製造業の人材育成・多能工化:新人教育の進め方とは

更新日

投稿日

 新入社員は、新人研修、OJTによる現場指導など、教育訓練を実施して、早く即戦力として仕事を任せられるようにしなければなりません。しかし、教育はなかなかうまくいかない、というのが実情です。その理由としては、次の点が考えられます。
 
 ① 指導者は、あれこれ自分の業務で忙しすぎて指導ができない
 ② 教えている間に自分でやったほうが早いので、仕事を任せようとしない
 ③ いちいち教えるのは、手間が掛かり面倒くさい
 ④ 教育計画が建前となっていて、中身が十分でなく効果が上がらない
 
 

1. OJTがうまくいかない理由

 
 OJTは、職場内で、実践の知識や技能を身に付ける重要な教育訓練手段です。従って、効果的な方法で、きちんとしたOJTを実施する必要があります。しかしながら、OJTの実施者(上司・管理者)の力量によって、成果にバラつきが生じる欠点があります。
 
 例えば、この製品を仕上げる技能は右に出る者がいないというベテラン係長がその加工技術や組立技術・ノウハウを部下にうまく伝授できないため、係長だけがいつもその製品を担当し、他の人間は作業ができないといったケースです。
 
 この係長も部下にOJTをしていないわけではないが、「指導ノウハウ」の未熟さから部下を育てきれていないのです。要するに、会社として部下を育てる能力・ノウハウが個人任せになっているのです。
 
   人材教育
 

2. 効果的なOJTを行うには

 
 効果的なOJTを行うには、具体的な計画づくりと、実施のフォローが成功させるための最大のポイントになります。計画作成は、教育ニーズに基づき実施しますが、それには、個人別にニーズを捉える必要があります。
 
 ① 仕事に必要な能力を定義する(自職場の仕事の内容を基本作業に分解する)
 ② 新人の能力を把握する(学校を卒業して入社した場合は能力ゼロと捉える)
 ③ 現在の能力と、必要とされている能力の差がOJTのニーズとなる 
 ④ ニーズに基づいて、個人別にOJT計画書をつくる
 ⑤ OJTの実施、遅れた場合は、計画を見直して日程を組み直す
 ⑥ 終了にて、受講者はOJT受講報告書を作成する
 ⑥ 評価とフィードバック(教育実施者は結果を評定し、フォローする)
 
 OJTは、実際の業務の経験を積むことで、仕事を任せ、うまく遂行できるように教え、受講後は自分で学習し、成長する機会を与えることが重要です。
 

【新人の教育プログラム内容】

 
 ① 企業文化、暗黙のルールを認識させる
 ② 組織構成員・社会人としての意識・価値観の形成
 ③「指示待ち」「他人依存」「責任転嫁」の姿勢を排除
 ④ 自分で考え、学ぶ自立した企業人としての態度を教える
 ⑤ 専門業務、技能の内容を習得する 
 

【OJTを行う側の監督層の実施しなければならない事】

 
 ① 必要とする技能・標準作業のリストアップと教育マニュアル・手順書の作成
 ② 新人の現状能力・資質の測定
 ③ 各新人ごとの教育ニーズの把握と、教育メニューの作成
 ④ 教育メニュー...
 新入社員は、新人研修、OJTによる現場指導など、教育訓練を実施して、早く即戦力として仕事を任せられるようにしなければなりません。しかし、教育はなかなかうまくいかない、というのが実情です。その理由としては、次の点が考えられます。
 
 ① 指導者は、あれこれ自分の業務で忙しすぎて指導ができない
 ② 教えている間に自分でやったほうが早いので、仕事を任せようとしない
 ③ いちいち教えるのは、手間が掛かり面倒くさい
 ④ 教育計画が建前となっていて、中身が十分でなく効果が上がらない
 
 

1. OJTがうまくいかない理由

 
 OJTは、職場内で、実践の知識や技能を身に付ける重要な教育訓練手段です。従って、効果的な方法で、きちんとしたOJTを実施する必要があります。しかしながら、OJTの実施者(上司・管理者)の力量によって、成果にバラつきが生じる欠点があります。
 
 例えば、この製品を仕上げる技能は右に出る者がいないというベテラン係長がその加工技術や組立技術・ノウハウを部下にうまく伝授できないため、係長だけがいつもその製品を担当し、他の人間は作業ができないといったケースです。
 
 この係長も部下にOJTをしていないわけではないが、「指導ノウハウ」の未熟さから部下を育てきれていないのです。要するに、会社として部下を育てる能力・ノウハウが個人任せになっているのです。
 
