最終回 少子高齢社会での組織的な伝承の進め方(その4)

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事業継承

4. 少子高齢社会での組織的な伝承の進め方

(1)通常業務のなかで伝えていく

 組織的な伝承を行うにあたって、通常業務のなかで伝えていくことが重要です。通常行われている伝承は、下図の縦軸のように、特定の人物に対する「人材育成」、または「ノウハウ蓄積」を通じて、幅広い人物に伝えるのが一般的です。しかし、この方法だと伝承の効果が見えないばかりか、達成までに非常に長い期間が必要となります。そのようなことから私は、人材育成、ノウハウ蓄積として対応する方法では、少子高齢社会では対応できないと考えています。

事業継承

(2)中堅社員を活用する

 少子高齢社会に対応した伝え方とは、上図の横軸のように「事業継続」や「生産性向上」の一環として取り組むことです。少子高齢社会でも継続的に生産性を向上し、付加価値を向上していく必要があるため、通常業務のなかで一般的に行われている作業改善を通じて伝えていくのです。生産性向上の一環として本来の通常業務のなかで、意識せずに暗黙知の可視化を行い、伝えていくのです。さらにそれらの取り組みの結果は事業への貢献度も明らかであるため、投資しやすくなります。このようなあるべき姿に向けて、企業の経営者が中心となり、通常業務のなかで情報を共有する仕組みを作り、中堅社員を中心として組織的に知識やノウハウを伝えていく必要があるのです。今後も潤沢な労働環境が望めないなか、事業を継続しつつ少ない人員で生産性を維持・向上していくためには、熟練者から若手への橋渡しができる中堅社員を中心とした組織的な伝承が重要となってきます。

(3)教え合う環境をつくる

 通常業務のなかで伝えていくもう一つの方法は、職場内で教え合う環境をつくることです。伝承の実態アンケートによると、伝承がうまくいっているケースの大部分では、職場内で自然と先輩と後輩・同僚間に教え合う環境が作られています。経営者の思いによるところが大きいが、職場内で教え合う環境を意図的につくっておけば、暗黙知の可視化や形式知化を行う必要がなくなり、「伝える」ということをわざわざ意識して行動しなくてもよいのです。これには経営者や管理職による日々の意識的な実践の積み重ねが非常に重要となります。

 また、教え合う環境づくりの別の方法として、AAR(AfterActionReview、振り返り会)があります。多くの企業で活用されており、事故やトラブルなどが発生した際に、関係者全員が集まり、「なぜそのようなことになったのか」「本来どうあるべきだったのか」といった観点で気付きを抽出・共有し、「今後どうすべきか」という改善案を全員合意の上で検討していくものです。反省会ではないので犯人捜しや個人攻撃を行わず、全員で情報を共有していくことを主眼に置いて行いましょう。管理職や中堅社員などが中心となり、日々の気付きを共有知として整理しておくので成果が大きく、是非実践してみて下さい。

5. 企業DNAの継承

 日本には昔から伝統を大切にする文化が引き継がれています。世界に類を見ない千年以上の歴史がある長寿企業が多いのも、そのような伝統を大切にする精神の表れです。つまり日本人には、先代や先々代が苦労して作り上げた経験や知識を大切に守り、後世へより良くして伝える...

 

事業継承

4. 少子高齢社会での組織的な伝承の進め方

(1)通常業務のなかで伝えていく

 組織的な伝承を行うにあたって、通常業務のなかで伝えていくことが重要です。通常行われている伝承は、下図の縦軸のように、特定の人物に対する「人材育成」、または「ノウハウ蓄積」を通じて、幅広い人物に伝えるのが一般的です。しかし、この方法だと伝承の効果が見えないばかりか、達成までに非常に長い期間が必要となります。そのようなことから私は、人材育成、ノウハウ蓄積として対応する方法では、少子高齢社会では対応できないと考えています。

事業継承

(2)中堅社員を活用する

 少子高齢社会に対応した伝え方とは、上図の横軸のように「事業継続」や「生産性向上」の一環として取り組むことです。少子高齢社会でも継続的に生産性を向上し、付加価値を向上していく必要があるため、通常業務のなかで一般的に行われている作業改善を通じて伝えていくのです。生産性向上の一環として本来の通常業務のなかで、意識せずに暗黙知の可視化を行い、伝えていくのです。さらにそれらの取り組みの結果は事業への貢献度も明らかであるため、投資しやすくなります。このようなあるべき姿に向けて、企業の経営者が中心となり、通常業務のなかで情報を共有する仕組みを作り、中堅社員を中心として組織的に知識やノウハウを伝えていく必要があるのです。今後も潤沢な労働環境が望めないなか、事業を継続しつつ少ない人員で生産性を維持・向上していくためには、熟練者から若手への橋渡しができる中堅社員を中心とした組織的な伝承が重要となってきます。

(3)教え合う環境をつくる

 通常業務のなかで伝えていくもう一つの方法は、職場内で教え合う環境をつくることです。伝承の実態アンケートによると、伝承がうまくいっているケースの大部分では、職場内で自然と先輩と後輩・同僚間に教え合う環境が作られています。経営者の思いによるところが大きいが、職場内で教え合う環境を意図的につくっておけば、暗黙知の可視化や形式知化を行う必要がなくなり、「伝える」ということをわざわざ意識して行動しなくてもよいのです。これには経営者や管理職による日々の意識的な実践の積み重ねが非常に重要となります。

 また、教え合う環境づくりの別の方法として、AAR(AfterActionReview、振り返り会)があります。多くの企業で活用されており、事故やトラブルなどが発生した際に、関係者全員が集まり、「なぜそのようなことになったのか」「本来どうあるべきだったのか」といった観点で気付きを抽出・共有し、「今後どうすべきか」という改善案を全員合意の上で検討していくものです。反省会ではないので犯人捜しや個人攻撃を行わず、全員で情報を共有していくことを主眼に置いて行いましょう。管理職や中堅社員などが中心となり、日々の気付きを共有知として整理しておくので成果が大きく、是非実践してみて下さい。

5. 企業DNAの継承

 日本には昔から伝統を大切にする文化が引き継がれています。世界に類を見ない千年以上の歴史がある長寿企業が多いのも、そのような伝統を大切にする精神の表れです。つまり日本人には、先代や先々代が苦労して作り上げた経験や知識を大切に守り、後世へより良くして伝えるという文化が根付いているのです。先代などが決めた品質やサービスなどのルールに対して、当たり前のこととして、こだわって実践していくことが日本企業の強みになっています。

 このような企業DNAを伝えるポイントは、コアの経験や知識を見極めることであり、そのことが日本企業のポテンシャルを高めるカギとなります。その上で「何を伝えていくのか」「如何に伝えるか」だけではなく、「新しく何をつくり出していくか」ということを念頭において、企業DNAの継承に取り組めば、日本企業、ひいては日本全体のポテンシャルはますます高まっていくでしょう。企業活動に携わる全ての関係者に心がけて下さい。また、このような企業DNAを、次の世代へも伝えていってほしいものです。

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この記事の著者

野中 帝二

労働人口が減少する中、生産性を維持・向上しつつ、収益性を向上するための支援を行います。特に自律的な改善活動の醸成や少子高齢化での経営など労働環境変化に対応した解決策をサポート致します。

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