物流現場の労務管理

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1. 物流管理監督者の実態

 皆さんの会社の現場では長時間労働の問題は発生していませんでしょうか。長時間労働は労働者に身体的・精神的負担を与え、労働災害にもつながる大きな問題です。もし、長時間労働に代表されるような労務上の問題があるのであれば、優先的に解決することが必要です。何か事が起きてからでは遅いのです。まず物流現場の管理監督者について考えていきましょう。管理監督者はその現場の責任を一手に引き受けていますのでいろいろとプレッシャーがあることでしょう。
 
 皆さんは名ばかり管理職という言葉をお聞きになったことがあるのではないでしょうか。一般的に管理職は経営と一体となり、その現場について責任を持ってマネジメントしていく人のことを指します。しかし名ばかり管理職は、その実態は一般従業員とほとんど変わりません。労働時間管理も行われていれば経営と一体という実態とはかけ離れている場合があります。
 
 その一方で「管理職だから」という理由で労働時間について無制限としている会社があります。時間外手当も支払われていません。これこそが名ばかり管理職ということになります。管理監督者は司法の立場からは厳しく制限され、次のような要件が定められています。
 
(1) 経営者と一体的な立場にある者
(2) 労働時間、休憩休日の枠を超えて活動することを要請されてもやむを得ない重要な職務と権限がある
(3) 賃金など一般の労働者と比べて優遇措置が講じられている
(4) タイムカードなど時間管理を受けていない
 
 いかがでしょうか。かなり厳しい内容ではないでしょうか。行政側とは見解の違いはありますが、この定義も無視するわけにはいきません。物流センター長と呼ばれる人の多くが時間管理をされており、経営とは少し離れた立場で仕事をしています。一度ご自身の会社の物流センター長をはじめとする管理監督者の方の仕事の実態をチェックしてみましょう。もし明らかに管理監督者として正しくない業務を行っている場合には是正する必要があります。まずこの点から物流現場の労務管理をチェックしていきましょう。
 
 SCM
 

2. 労働時間管理

 物流現場では人手による作業がたくさんあります。ということは人が工数をかけてこなさなければならない仕事が多いということです。もし顧客からのオーダーが増えれば人が時間をかけて対応することが求められます。ここで労働時間管理が必要になってくるのです。
 
 望ましい形は月間で毎日どれくらいの時間、何人で仕事をするかが計画化されていることです。これは顧客からの予測情報をもらうか、過去の実績から推測するか、あるいは仕事量を一定とし、振れ分は在庫で対応することで立案が可能となります。やはり会社ですから、行きあたりばったりの仕事の仕方は望ましくありません。あくまでも計画があり、それから外れる分は残業で対応することがよいでしょう。
 
 計画ができれば原則として物流作業者の月間の労働時間が定まります。そうなると個々の作業者単位で月間残業時間や年間残業時間がかなりの確度で予測することができることになります。長時間労働が問題になるのはこのような「計画」の無い職場で発生します。業務量を予測できないために繁閑差をそのままかぶってしまうことになるのです。そうなると特に繁忙期は毎日長時間残業が発生するのです。これでは労務管理ができているとは言い難いのです。
 
 物流現場の管理監督者の方がまずやらなければならないのは、業務計画を立案することです。月次計画をきちんと作成し、その計画通りに業務運営ができるように努力していくことです。中期的に見て繁閑差が大きくなりそうであれば業務を前倒しで行い、その分を在庫で抱えることを認めることです。
 
 業務量が多い月には何度か休日出勤を計画しなければならないかもしれません。これもあらかじめ「わかっていること」でしょうから突発は避けることができるはずです。残業に関する労使協定を結んでいる会社がほとんどかと思いますが、実際に実績管理をきちんとできている会社は多くないかもしれません。しかし物流現場の労務管理では労働時間管理は基本中の基本ですから、まずこれができるしくみを確立されることを最優先にして下さい。
 

3. 物流作業者の技能向上

 物流現場の労務管理は何も労働時間管理だけをやっていればよいわけではありません。当たり前のことですが。やはり人財育成が重要テーマとなることを忘れてはならないでしょう。物流現場でよくあるリスク。それは「あの人しかわからない」という状況です。これを長年放置している会社があります。もしかしたら皆さんの会社でも部分的に見ればこのような問題を抱えているのではないでしょうか。
 
 もし特定の会社向けの業務で「あの人しかわからない」状況であれば、その人に何かあれば得意先に迷惑をかけることが目に見えています。そこでどうしても必要になるのが技能向上です。技能向上の基本は「3-3-3の原則」です。これについて確認しておきましょう。
 
 最初の3は「1つの作業を3人ができる」です。特定の人...

