クリーン化教育で長く現場を歩き、また社外での経験、体験が入り混じった私の人材育成に関する考えを今回はお話します。
1.知識教育と体験学習のセット
私たちが一般に言う教育とは、OFF-JT(集合教育)とOJT(仕事を通じた教育)を指します。効率よくしかも効果的な教育は、このOFF-JTとOJTを組み合わせると良いと私は考えています。
それは、自動車教習所にも例を見ることができます。学科(OFF-JT)があり、また教官が助手席に乗って指導を受けながらコースや路上を実際に車を走らせる実技(OJT)があります。つまり知識教育(OFF-JT)と体験学習(OJT)を組み合わせることで、早く一人立ちできる人を育てるという考え方です。
クリーン化も、その考えを元にテキストを使った教育の後、現場に入ってゴミの見方や発塵個所を指導して来ました。「座学教育で言ったことは、こういうことなんだよ」と示すことで体験学習が伴い、理解吸収しやすいとの感想をもらいました。摺動部はこんなに発塵しやすいと言うふうに、実際の現場を見せるわけです。視覚に訴える、活きた教育と言うことです。
これには、同時に私の後継者の育成やそのすそ野を広げる狙いもありました。
2.机上の教育は法律と同じ
集合教育を受けても、それで行動しようとする時具体的にはどうやったらよいのか、何をしたら良いのかと言う問題がしばしば起こります。実技が伴うとイメージができるので行動しやすい、これは法律と同じです。 法律は抽象的な表現であり、読んだだけではどうすればよいか分かりません。また解釈がまちまちになります。それを防止し分かりやすく解説したものが施行規則です。法律には必ずセットとなり、これで具体的に何をどうするのかが分かってきます。
直接指導は受けないにしても、OJTに近い体験学習のようなイメージしやすい状態になります。
3.家庭でのOJT
子供が自転車に乗れるようになるまでは、徹底的なOJT(体験学習)ですね。理論・理屈ではなく体で覚えると身に付き、また時間が経っても忘れません。 このように、体験・経験が伴うと、生きた教育になるのです。
4.昔からのOFF-JTもOJT
長州藩は松下村塾でも知られるように、今でいう集合教育(OFF-JT)が行われていました。しかしこの先生(吉田松陰)が“囚われの身”になると指導者がいなくなってしまい、塾生が右往左往するという問題も有ったようです。
これに対し、薩摩藩は西郷隆盛のような有能なリーダーはいましたが、実際に藩の武士を育てたのは多くの先輩たちだったとのことです。ひとり一人の先輩が後輩をきちんと指導していくというOJTのしくみがしっかりしていて、これにより結束力の強い藩だったということです。OJTは、教える、指導する人の資質が問われるわけですが、薩摩藩ではきちんと指導するために、先輩も一生懸命勉強したのです。
これを私たちの会社や職場に当てはめて見るとどうでしょうか。OJTをする立場の人は、常に自己を磨き、資質を高める努力をし、その上でひとり一人をどう育てるかを考えることが、翻って職場、会社の総合力発揮に繋がることと考え、より効果的なOJTを追求してもらいたいものです。 自分がやったOJTのその先(将来的な効果、成果)を考えてもらいたいのです。
5.海軍大将 山本五十六(元帥、連合艦隊司令長官)
元海軍大将、山本五十六の言葉に「やって見せ、言って聞かせて、させて見せて、誉めてやらねば人は動かじ」というのがあります。OJTをする側に要求される資質ですね。この考え方は後に、旧労働省の「仕事の教え方」の元になったと言われています。これが薩摩藩ではできていたのでしょう。
先輩がちゃんとやって見せられる。今でも私たちが仕事を進める上での良いお手本であり、基本です。でもこれがきちんとできないのが実態ではないでしょうか。
6.私のクリーン化教育
私が社内(国内、海外拠点、外注様)で実施して来たクリーン化入門コースはOFF-JTですが、そのメリット、デメリットを考え、OFF‐JTの教育でありながら、できるだけOJTに近い、擬似体験ができそうな進め方を意識してきました。
例えば話し方の工夫や、サン...