管理職が学ぶべき面談技術とは (その2)

更新日

投稿日

 前回のその1に続いて解説します。
 
 共通ゾーンを意識することができたら、次に考えることは、実際にパーソナル・アジェンダをどうやって引き出すかです。そのための入り口は、そのメンバーが抱いている不満を十分に聞くということ。これを、傾聴といったりアクティブ・リスニングといったりしますが、「相手の話に興味・関心を持ち、それを積極的に表にあらわす。そして、相手をほぼ全面的に肯定しながら、できるだけ相手の心理を浮き彫りにし、さらに深く話を聞いていく」という話の聴き方のことです。
 
 文章だとわかりにくい表現になります。傾聴やアクティブ・リスニングという言葉はほとんどの方が聞いたことがあると思います。これは身体で覚えることが大切です。もし、真面目に勉強したことがないという方は、何でもいいのでまずは専門書を一冊読むことをお薦めします。さて、面談ではこのアクティブ・リスニングによってパーソナル・アジェンダを引き出すわけですが、具体的には次のようなことを聞き出せるとよいでしょう。
 
・今の仕事で大切に思っていること
・今の仕事で自分らしいと思えるとき
・今の仕事でやりがいを感じる瞬間
・今の仕事で大変だったり辛かったりすること
・今の仕事を通じて自分はどうなりたいのか
・今の仕事がどうなれば(どう変われば)うれしいのか
・会社に期待すること
・上司(面談しているマネジャーやリーダー)に期待すること
 
 このようなことを聞き出すことができれば、さらに続けて、社員として何を期待されていると思うのかを聞き出します。年度はじめに説明があった会社(組織)の方針や計画の話が出てくるとベストですが、そうでなくても気にすることはありません。大切なのは、彼/彼女がどう思っているのかを理解することです。パーソナル・アジェンダを十分に引き出した後ですから、面談している彼/彼女が会社(組織)のことをどう考えているのかをスムーズに聞き出せるはずです。
 
・会社にとって何が大事なのか
・会社は何を目指しているのか
・会社は社員にどうなることを期待しているのか
・会社は自分(面談を受けているメンバー)に何を期待しているのか
 
 ここまでできてはじめて、面談しているマネジャーやリーダーは、彼/彼女に対して自分の思いを説明することができる関係になります。やっと、彼/彼女とのお互いの共通部分、共有ゾーンについて話をすることができるということです。こうやって文章にすると面倒な感じがするかもしれませんが、大丈夫です。試しに、実際の面談の場面を想像してみてください。ここで書いていたことが自然にできている姿が想像できるのではないでしょうか。
 
 これまでのことができればかなり充実した面談になると思いますが、もう一つ、これができればもっと良い面談になるということがあります。それは、彼/彼女のパーソナル・アジェンダを広げる、ということです。共有ゾーンについて話をするというのは、単に面談する側とされる側の両者の思いを「調整」して共通部分を特定するということではないということです。
 
人的資源マネジメント
図84. 広がった共有ゾーン
 
 図84を見てわかるように、彼/彼女のパーソナル・アジェンダを広げることで、会社やマネジャー/リーダーとの共通部分、つまり、共有ゾーンが大きくなるわけです。いわゆる win - win、会社も含めれば win - win -win ということになります。そして、パーソナル・アジェンダを広げることは、彼/彼...
 前回のその1に続いて解説します。
 
 共通ゾーンを意識することができたら、次に考えることは、実際にパーソナル・アジェンダをどうやって引き出すかです。そのための入り口は、そのメンバーが抱いている不満を十分に聞くということ。これを、傾聴といったりアクティブ・リスニングといったりしますが、「相手の話に興味・関心を持ち、それを積極的に表にあらわす。そして、相手をほぼ全面的に肯定しながら、できるだけ相手の心理を浮き彫りにし、さらに深く話を聞いていく」という話の聴き方のことです。
 
 文章だとわかりにくい表現になります。傾聴やアクティブ・リスニングという言葉はほとんどの方が聞いたことがあると思います。これは身体で覚えることが大切です。もし、真面目に勉強したことがないという方は、何でもいいのでまずは専門書を一冊読むことをお薦めします。さて、面談ではこのアクティブ・リスニングによってパーソナル・アジェンダを引き出すわけですが、具体的には次のようなことを聞き出せるとよいでしょう。
 
・今の仕事で大切に思っていること
・今の仕事で自分らしいと思えるとき
・今の仕事でやりがいを感じる瞬間
・今の仕事で大変だったり辛かったりすること
・今の仕事を通じて自分はどうなりたいのか
・今の仕事がどうなれば(どう変われば)うれしいのか
・会社に期待すること
・上司(面談しているマネジャーやリーダー)に期待すること
 
