日本の多くの中小製造業は、「多品種少量、受注加工生産型企業」です。しかし、品質管理の考え方は、大量生産時代に欧米から学んだ「統計的品質管理」がベースになっています。では今、品質管理には何が求められているでしょうか。
◆「ロット管理」ではなく「1個管理」の品質管理
新しいタイプの品質管理とは具体にどのように取り組んでいったら良いでしょうか。次の4項目について解説します。
1.「不良」発見ではなく「異常」を素早く察知する 2.「三現主義」で即アクション 3.「モグラ叩き」から「しくみ叩き」へ 4.「見える化」と「4M管理」のしくみ対策
今までの品質改善は事後のデータを解析し対策する手法が主体であり
QC七つ道具はその代表的な手法です。これは、繰り返し同一製品が生産される場合には有効な手段で、時間をかけ、生産を重ねるごとに品質は安定してきます。多品種少量生産工場では、上記のような品質管理では品質の確保は困難となっています。これでは品質が安定する前に生産が終ってしまうからです。
1. 「不良」発見ではなく「異常」を素早く察知する
製造工程で、普段とは違う異常な事象、不良ではないが予兆(ばらつきが大きい・規格ぎりぎり)を発見して、原因究明と対策を行います。そのためには、日常管理の中で「異常」とは何かを明確に定義しておく必要があります。以下に「異常」の例を示します。
・ルールを守らないで作業している
・作業中断が多い
・作業のやり直しが多い
・機械がチョコ停する
・機械の異音、臭いなどいつもと違う
このような異常が見られたら放置せずに、即座に原因を解明して対策することで、不良を未然に防ぐことができます。誰が、いつ、どのような方法で処置を行うのか「異常処置ルール」を決めておき現場で、誰もがわかるフローなどを掲示しておきます。
2. 三現主義に基づくアクション
品質管理では事実に基づく判断とアクションンが必要になります。もぐら叩きで終わることなく、因果関係を究明し、しくみの悪さを是正する必要があります。しかし、事実とは何かを理解していない場合が多いのです。例えば、「作業ミス」は事実としても、これでは現場を見たことにならないため、対策も対象がぼやけてしまい、効果が得られません。
三現主義とは、以下の3項目のことを指します。
●現場
① 人の状況(作業者はだれ、監督者の取った行動)
② 機械設備、治工具の問題発生時の状況
③ 作業場所の温湿度、明るさなど
●現物
①「傷」は一般用語、固有な現象を捉える「横に長さ1cm、深さ0.5mmの傷」
② 5感を働かせて観察する
③ ルーペなどで拡大してみる
●現実
① 生産、品質の推移記録
② 4M変化点の有無
③ 測定データ・ばらつき・統計
3. 「モグラ叩き」から「しくみ叩き」へ
多品種少量生産工場で最も多く発生するヒューマンエラーなどのトラブルは、「注意する」で終わらせてしまう場合がほとんどですが、これでは「モグラ叩き」で終わってしまいます。ヒューマンエラーの背後には管理の仕組みの不備が必ず潜んでいます。そこで「しくみ叩き」が必要になってきます。では、「しくみ」とは何かを具体例を挙げてみます。
・ヒヤリハット報告のしくみ
・ヒューマンエラー予防処置評価のしくみ
・ポカヨケ対策のしくみ
・機械の保守点検のしくみ
・検査の種類と切り替え手順のしくみ
・見える化のしくみ
・4M変化点管理のしくみ
作業ミスなど問題が発生したら、ミスを責めるのではなく、上記のしくみに立ち返って、どのしくみの、どの部分に不備があるのか具体的に指摘し、しくみを改定して、周知します。この「しくみ叩き」に徹することが重要です。
4. 「見える化」と「4M管理」のしくみ対策
必要な情報を現場でリアルタイムに見えるようにすること、そのことにより問題や異常にすぐに気づき、迅速に解決し、再発防止を打てるような仕組みを作ります。
① 何を見える化するのか?(品質、生産状況の異常、変化点)
② 情報のジャストインタイム化(誰が、どんな情報を、誰に)
また変化点管理4つの重要ポイントとして
① 異常を定義する:異常が発生するのは、何らかの変化点が生じていると考えられるのでそれを突き止めて対策を講じます。
② 重点管理項目を決める:すべてを均一に管理することはできないので、重要製品、重要寸法、重要工程などを決めて点検点・管理点を定義します。重点管理では、異常の監視周期の頻度を...