1. 物流管理監督者の実態

 皆さんの会社の現場では長時間労働の問題は発生していませんでしょうか。長時間労働は労働者に身体的・精神的負担を与え、労働災害にもつながる大きな問題です。もし、長時間労働に代表されるような労務上の問題があるのであれば、優先的に解決することが必要です。何か事が起きてからでは遅いのです。まず物流現場の管理監督者について考えていきましょう。管理監督者はその現場の責任を一手に引き受けていますのでいろいろとプレッシャーがあることでしょう。
 
 皆さんは名ばかり管理職という言葉をお聞きになったことがあるのではないでしょうか。一般的に管理職は経営と一体となり、その現場について責任を持ってマネジメントしていく人のことを指します。しかし名ばかり管理職は、その実態は一般従業員とほとんど変わりません。労働時間管理も行われていれば経営と一体という実態とはかけ離れている場合があります。
 
 その一方で「管理職だから」という理由で労働時間について無制限としている会社があります。時間外手当も支払われていません。これこそが名ばかり管理職ということになります。管理監督者は司法の立場からは厳しく制限され、次のような要件が定められています。
 
(1) 経営者と一体的な立場にある者
(2) 労働時間、休憩休日の枠を超えて活動することを要請されてもやむを得ない重要な職務と権限がある
(3) 賃金など一般の労働者と比べて優遇措置が講じられている
(4) タイムカードなど時間管理を受けていない
 
 いかがでしょうか。かなり厳しい内容ではないでしょうか。行政側とは見解の違いはありますが、この定義も無視するわけにはいきません。物流センター長と呼ばれる人の多くが時間管理をされており、経営とは少し離れた立場で仕事をしています。一度ご自身の会社の物流センター長をはじめとする管理監督者の方の仕事の実態をチェックしてみましょう。もし明らかに管理監督者として正しくない業務を行っている場合には是正する必要があります。まずこの点から物流現場の労務管理をチェックしていきましょう。
 
 SCM
 

2. 労働時間管理

 物流現場では人手による作業がたくさんあります。ということは人が工数をかけてこなさなければならない仕事が多いということです。もし顧客からのオーダーが増えれば人が時間をかけて対応することが求められます。ここで労働時間管理が必要になってくるのです。
 
 望ましい形は月間で毎日どれくらいの時間、何人で仕事をするかが計画化されていることです。これは顧客からの予測情報をもらうか、過去の実績から推測するか、あるいは仕事量を一定とし、振れ分は在庫で対応することで立案が可能となります。やはり会社ですから、行きあたりばったりの仕事の仕方は望ましくありません。あくまでも計画があり、それから外れる分は残業で対応することがよいでしょう。
 
 計画ができれば原則として物流作業者の月間の労働時間が定まります。そうなると個々の作業者単位で月間残業時間や年間残業時間がかなりの確度で予測することができることになります。長時間労働が問題になるのはこのような「計画」の無い職場で発生します。業務量を予測できないために繁閑差をそのままかぶってしまうことになるのです。そうなると特に繁忙期は毎日長時間残業が発生するのです。これでは労務管理ができているとは言い難いのです。
 
 物流現場の管理監督者の方がまずやらなければならないのは、業務計画を立案することです。月次計画をきちんと作成し、その計画通りに業務運営ができるように努力していくことです。中期的に見て繁閑差が大きくなりそうであれば業務を前倒しで行い、その分を在庫で抱えることを認めることです。
 
 業務量が多い月には何度か休日出勤を計画しなければならないかもしれません。これもあらかじめ「わかっていること」でしょうから突発は避けることができるはずです。残業に関する労使協定を結んでいる会社がほとんどかと思いますが、実際に実績管理をきちんとできている会社は多くないかもしれません。しかし物流現場の労務管理では労働時間管理は基本中の基本ですから、まずこれができるしくみを確立されることを最優先にして下さい。
 

3. 物流作業者の技能向上

 物流現場の労務管理は何も労働時間管理だけをやっていればよいわけではありません。当たり前のことですが。やはり人財育成が重要テーマとなることを忘れてはならないでしょう。物流現場でよくあるリスク。それは「あの人しかわからない」という状況です。これを長年放置している会社があります。もしかしたら皆さんの会社でも部分的に見ればこのような問題を抱えているのではないでしょうか。
 
 もし特定の会社向けの業務で「あの人しかわからない」状況であれば、その人に何かあれば得意先に迷惑をかけることが目に見えています。そこでどうしても必要になるのが技能向上です。技能向上の基本は「3-3-3の原則」です。これについて確認しておきましょう。
 
 最初の3は「1つの作業を3人ができる」です。特定の人しかできないような状況は最初に改善しなければならいません。2つめの3は「1人が3つの作業をできる」です。これは作業者の技能向上とともにモチベーション向上にもつながるアイテムです。3つめの3は「全作業をできる人を3人確保する」です。管理監督者、指導者を含めでも構いませんので、これを「3-3-3の原則」の仕上げとして取り組みたいものです。
 
 物流現場の管理監督者は自分の職場で作業者の育成計画を作成する必要があります。毎年自分の部下をどのレベルまで引き上げたいのか明確にしておきましょう。そして育成計画に基づき部下に教育していきます。この教育はOJTの場合もあれば、外部研修を受講するなどのOFF-JTもあるでしょう。
 
 部下の技能向上を図れば結果としてその人たちの収入増につながります。いろいろな仕事ができることで楽しみも増し、モチベーション向上につながります。いかがでしょうか。物流現場の労務管理として管理監督者の位置づけを明確にすることが第一歩です。そして物流作業者の時間管理、技能向上と進んでいくことになります。ぜひ行き当たりばったりの対応ではなく、計画的に労務管理を実施していくことをお勧めしたいと思います。それが確実に会社の活力向上につながるでしょう。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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