 このようなことを聞き出すことができれば、さらに続けて、社員として何を期待されていると思うのかを聞き出します。年度はじめに説明があった会社(組織)の方針や計画の話が出てくるとベストですが、そうでなくても気にすることはありません。大切なのは、彼/彼女がどう思っているのかを理解することです。パーソナル・アジェンダを十分に引き出した後ですから、面談している彼/彼女が会社(組織)のことをどう考えているのかをスムーズに聞き出せるはずです。
 
・会社にとって何が大事なのか
・会社は何を目指しているのか
・会社は社員にどうなることを期待しているのか
・会社は自分(面談を受けているメンバー)に何を期待しているのか
 
 ここまでできてはじめて、面談しているマネジャーやリーダーは、彼/彼女に対して自分の思いを説明することができる関係になります。やっと、彼/彼女とのお互いの共通部分、共有ゾーンについて話をすることができるということです。こうやって文章にすると面倒な感じがするかもしれませんが、大丈夫です。試しに、実際の面談の場面を想像してみてください。ここで書いていたことが自然にできている姿が想像できるのではないでしょうか。
 
 これまでのことができればかなり充実した面談になると思いますが、もう一つ、これができればもっと良い面談になるということがあります。それは、彼/彼女のパーソナル・アジェンダを広げる、ということです。共有ゾーンについて話をするというのは、単に面談する側とされる側の両者の思いを「調整」して共通部分を特定するということではないということです。
 
人的資源マネジメント
図84. 広がった共有ゾーン
 
 図84を見てわかるように、彼/彼女のパーソナル・アジェンダを広げることで、会社やマネジャー/リーダーとの共通部分、つまり、共有ゾーンが大きくなるわけです。いわゆる win - win、会社も含めれば win - win -win ということになります。そして、パーソナル・アジェンダを広げることは、彼/彼女にとってもすごくうれしいことです。そういう面談ができた時は、この図のように大きくなった自分を感じることができるものなのです。マネジャーやリーダーにも有意義なことです。
 
 パーソナル・アジェンダを広げる技術を身につけるのは、難しいのも事実です。それについては別の機会にお伝えできればと思います。でも、ここで書いたようなことを意識して面談に望むだけでも、面談は変わります。面談を受けるメンバー側だって、こういう面談にしたいと要求することで、いつもの面談を変えることができます。面談に不安・不満があるのであれば、変えるための何かしらの試みを実行することは大切です。大きな変化も小さな変化から始まります。
 
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!


「人的資源マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
中国工場の実状を知る、日本人駐在員について 中国工場の品質改善(その16)

  【第2章 中国工場の実状を知る】   【日本人駐在員について】  前回のその15に続いて解説します。 (3)部長・科...

  【第2章 中国工場の実状を知る】   【日本人駐在員について】  前回のその15に続いて解説します。 (3)部長・科...


技術士第二次試験対策:論文を時間内に書くための時間管理方法(その2)

  1.選択科目での時間管理方法   【特集】技術士第二次試験対策:技術士第二次試験に関する記事まとめページはこちら!口頭試...

  1.選択科目での時間管理方法   【特集】技術士第二次試験対策:技術士第二次試験に関する記事まとめページはこちら!口頭試...


技術士第二次試験対策:業務内容詳細で書く事とは(その2)

  前回は、「具体的な文を書く」でした。今回は、「能動態の文を書く」です。 【特集】技術士第二次試験対策:技術士第二次試験に関する記事ま...

  前回は、「具体的な文を書く」でした。今回は、「能動態の文を書く」です。 【特集】技術士第二次試験対策:技術士第二次試験に関する記事ま...


「人的資源マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
人的資源マネジメント:効率的で実践的な進捗管理とは(その2)

 開発現場にとっては、プロジェクトが増えるとそれらの進捗管理が課題になります。大変なことになる前に進捗管理の仕組みを見直す必要があるでしょう。必要最小限の...

 開発現場にとっては、プロジェクトが増えるとそれらの進捗管理が課題になります。大変なことになる前に進捗管理の仕組みを見直す必要があるでしょう。必要最小限の...


多面的に現場を見る

 クリーン化という仕事は、強い思い入れと感性が必要なちょっと特異な仕事です。このことはクリーン化担当であれば、少なからず意識していると思います。でも仕事と...

 クリーン化という仕事は、強い思い入れと感性が必要なちょっと特異な仕事です。このことはクリーン化担当であれば、少なからず意識していると思います。でも仕事と...


人手不足とクリーン化について

 最近はどの分野でも人手不足が切実な問題となっています。少子化が大きな要因ですが、その対応として単に人を補填すれば良いという問題ではありません。今回は...

 最近はどの分野でも人手不足が切実な問題となっています。少子化が大きな要因ですが、その対応として単に人を補填すれば良いという問題ではありません。今回は...