今回は、特許権等の「産業財産権」としては保護されない「知的資産」をどのように守ったらいいのかについて、不正競争防止法による保護を中心として、連載で具体的に解説します。
1.知的資産
特許権等の産業財産権や著作権では保護されない知的資産、あるいは特許は取得できるかもしれないが、他社には知られたくない自社の独自技術など、これらはどのように保護したらいいのでしょうか。大きく分けると、以下のように分類できると思います。
① 技術として確立しているが、秘密にしてお
きたいもの
② 特定の社員が熟知している技能や情報
③ 会社として保有している独自の情報
これらの保護は、主に不正競争防止法(営業秘密の保護)に委ねることになります。上記の他、重要な知的資産として「ブランド」がありますが、ブランドを育成し保護することは、デザインによる知的資産経営の最終的な目標ですから、後日あらためて説明します。
繰り返しになりますが、営業秘密として捉えるものは、いわゆる「ノウハウ」のような「すごい技術」だけではありません。社員の頭にあるちょっとした情報や、「こんなの普通じゃないか?」と思うような情報であったとしても、数を集めれば立派な営業秘密になります。地べたをはって社内の情報をかき集めれば、「営業秘密の山」を築くことができるのです。
不正競争防止法の営業秘密をめぐる裁判において、最も多いのが「顧客名簿を盗んだ/盗まれた」という事案です。
2.秘密を盗まれることのリスク
営業部門で長年かけて集めた顧客リストや顧客情報が盗まれたら、企画部門で作り上げた新しい商品や事業計画が盗まれたら、そのリスクは大きいのではないでしょうか。顧客情報も事業計画も、特許権等の産業財産権では保護されません。しかし、企業にとっては重要な「経営資産」「知的資産」です。自社が積み重ねてきた営業情報や事業計画が他社に盗まれ、利用されたならば、自社の狙った優位性は無に帰してしまいます。
特許権等の産業財産権で保護されるものであれば、「私は権利を持っている、やめなさい」と言って他社を比較的簡単に排斥できますが、産業財産権で保護されない「情報」の他人による使用を排斥するには、保護を受けるための仕組み(管理体制)を構築しておかなければなりません。
管理体制が確立していれば、不正競争防止法により保護を受けることが可能です。すなわち、「その情報を使うな」「その情報を使った製品を販売するな」と言えるのです。
しかしながら、これは最...