ステージゲート法には限りませんが、新しいプロセスの導入に研究者や技術者の協力は欠かせません。今回はこの方法を議論します。
1.ステージゲート法成功にはプロジェクトチームによるプッシュがカギ
マーケティングにおけるプロモーションや生産方式など、企業の活動をプル(引く)とプッシュ(押す)という2つの方向で表現することがありますが、ステージゲート法の推進法も同様に議論することができます。
プルのイメージは、ゲートでの意思決定(承認・中止)の強制力を梃子に、ステージゲート法導入に向けて、川上のプロジェクトチームによるステージの積極的な活動を促すというものです。逆にプッシュは、プロジェクトチームのステージゲート法の効果や方法に対する理解や信頼、さらには共感に基づき、プロジェクトチームが主体的にステージゲート法実現を推進するイメージです。
ステージゲート法導入と言うと、前者のプルアプローチで進めるというイメージが強いのですが、私はプロジェクトチームによるプッシュアプローチを目指して、プロジェクトを進めることをお勧めします。 なぜなら、そもそもステージゲート・プロセスの主役は、ゲートで評価を担当するゲートキーパーではなく、プロジェクトチームであるからです。
プロジェクトチーム・メンバーは、対象プロジェクトに対し大きなコミットメントをすることを期待され、各メンバーはそれぞれのフェーズで数百時間から数千時間も時間を投入することになります。一方、ゲートキーパーは、プロジェクトチームが多くの時間と努力を重ねた結果を評価するだけで、ゲートミーティングへの準備を含めても数時間を投入するにすぎません(もちろん大変重要な数時間ではありますが)。加えて、ゲートミーティングがプロジェクの成果に与える影響は決して小さくはないものの、プロジェクトの成果はプロジェクトチームの活動に大きく依存しています。
ゲートミーティングが、その意思決定の強制力だけでプロジェクトチームの成果のための活動全てをコントロールすることはできません。プロジェクトチームが、このテーマ・プロジェクトをどう捉えどう推進するかが、成果の大半を決めるのです。従って、ステージゲート・プロセスによるプロジェクト成功のためには、プロジェクトチームはステージゲート法を理解し、信頼し、更には共感することが極めて重要になってきます。
2.プロジェクトチーム・メンバー全員に事業化に向けての勘所や大筋の道筋を理解してもらう
サッカーの試合においてゴールを重ねて勝つためには、フォワードの選手だろうが、ディフェンスの選手だろうが、サッカー選手全員がゴールをするために、ゴールするフォーメーションやプロセスを共有していなければなりません。これと同様に、テーマの製品化、事業化を目的としたプロジェクトにおいても、関係するメンバーは、市場を知り、市場で製品や事業を成功させるフォーメーションやプロセスを共有していなければなりません。
既存の事業においては、取り巻く環境の不確実性が低いため、通常組織はそれぞれの機能毎に編成され、互いにコミュニケーションを最低限に抑え、確実性が高いゆえ予め決められた・決めることのできた作業を効率良くこなすことを目的に作られています。このような組織では、構成員全員が必ずしも事業化の視点、全体のプロセスの視点を持たなくても、それなりの成果を出すことはできます。
しかし、不確実性の高い、革新的なテーマにおいては、この既存事業の組織体制・運用法では成功はおぼつきません。情報は不確実で経験もなく、また経験があるにしても皆が共有していないからです。このような状況においては、上で挙げたサッカーの試合のように、日々変化する情報を効率よく共有すると同時に、全体を進める大きな絵、すなわち、事業化における重要な勘所や成功に向けての『大筋の』道筋を共有・理解しておくことが必要となります。
3.プロジェクトチーム・メンバー対象の説明・研修会を開催する
幸いなことに、この事業化における重要な勘所や道筋の共有・理解は、戦略やマーケティングに関する先人の経験や研究を多いに活用することができます。この部分のプロジェクトメンバーの理解を、ステージゲート法導入の最初の部分できちんと行ない、共感のレベルにまで高めることが重要となります。ステージゲート法の導入の必要性を理解していないプロジェクトチームに、テンプレートを渡しこれを埋めろと言っても、意味のあるテンプレートを作ることはできません。
ステージゲート法の意味や価値、そしてステージゲート法を導入するに当って、プロジェクトチームに『具体的に...