人的資源マネジメント:開発の全体最適化とは(その2)

更新日

投稿日

 前回のその1に続いて解説します。
 

4. プロフェッショナルが協力して作るDFM/DFX

 
 あなたの会社では、設計部署と生産技術部署とで自部署だけの利益を考えるのではなく、全体最適を議論する話し合いはできているでしょうか?
 
 設計と生産技術とで個別製品の生産方法について話し合うことはあっても、設計側に対する製造性の仕組みづくりについて話し合うことはなかなか難しいことだと思います。それは、トップ・マネジメントが率先して DFM/DFX を議論する機会を作っていないからです。現場任せでは進みません。
 
 さらに、よくあるトップ・マネジメントの問題が、「設計者にすべての責任がある、設計者は何でもこなさなければならない」という考え方です。これも DFM/DFX が進まない原因のひとつです。
 
 生産のことも品質のことも購買・手配のことも設計が責任を持たなければならないというのは、上流工程の設計で総合的品質が決まるという意味ではその通りなのですが、設計部署、あるいは、設計者にだけにその責任を負わせてしまうというのは良いこととはいえません。
 
 設計と製造合わせても10人程度の技術者で進めている開発であれば、設計者がすべてを把握することも可能でしょう。しかし、そんな小規模な開発現場は少ないでしょうし、生産技術、品質管理、購買などの製造に関する個々の技術は複雑化、専門化しており、設計者にすべての責任を負わせるのは現実的ではありません。
 
 そもそも関連部署それぞれが複雑化、専門化する技術に追従しなければ、メーカーとしての将来はないでしょう。DFM/DFXの仕組みは、設計者が何でも知っていて、何でもできる体制ではなく、開発に関係する関係者それぞれが専門家となって、設計者に必要な仕組みを提供するという体制を前提にして構築すべきです。
 
人的資源マネジメント図140. 専門家グループによる設計体制
 
 生産技術、品質、購買などの部署はそれぞれの機能における専門家であり、様々な知識や経験を持っているはずです。その専門の知識や経験を加工したり、ツール化したりして、設計段階で使えるようにする。これが DFM/DFXの仕組みです。トップ・マネジメントには、率先してこのような体制づくりを行ってほしいものです。
 
 従来大切にされていた DFM/DFXが疎かになっているのは、製品開発に必要な技術が複雑化、専門化していることで部署間の関わり...
 前回のその1に続いて解説します。
 

4. プロフェッショナルが協力して作るDFM/DFX

 
 あなたの会社では、設計部署と生産技術部署とで自部署だけの利益を考えるのではなく、全体最適を議論する話し合いはできているでしょうか?
 
 設計と生産技術とで個別製品の生産方法について話し合うことはあっても、設計側に対する製造性の仕組みづくりについて話し合うことはなかなか難しいことだと思います。それは、トップ・マネジメントが率先して DFM/DFX を議論する機会を作っていないからです。現場任せでは進みません。
 
 さらに、よくあるトップ・マネジメントの問題が、「設計者にすべての責任がある、設計者は何でもこなさなければならない」という考え方です。これも DFM/DFX が進まない原因のひとつです。
 
 生産のことも品質のことも購買・手配のことも設計が責任を持たなければならないというのは、上流工程の設計で総合的品質が決まるという意味ではその通りなのですが、設計部署、あるいは、設計者にだけにその責任を負わせてしまうというのは良いこととはいえません。
 
 設計と製造合わせても10人程度の技術者で進めている開発であれば、設計者がすべてを把握することも可能でしょう。しかし、そんな小規模な開発現場は少ないでしょうし、生産技術、品質管理、購買などの製造に関する個々の技術は複雑化、専門化しており、設計者にすべての責任を負わせるのは現実的ではありません。
 
 そもそも関連部署それぞれが複雑化、専門化する技術に追従しなければ、メーカーとしての将来はないでしょう。DFM/DFXの仕組みは、設計者が何でも知っていて、何でもできる体制ではなく、開発に関係する関係者それぞれが専門家となって、設計者に必要な仕組みを提供するという体制を前提にして構築すべきです。
 
人的資源マネジメント図140. 専門家グループによる設計体制
 
 生産技術、品質、購買などの部署はそれぞれの機能における専門家であり、様々な知識や経験を持っているはずです。その専門の知識や経験を加工したり、ツール化したりして、設計段階で使えるようにする。これが DFM/DFXの仕組みです。トップ・マネジメントには、率先してこのような体制づくりを行ってほしいものです。
 
 従来大切にされていた DFM/DFXが疎かになっているのは、製品開発に必要な技術が複雑化、専門化していることで部署間の関わりが希薄になっていることが関係しているかもしれません。各部署で専門家が育つのはよいことですが、専門家グループによる DFM/DFXについて、改めて考えてみる必要があるように思います。
 
 設計段階で DFM/DFXの仕組みが機能しているか、仕組みづくりのための体制はできているかなど、自社の開発の仕組みについて振り返ってみる機会になれば幸いです。
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!


「人的資源マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
技術士第二次試験対策:受験勉強の時間を確保する

1. 受験勉強の時間の確保がポイント  受験において、受験生の方々の共通した悩みの1つは受験勉強の時間の確保だと思います。技術士を受験される方は仕事...

1. 受験勉強の時間の確保がポイント  受験において、受験生の方々の共通した悩みの1つは受験勉強の時間の確保だと思います。技術士を受験される方は仕事...


社内のコミュニケーション不足 人材育成・組織・マネジメント(その9)

  【人材育成・組織・マネジメントの考察 連載目次】 1. 間接部門のプロセス改善とは 2. 現場は全てを物語る 3. 明日の仕...

  【人材育成・組織・マネジメントの考察 連載目次】 1. 間接部門のプロセス改善とは 2. 現場は全てを物語る 3. 明日の仕...


自覚なき差別、マイクロアグレッションとは

  外国人に「外国人なのに日本語お上手ですね。」女性に「得意料理は何ですか?」障害を持っている人に「頑張っているね。」など。日常的に聞くこ...

  外国人に「外国人なのに日本語お上手ですね。」女性に「得意料理は何ですか?」障害を持っている人に「頑張っているね。」など。日常的に聞くこ...


「人的資源マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
人的資源マネジメント:リーダーを育てる製品開発(その2)

 前回のその2に続いて解説します。   3. 過酷な環境下で会社を辞める技術者    このような状況下でどのような取り組みをし...

 前回のその2に続いて解説します。   3. 過酷な環境下で会社を辞める技術者    このような状況下でどのような取り組みをし...


人的資源マネジメント:高いパフォーマンスを実現する組織文化(その1)

 職場の一人ひとりがやりがいを持ち、イキイキと充実した状態で仕事ができること、そして、そういう職場環境を通じて組織が最高のパフォーマンスを発揮できることを...

 職場の一人ひとりがやりがいを持ち、イキイキと充実した状態で仕事ができること、そして、そういう職場環境を通じて組織が最高のパフォーマンスを発揮できることを...


世界をリードするモノづくり中小企業の人づくり

 以前、東京国際フォーラムで東京理科大主催のパネルディスカッションが開催されました。テーマは「ニッチトップで世界をリードする日本のモノ作り企業」。株式会社...

 以前、東京国際フォーラムで東京理科大主催のパネルディスカッションが開催されました。テーマは「ニッチトップで世界をリードする日本のモノ作り企業」。株式会社...