サプライチェーンマネジメントの背景と効果実現に向けた考え方(その2)

投稿日

サプライチェーンマネジメント

 前回のその1に続いて解説します。

4.様々な業界におけるSCM

 SCMではサプライチェーンのボトルネックを管理することで効果の最大化を狙いますが、その仕組は業界によって異なります。

(1)組立型産業

 自動車や耐久消費財に代表される組立型産業では、その組立工程と原材料および部品の調達がカギとなります。トヨタ自動車のカンバン方式(JIT;Just In Time)は、途中の仕掛り在庫をゼロにするための究極の調達方法で、SCMの元祖といえます。生産現場でコスト削減はかなりのレベルに達しており、原材料の調達や流通を次のコスト削減の余地として取り組んでいます。

(2)装置型産業

 石油化学や製鉄業などの装置型産業では一連の製造プロセスの内で、どの設備の生産能力がボトルネックなのかを調べることが出発点となります。ネックに当たる設備をいかに効率よく稼動させるかが、全体のスループット(単位時間当たりの生産量)を左右します。

(3)一般消費財

 加工食品、飲料、衣料などの一般消費財メーカーは、需要変動に敏感に対応するため、いかに効率的に商品を店頭に集められるかが主眼となります。組立メーカーであっても、家電やパソコンの場合はほとんどが需要変動対応型として取り組む必要があります。元々流通の一部である小売や卸にとってはSCMそのものが本業の一部といえます。これまでSCMが製造業者を中心に語...

サプライチェーンマネジメント

 前回のその1に続いて解説します。

4.様々な業界におけるSCM

 SCMではサプライチェーンのボトルネックを管理することで効果の最大化を狙いますが、その仕組は業界によって異なります。

(1)組立型産業

 自動車や耐久消費財に代表される組立型産業では、その組立工程と原材料および部品の調達がカギとなります。トヨタ自動車のカンバン方式(JIT;Just In Time)は、途中の仕掛り在庫をゼロにするための究極の調達方法で、SCMの元祖といえます。生産現場でコスト削減はかなりのレベルに達しており、原材料の調達や流通を次のコスト削減の余地として取り組んでいます。

(2)装置型産業

 石油化学や製鉄業などの装置型産業では一連の製造プロセスの内で、どの設備の生産能力がボトルネックなのかを調べることが出発点となります。ネックに当たる設備をいかに効率よく稼動させるかが、全体のスループット(単位時間当たりの生産量)を左右します。

(3)一般消費財

 加工食品、飲料、衣料などの一般消費財メーカーは、需要変動に敏感に対応するため、いかに効率的に商品を店頭に集められるかが主眼となります。組立メーカーであっても、家電やパソコンの場合はほとんどが需要変動対応型として取り組む必要があります。元々流通の一部である小売や卸にとってはSCMそのものが本業の一部といえます。これまでSCMが製造業者を中心に語られてきたのに対し、ECR(Efficient Consumer Response;効率的な消費者対応)は加工食品や日曜雑貨メーカーと卸、小売業を中心に、またQR(Quick Response)は衣料繊維メーカーと卸、小売業を対象としています。ECRやQRの動きは、まさに流通にポイントを置いたSCMといえます。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

林 隆男

「ものづくり・人づくり・仕組みづくり」を指導理念として、これまでに100社以上の中小製造業を指導して来ました。業界特性を熟知して経験豊富なコンサルタントが指導に当たります。

「ものづくり・人づくり・仕組みづくり」を指導理念として、これまでに100社以上の中小製造業を指導して来ました。業界特性を熟知して経験豊富なコンサルタントが...


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
最先端のSCMテーマ、S&OP SCM最前線 (その6)

 前回のその5に続いて解説します。   3. S&OPで実現される業務    現在行われているS&OPではどの...

 前回のその5に続いて解説します。   3. S&OPで実現される業務    現在行われているS&OPではどの...


サプライチェーンの構造的・長期的な課題、サプライチェーン戦略とは

   サプライチェーンマネジメントに対して、サプライチェーン戦略はより長期的・構造的なサプライチェーンの改善課題を扱います。従来から行なわれて...

   サプライチェーンマネジメントに対して、サプライチェーン戦略はより長期的・構造的なサプライチェーンの改善課題を扱います。従来から行なわれて...


SCM(サプライチェーンマネジメント)とは

 サプライチェーンマネジメント(SCM)のゴールは「メイクマネー」、すなわちキャッシュフロー(資金の流れ)を上げることです。企業を存続させるためには、企業...

 サプライチェーンマネジメント(SCM)のゴールは「メイクマネー」、すなわちキャッシュフロー(資金の流れ)を上げることです。企業を存続させるためには、企業...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
現場同士の話し合いのみで契約内容を変更 荷主と物流事業者の関係(その3)

        荷主と物流事業者の間で、特に現場同士の話し合いのみで契約内容を変更してしまう傾向があるようです。しかしそう簡単に契約内容を変更してし...

        荷主と物流事業者の間で、特に現場同士の話し合いのみで契約内容を変更してしまう傾向があるようです。しかしそう簡単に契約内容を変更してし...


見える化は目的を明確に 本当の見える化で効率向上(その6)

◆ 物流安全も見える化で管理を  見える化の真の目的は、今の物流現場の管理状態がどうなっているのかが一瞬で判断できることにあります。単なる掲示物のオ...

◆ 物流安全も見える化で管理を  見える化の真の目的は、今の物流現場の管理状態がどうなっているのかが一瞬で判断できることにあります。単なる掲示物のオ...


物流委託先とのパートナーシップとは

1. 管理技術の伝授  皆さんの会社では、多くの物流業務を物流委託先に外注(アウトソース)しているのではないでしょうか。物流アウトソーシングを行って...

1. 管理技術の伝授  皆さんの会社では、多くの物流業務を物流委託先に外注(アウトソース)しているのではないでしょうか。物流アウトソーシングを行って...