1. 安全が心配される業務
最近はどの産業でも自動化の技術が導入されつつあります。物流は自動化には比較的適した産業だと考えられます。皆さんの会社ではいかがでしょうか。たとえば、工程間運搬などはもうAGV(自動運搬車)でもよいのかもしれません。一時期、立体自動倉庫が流行った時期がありました。この自動設備は大掛かりなため結構な投資が発生します。建屋も必要になります。自動化ですが導入コストと運用コスト、そして将来にわたっての必要性を考慮すべきだともいます。自動倉庫は、こぞって導入されましたが「無用の長物」になってしまった会社も少なくありません。ですから自動化はより慎重に判断することが望まれます。
人手不足は、どの産業でも同じことですが、常態化しています。日本は原則として単純労働に対する外国人の採用は認められません。ここが欧米諸外国との違いです。欧米諸国では積極的に移民を受け入れ、その人たちの職として単純労働も認められてきています。たとえば、トラックドライバーは自国民ではなく、海外から来た人たちがその多くを担っています。倉庫内作業も同様です。
本来であれば自動化の前にこのような外国人労働者について考えていくことが必要のような気がします。ただし、法令で認められていない限り日本では現時点では難しいでしょう。そこで、人手不足が続く前提でどのような仕事を自動化していったら効果的なのかについて、考えてみる必要があります。最初に考えなければならない仕事は安全が心配される業務ではないでしょうか。製造業では危険を伴う仕事を自動化し、人が楽にできるように考えています。重いものを持ち上げる際には助力装置を使います。これもある種の自動化の一部と考えられます。助力装置ではなく、ロボットを使って人による作業から機械による作業への転換も進んでいます。物流でも重量物の手扱い作業は多数存在します。そこで、まずこの観点から自動化について考えてみてはいかがかと思います。
2. 自動ピッキングや検品の自動化
エルゴノミクス、つまり人間工学を基本に考えたときに自動化が望ましい領域は見えてくるのだと思います。人はかがんだり伸び上がったりすると体に余分な負荷がかかります。このように、体に負荷をかけながら実施していく作業を「難作業」と呼びます。物流では倉庫内作業で床から思い箱を持ち上げたり、かがんで棚の下の段からモノを取り出したりすることがよくあります。このような作業自体を発生させないように業務設計をすることが重要です。そして、もし作業自体を無くせないのであれば自動化を考えればよいと思います。
比較的容易に自動化できる物流作業は自動運搬です。今は簡単にルート変更のできるAGVもあります。しかも価格もリーズナブルですから導入はしやすいでしょう。そもそも7つのムダの中にも「運搬のムダ」があります。運搬自体を発生させないように庫内設計をする必要がありますが、もし発生したとしてもAGVで運搬することで人による作業である工数は減らすことが可能です。人が主体で行っているピッキング作業もいずれはロボットなどによる自動ピッキングに置き換わることになるでしょう。
完全自動化に移行する前段階として、商品の入った棚が動くタイプの自動化まではすでにスタートしており、従来のように人が歩き回る必要が無くなりつつあります。検品工程も大分自動化が進みつつあると思います。機械の目が認識することで良品と不良品を見極めることができるようになりました。外観検査だけであれば人に頼らなくてもよい時代が近付きつつあるのです。
方面別の荷物仕分けも場所とお金があれば仕分け装置を導入して自動化することが可能です。これはもう一般的だと考えてもよいでしょう。ただし、仕分け品の設備投入などを人手で行わなければならない仕分け機もあり、完全自動化が望まれるところです。
3. 中途半端な自動化はやめる
物流業に就きたいと思う人が少なくなり、高齢者や女性を戦力化させていく過程で物流自動化はこれから避けて通れない道となることでしょう。自動化は当たり前のことながらお金がかかります。対投資効果が得られないのであれば自動化を進めることはできません。会社で物流自動化設備を導入しようとすると、必ずといってよいほど投資金額の圧縮が求められます。さらに15%カットしろといった話が上層部から飛んでくるのです。工場投資でも同じですが、当初予算を削られることはよくあることです。そうなると真っ先に削られるのが物流設備投資です。
なぜなら、工場ではプレス機や加工機などの直接生産に関わるものは削ることはできませんが、物流は人海戦術で何とかなるからです。自動化が承認されたときに心がけなければならないことは「中途半端な自動化はやめる」という意思を持つことです。場合によっては、自動化全体をあ...