの要求に悩んでいるとしたら、こういった徹底したコスト管理の努力を実施しているのかについて反省してみる必要がありそうです。
2. 稼働率の向上
トラックの保有する能力を目いっぱい使うことは何も積載量だけの話ではありません。トラックという設備を所有している期間にどれだけ使ったかという視点でも見てみる必要があります。これをトラックの稼働率という指標を使って見てみましょう。この指標の分母は1年365日、24時間になります。つまり 24時間×365日=8760時間が分母となります。例えば、1日9時間稼働し、年間270日の営業日だったとします。その場合の稼働率は、9時間×270日÷8760時間で27.7%となります。
一方で、1日18時間稼働し、年間300日の営業日だったとすると、稼働率は18時間×300日÷8760時間で61.6%になります。いかがでしょうか。トラックという高価な設備を意外と十分に活用できていないことが分かるのではないでしょうか。車検や法定点検はいたしかたないとは思いますが、不具合による修理や事故による利用不能などは絶対に避けなければなりません。仕事が無くて夕方以降は車庫で寝かせてしまうことも決して望ましくはありません。トラックが目いっぱい働ける環境を営業部隊がセットしなければならないのです。トラックは荷を積んで走行して初めて付加価値を生むことができる設備です。したがって、これ以外の時間を極力縮めなければなりません。
たとえば荷の積み降ろしはどうでしょうか。一般的に10トン車満載だとしても30分もあれば積み降ろしが可能です。もしこれ以上の時間を要しているのであれば、その要因を特定して改善する必要がありそうです。荷降ろし場が分かりづらい、トラックポートからの距離が長い、そもそもトラックポートが不足し「待ち」が発生している、積荷が準備できずに「待ち」が発生している、荷降ろし用のフォークリフトが他に使われており「待ち」が発生している、こういったいろいろな要因が見えてくることでしょう。これらを物流会社と荷主が協力し合って解消していくことが必要であり、コスト削減にもつながるのです。
3. 倉庫空間
物流の保有能力はトラックやフォークリフトなどの設備に限りません。倉庫でも同様のことが言えるのです。それが倉庫スペースならぬ倉庫空間なのです。倉庫ではスペース効率を改善して1㎡あたりの売上高を向上しようとします。これはこれで重要なことです。さらにこのスペースの上方を見上げてみましょう。そこに活用されていない空間が見えたとしたらそれは問題だということになります。倉庫はその中の容積そのものが保有能力ということになります。したがって倉庫の容積目いっぱいにものを保管できるように考えなければならないわけです。
平置きで積み重ねることもあるでしょうし、ラックを使って高い位置でものを保管することも考えられ...