ビジネスの質的変化への対応 開発生産性向上(その2)

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  技術マネジメント
 

【開発生産性向上 連載目次】

 前回の「開発生産性向上(その1)」では、日本においては生産性の向上が国と企業にとっての喫緊の課題であることを解説しました。一方では、ビジネスにはその「質」の面の変化をも求められていて、これが我々の取り組みを更に複雑にしています。今回はこの点について解説します。
 

3.ビジネスの「質」の変化

 
 企業は、常にそのビジネスの特質に応じた様々な変化を求められていますが、近年、様々なビジネス分野に共通するものとして次の各項があります。
 
環境への対応:SDGsにも含まれていますが、社会全体として脱カーボンの方向に向かい、経済の基幹作業である石油・石化産業、電力・ガス、自動車などの業態が変わり、それに伴って、その周辺で求められるモノ・コトが変わっていく。
 
「モノ」の相対的価値の低下:XaaSに代表されるように、「モノ」から「サービス・ソリューション」への付加価値が移行していき、「モノ」の市場飽和や技術面での限界によるコモディティ化と相まって、「モノ」の開発・生産に付随する競争力が相対的に低下する。
 
デジタル化:AI、IoT、AR/VRを始めとした技術の進展に伴い、モノに求められる機能が変化するシミュレーション技術や3Dプリンタなどの関連する技術の進展により、開発の作法、モノの作り方自体が変化し、それに追従していくことが求められる。
 
国の施策「コネクテッドインダストリーズ」「Society5.0」に見られるように、社会全体としてスマート化が進展し、モノにはネットに接続して協調して動くための機能が求められる。
 
法令・規制への対応:ISO規格、RoHS・REACH・WEEEなどの環境、安全、防爆など様々な規格が複雑化、各国化している一方で、コンプライアンスに対する世間の意識が高まったことから、法令・規制をグローバルな視点で順守していくための負担がとても重くなっている。
 
 これらビジネスの「質」の変化への対応の市場要求が、人財不足・グローバルビジネスでの競争力の問題と相まって、企業側の生産性向上を進める動機となり、多方面で活動が始まっているのが今の状態と考えられます。
 
 但し、前稿で書いたように、その改善のスピードはまだ十分とは言えず、2018年版のものづくり白書でも、「これらの非連続な変革が必要あることを企業側が認識できていないおそれ」があることが指摘されています。これからの企業活動では、いかにこの改善のスピードを上げていくかが重要課題と考えられます。
 

4.ものづくりに求められる姿

 
 上述のビジネスの「質」の変化は、いずれも、従来のビジネスの延長ではなく、ものづくりにおける「作るモノ」と「モノの作り方」の両方についての変革を求めており、その求められる姿は次のようにまとめて言うことができます。
 
今までと同じモノを、今までと同じように開発・製造していても、市場...
 
  技術マネジメント
 

【開発生産性向上 連載目次】

 前回の「開発生産性向上(その1)」では、日本においては生産性の向上が国と企業にとっての喫緊の課題であることを解説しました。一方では、ビジネスにはその「質」の面の変化をも求められていて、これが我々の取り組みを更に複雑にしています。今回はこの点について解説します。
 

3.ビジネスの「質」の変化

 
 企業は、常にそのビジネスの特質に応じた様々な変化を求められていますが、近年、様々なビジネス分野に共通するものとして次の各項があります。
 
環境への対応:SDGsにも含まれていますが、社会全体として脱カーボンの方向に向かい、経済の基幹作業である石油・石化産業、電力・ガス、自動車などの業態が変わり、それに伴って、その周辺で求められるモノ・コトが変わっていく。
 
「モノ」の相対的価値の低下:XaaSに代表されるように、「モノ」から「サービス・ソリューション」への付加価値が移行していき、「モノ」の市場飽和や技術面での限界によるコモディティ化と相まって、「モノ」の開発・生産に付随する競争力が相対的に低下する。
 
デジタル化:AI、IoT、AR/VRを始めとした技術の進展に伴い、モノに求められる機能が変化するシミュレーション技術や3Dプリンタなどの関連する技術の進展により、開発の作法、モノの作り方自体が変化し、それに追従していくことが求められる。
 
国の施策「コネクテッドインダストリーズ」「Society5.0」に見られるように、社会全体としてスマート化が進展し、モノにはネットに接続して協調して動くための機能が求められる。
 
法令・規制への対応:ISO規格、RoHS・REACH・WEEEなどの環境、安全、防爆など様々な規格が複雑化、各国化している一方で、コンプライアンスに対する世間の意識が高まったことから、法令・規制をグローバルな視点で順守していくための負担がとても重くなっている。
 
 これらビジネスの「質」の変化への対応の市場要求が、人財不足・グローバルビジネスでの競争力の問題と相まって、企業側の生産性向上を進める動機となり、多方面で活動が始まっているのが今の状態と考えられます。
 
 但し、前稿で書いたように、その改善のスピードはまだ十分とは言えず、2018年版のものづくり白書でも、「これらの非連続な変革が必要あることを企業側が認識できていないおそれ」があることが指摘されています。これからの企業活動では、いかにこの改善のスピードを上げていくかが重要課題と考えられます。
 

4.ものづくりに求められる姿

 
 上述のビジネスの「質」の変化は、いずれも、従来のビジネスの延長ではなく、ものづくりにおける「作るモノ」と「モノの作り方」の両方についての変革を求めており、その求められる姿は次のようにまとめて言うことができます。
 
今までと同じモノを、今までと同じように開発・製造していても、市場価値は低下していく傾向にある。モノの新たな付加価値の創出(従来にないモノ、新たな価値の追加)が求められる。モノをつくる・開発することが特別なことではなくなり、企画部署が作りたいモノを思い描いたら、スッとモノができるというスピード感が求められる。
 
 言い換えると、「開発における生産性向上は、様々な技術の進歩を活用して開発効率を向上させ、市場の変化に対応した形で新たな付加価値を創出することで、投入リソースに対するアウトプットとしての創出価値の向上を図ること」であることが分かります。
 

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この記事の著者

山本 裕之

個々の課題に最適な改善プロセスを適用することで、企画・開発業務の生産性を効果的に向上させるお手伝いをしています。

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