◆水素エネルギー社会 連載目次
- 1. 燃料電池自動車開発
- 2. 船舶の次世代エネルギー源
- 3. 燃料電池自動車開発競争
- 4. 東レ ~ FCV用CF増産、航空機からシフト
- 5. 炭素繊維の地域ごとにおける消費用途の差
- 6. 水素協議会
- 7. JR東日本、水素燃料車両の開発・試験
- 8. ドイツの燃料電池鉄道車両とは
- 9. 低炭素社会とは
- 10. 水素の安全性 1
- 11. 水素の安全性 2
- 12. 水素社会への潮流
♦ ALSTOM社が開発製造、支援はドイツ政府
燃料電池で駆動する世界初の鉄道車両:Coradia iLintが2018年9月からドイツで実用運転されてます。ドイツ北部のディーゼル区間(100km)での運用です。最高時速140km、走行可能距離1000kmで実用的です。仮に5往復、実運用時間として15時間程でしょうから、ちょうど丸一日水素補給無しで運用できます。
写真:ドイツで実用運転中の燃料電池鉄道車両 Coradia iLint(出典:ALSTOM PressKit)
開発製造したのはフランスの鉄道車両メーカー・ALSTOMです。同社のウェブサイトに詳しい説明があります。水素エネルギー社会(その5)でご紹介した水素協議会にALSTOM社が参画しているのもこのような背景があるのですね。
ドイツ政府の燃料電池技術の国家革新開発予算、ドイツ経済交通省の支援に基づいた、同社のドイツ・フランスチームによる連携開発です。
ドイツでは非電化のディーゼル区間も多く、脱炭素のためには何らかの対応が必須ということで、ドイツ政府挙げての対応になってます。興味深い構図は、ドイツ政府の意向と予算で、ALSTOM社が開発製造したという点です。
ここからは二つの背景が読み取れます。まずは、EUが機能しているということ、すなわち国単位ではなく、EU域内としての活動が一般化しているという点です。もう一点は、フランスでは燃料電池開発が主導的に進んでいないのかもしれないという点です。この点は、国家的なエネルギー政策も関連していそうです。
ドイツ政府依頼の開発が、やはり国内鉄道車両開発老舗のシーメンスではなかった点も、興味がある点です。シーメンスはハードの会社から、産業IT等のDX分野へ大きく企業形態を変えつつあることも背景にあるのでしょうか。後述するように、ALSTOM社のその後の状況から、元々の同社の企業戦略に相乗りしたのが実態かもしれません。
写真:ALSTOM社の燃料電池車両(出典:ALSTOM PressKit)
ALSTOM社の燃料電池車両はイギリス、オランダでの導入や試験がアナウンスされてましたが、2020年9月11日から、オ...