   人材教育
 

2. 効果的なOJTを行うには

 
 効果的なOJTを行うには、具体的な計画づくりと、実施のフォローが成功させるための最大のポイントになります。計画作成は、教育ニーズに基づき実施しますが、それには、個人別にニーズを捉える必要があります。
 
 ① 仕事に必要な能力を定義する(自職場の仕事の内容を基本作業に分解する)
 ② 新人の能力を把握する(学校を卒業して入社した場合は能力ゼロと捉える)
 ③ 現在の能力と、必要とされている能力の差がOJTのニーズとなる 
 ④ ニーズに基づいて、個人別にOJT計画書をつくる
 ⑤ OJTの実施、遅れた場合は、計画を見直して日程を組み直す
 ⑥ 終了にて、受講者はOJT受講報告書を作成する
 ⑥ 評価とフィードバック(教育実施者は結果を評定し、フォローする)
 
 OJTは、実際の業務の経験を積むことで、仕事を任せ、うまく遂行できるように教え、受講後は自分で学習し、成長する機会を与えることが重要です。
 

【新人の教育プログラム内容】

 
 ① 企業文化、暗黙のルールを認識させる
 ② 組織構成員・社会人としての意識・価値観の形成
 ③「指示待ち」「他人依存」「責任転嫁」の姿勢を排除
 ④ 自分で考え、学ぶ自立した企業人としての態度を教える
 ⑤ 専門業務、技能の内容を習得する 
 

【OJTを行う側の監督層の実施しなければならない事】

 
 ① 必要とする技能・標準作業のリストアップと教育マニュアル・手順書の作成
 ② 新人の現状能力・資質の測定
 ③ 各新人ごとの教育ニーズの把握と、教育メニューの作成
 ④ 教育メニューに基づくOJT計画書の作成
 ⑤ OJTの実施と客観的評価の実施、フィードバック
 
 OJTの名のもとに、現場に任せきりとなって、無計画な教育が実施されていると離職率の増加や、戦力として育たないという、せっかくの人材を生かせないことになりかねません。それには、企業トップが教育に関心を持ち、どのような人材を必要としているかを、はっきり明示し長期戦略で、人材育成に取り組む必要があります。中小企業こそ、人材を生かして行かなければ、生き残りは難しいと考えます。
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に...


「人財教育・育成」の他のキーワード解説記事

もっと見る
「ネガティブな内容が含まれる報告書、企画書、認可書類を一瞬で合意する」形容詞化戦略(上級編) あなたも一瞬で「技術が伝わる」エンジニアになれる(その7)

         【あなたも一瞬で「技術が伝わる」エンジニアになれる 連載目次】 1. 会話を...


教育スタイルを変えて、パフォーマンスを高めよう

  ある組織での話です。ここは、工場長・部長・課長・係長・現場リーダーの階層に分かれた組織でした。ある時、現場リーダーにたいして「洞察力を...

  ある組織での話です。ここは、工場長・部長・課長・係長・現場リーダーの階層に分かれた組織でした。ある時、現場リーダーにたいして「洞察力を...


相手が自ら動く、たった1行の魔法の言葉(中級編) あなたも一瞬で「技術が伝わる」エンジニアになれる(その5)

         【あなたも一瞬で「技術が伝わる」エンジニアになれる 連載目次】 1. 会話を...

         【あなたも一瞬で「技術が伝わる」エンジニアになれる 連載目次】 1. 会話を...


「人財教育・育成」の活用事例

もっと見る
やろうと思っているけどできないことばかり、の克服(その5)

 前回は、やる気を起こすにはとにかく行動することが大切で、行動を起こすための工夫をいくつか紹介しました。やろうと思ってできなかったことも、これで取りかかる...

 前回は、やる気を起こすにはとにかく行動することが大切で、行動を起こすための工夫をいくつか紹介しました。やろうと思ってできなかったことも、これで取りかかる...


物流とスキル

1. 輸送のスキルとは  物流の仕事は専門性が強いものと思われます。何故なら多くの会社が物流業務をアウトソースしているからです。自社で簡単にできるの...

1. 輸送のスキルとは  物流の仕事は専門性が強いものと思われます。何故なら多くの会社が物流業務をアウトソースしているからです。自社で簡単にできるの...


「気づき」の仕組み 擦り合わせ型開発 基本の仕組み (その2)

【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わせ型 目指すべき開発体制とは(その2)日本企業文化を引きず...

【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わせ型 目指すべき開発体制とは(その2)日本企業文化を引きず...