人的資源マネジメント:やる気の見える化(その3)

 技術者はもとより管理者も含めた現場のレベルアップが話題になることが多くなったと感じます。受注したい案件や契約はあるのに、現場がいっぱいいっぱいで受けることができない状況になっていて、一人ひとりのスキルをあげることが喫緊の課題になっているところが増えているようです。
 
  スキルアップというと技術やマネジメントなどの専門教育や、実務を通じたOJTの話になりがちなのですが、以前に紹介したように、トレーニングを受ける本人のやる気や意欲が伴わないと、トレーニングにかける時間や費用は無駄なものになってしまいます。やる気や意欲を「エンゲージメント」というのですが、頭ではわかっててもエンゲージメントを意識してトレーニングなどを行っているところはほとんどありません。
 
 前回から、やる気や意欲、すなわち、エンゲージメントを見える化を紹介しています。今回は、その3です。
 

3. エンゲージメント改善のカギ

 
 エンゲージメントの数値化の事例を紹介します。図は、取り組み当初のある月における個人ごとのエンゲージメントを数値化したものです。最高は54点、最低は0点です。グラフを見ると、最高は48点であること、最低点0点の人がいること、そして、全体は広く分散してばらついた点数分布となっていることがわかります。このグラフからは、人によってエンゲージメント、つまり、仕事に対するやる気や意欲は大きく違うことがわかります。組織全体の単一の取り組みでは一人ひとりには届かないということです。
 
図108. 個人別ワークエンゲージメント
 
 次に、部署を任されているマネジャーに大きな刺激となったグラフを紹介しましょう。このメーカーは、電気や機構といった技術軸ごとに部署が分かれているのですが、次に示す図はその部署ごとのエンゲージメントの平均値を示したグラフです。部署によって大きな違いがあることがわかります。部署によって取り組み方を考える必要があることが明らかになり、良くも悪くも比較されることによって、低い部署のマネジャーは本気度が上がりました。いわれたことだけをやるのではなく、自分で考えるようになり、メンバーと1週間に1回は「15分面談」を持つなどの取り組みをはじめたのです。
 
図109. 部署別ワークエンゲージメント
 
 モチベーション向上というと、座談会やビジョンの勉強会を開いたり、個人の育成プランを作ったりすることが多いと思いますが、この事例からは、一人ひとりのことを把握して、一人ひとりに合った対応が必要だということがわかります。まず最初にやるべきことは、マネジャーが自分の部下のことを把握することであり、エンゲー...
ジメントの見える化はそのための効果的なツールです。
 
 さて、エンゲージメントの事例はいかがだったでしょうか。多くの会社で様々な改善の取り組みを行っていると思いますが、そのときに組織としての状況把握だけでなく、個人の状況把握をすることが大切なことをわかっていただけたのではないでしょうか。今回紹介したエンゲージメントの見える化は、個人の状況を定量化し把握するための効果的な仕組みです。
 
  
◆関連解説『人的資源マネジメントとは』

↓ 続きを読むには・・・

新規会員登録


この記事の著者