【メトリクス管理 連載目次】
前回のその8に続いて解説します。
1. メトリクスの実例
それでは、実際の開発現場で使われたメトリクスの実例を紹介します。グラフなどはすべて Cloud-Based Metrics PM を使ってウェブブラウザで表示させたものです。一部、Metrics Add-in の出力を使って Excel で表示させたものもあります。
2. 工数推移
時間軸で見た工数の予定(青色)と実績(赤色)のグラフ。プロジェクト全体や、プロジェクト中のブロックなど、必要なスコープ(範囲)で表示させることができます。単純に計画と実績の乖離を確認することができます。実績は進捗率を工数(時間)に変換したものです。
3. タスク推移
時間軸でみたタスク数の推移グラフ。タスク数とは時間の分解能(日,週,月)に合わせて、その分解能であらわした期間のタスクをカウントしたものです。作業の負荷を知ることができます。プロジェクト全体や、プロジェクト中のブロックなど、必要なスコープ(範囲)で表示が可能です。また、色分けは「タスクの状態」を使った「遅れている」「完了」「今後のタスク」などの分類です。タスク数で見たときの遅れ度合いや、遅れているタスクがいつからはじまっているのか、その遅れはいつまで影響するのか、などを知ることができます。
4. 工数一覧・タスク一覧
組織全体やある特定の部署で存在している複数のプロジェクトについて、タスク数や工数を表示したグラフ。色分けは前述のグラフと同じで、工数の場合は「計画」(図では作業時間)と「実績」(図では実績作業時間)。タスクの場合は「遅れている」「完了」「今後のタスク」といった進捗状況の分類です。タスク数や工数を比較・一覧できるほか、その進捗状況を比較・一覧することができます。進捗率などの遅れている割合(比率)の把握も重要ですが、規模が大きいほど進捗の影響が大きくなるので、作業量と遅れている割合の両方を一覧できることは効果的です。
5. 進捗履歴
過去どのようにプロジェクトの進捗率が推移してきたかを表示したもの。過去その時々の工数やタスク数で見たときの進捗率の履歴です。遅れが拡大傾向にあるのか収束傾向にあるのかわかります。下図では2つのプロジェクトについて、 約1ヶ月ごとに、そのときの上段は遅延時間(日)、下段は遅延タスクの割合(%)を表示しています。遅延時間は、その時点で計画(作業時間)に較べて実績(実績作業時間)がどれだけ遅れているか、遅延タスク割合は、その時点のタスク数に対して「遅れている」タスクがどのくらいの割合なのかを示しています。
6. リソースマップ
プロジェクトのブロックごとに計画と実績の工数を表示し、それぞれを担当しているメンバーで分類したグラフ。メンバーがどのブロックの作業にどのくらいの時間を投入する予定になっており、実際にどのくらいの時間を投入したのかを一覧することができます。
7. プロジェクト横断のメンバー負荷分析
組織が、電子制御,機構,ソフトなどの技術要素で別れており、プロジェクト・メンバーがそれらの組織からの横断的なメンバーで成り立つような場合、実質、組織のマネジャーがプロジェクトへのメンバーアサインやメンバーの進捗や負荷の管理を任されているケースが多いのです。
この場合、組織のマネジャーにとって、自分の組織に所属しているメンバーの工数管理は非常に重要になりますが、今後の詳細な予定工数を知りたい場合は、メンバーが関係しているプロジェクトそれぞれの詳細な計画を入手して、メンバーが関係している部分だけを抜き出して足し合わせるという手間のかかる作業となります。Metrics for PM を使えば、プロジェクトごとのデータを結合して分析することが可能です。
図の左側のグラフは、ある部署に所属しているメンバーの毎月の計画工数であり、右側のグラフは、あるメンバーについて毎月の計画工数で担当するプロジェクトごとに色分けしたものです。このグラフにより、プロジェクトの兼任状況や、移行状況などを確認することができます。
8. 工数を使ったアーンドバリュー・マネジメント
Metrics for PM では、個別にインタフェースを作成する必要がありますが、 MS Project ファイルとは別に実績工数をデータベースに登録することができ、実績工数を使うと、工数でのアーンドバリュー・マネジメントを表示することが可能です。最新の計画と別に当初(企画時)の計画の差異を比較することもでます。
9. 進捗ポートフォリオ
前述のアーンドバリュー・マネジメントの計画工数、進捗工数、実績工数を使って、プロジェクトのブロックごとに計画の遅延と実績の遅延とを算出し、ポートフォリオ表示したグラフ。横軸が計画遅延で、縦軸が実績遅延を示す。それぞれ 100% がオンスケジュールで、100% 未満が遅れている状態です。プロット(点)は、プロジェクトを構成するブロックであり、このグラフにより、どのブロックが遅れているのか、計画を修正すべき...
遅れなのか、メンバーを増やす必要がある工数投入遅れなのかを知ることができます。
10. 運用の規模や形態に合わせた仕組み化
システム成長モデルで説明したように、レベル1,レベル2,レベル3というプロジェクト管理の運用形態をツールやシステム環境の違いをもとに説明しましたが、MSP は利用形態にバラツキがあることも考慮しておく必要があります。典型的には下図のように整理することができます。
プロジェクトの現場では、規模や MSP の利用形態が、プロジェクトによって違っていたり、組織によって変化したりすることは珍しくないでしょう。そもそも、プロジェクトとはこのような多様性を持つものであるため、プロジェクト管理の仕組みも柔軟性を持ったものになっている必要があります。さもなければ、結局は無駄な投資や時間を生むことになるのです。
次回は、プロジェクト管理支援システム Metrics for PM を構成する製品について解説します。
(その1)
(その2)
(その3)
(その4)
(その5)
(その6)
(その7)
(その8)
(その9)
(その10)