ものづくり企業ではデータ分析の重要度が従来以上に増してきています。IoT(Internet of Things)によって製造現場の活動がデータとして記録できますが、これにより、従来では捉えきれなかった将来予測や知見を得られたりする場面が増えてきています。では製造現場においてどのようにデータ分析を活用すればその価値を活用できるでしょうか。
その鍵を握るのは、スマートファクトリーであり、サイバーフィジカルシステム(CPS)です。すなわち現実空間の情報をデジタル処理して現実に反映させるシステムです。今回は、このような背景を踏まえて、サイバーフィジカルシステム(CPS)の概要を解説します。
1.サイバーフィジカルシステム(CPS)とは
CPSとは、現実空間の情報をデジタル処理して現実に反映させるシステムのことです。
スマートファクトリーとCPS、どちらも製造現場の業務効率化に欠かせませんが、CPSは、製造現場におけるデータ分析処理により、現場・現実にフィードバックするシステムです。
CPSのメリットは、現実では低確率に起こりうる事象や、多条件におけるバラツキ要因なども、デジタルデータで再現させることでその影響範囲を割り出し、その対策の検討を考察し、その内容を現実世界に反映させよりリスクの少ない環境を整えることに役立てられます。デジタル内で再現させることで、現実ではコストと安心の心配をしながら実証試験しなければならない内容でも、様々なパターン検証を実施することでより精度を上げることが可能です。
2.経産省のCPS戦略とは
インフラ環境の進歩によって実装可能となったCPSですが、経産省が対象とするCPS戦略の分野は多岐に渡ります。製造現場のCPSを考えた場合、まず工程を映像データ化し、AIが解析し、AIの出力をもとに生産を行う仕組みとなるのです。
経産省のCPS戦略とは、全分野に関わる現実世界の事象をデータとして捉え、AIが解析したことで生まれた価値・情報を提示するものです。さらに、結果の実践によって得られた情報を再びデータとして蓄積する。このサイクルを生み出す取り組みです。
3.世界のCPS
データ駆動型社会を目指す日本ですが、各国もすでに次のようにCPS利用に向けて取り組みを開始しています。
- 【アメリカ】アメリカの戦略は、GEが提唱したインダストリアル・インターネットで、産業機器データを解析し、その結果に応じて制御と意思決定を実現するためのツール:Predixです。日本企業を含めた医療・航空といった業界企業が参画しています。
- 【ドイツ】ドイツは、インダストリー4.0戦略を2011年に採択。全プロセス、IoTを利用し産学官が連携してシステム構築を目指しています。
- 【中国】中国版CPSはウーレンワンと称して、課題解決向け対応策を模索中です。都市ごとに対抗しながら進めています。
4.日本:産業モデルに変革が訪れる
データ駆動型社会が実現した場合、あらゆる分野においてデータ活用優先の産業モデル定着の変革が訪れます。モビリティでは、事故や渋滞発生が減少。流通では、在庫管理・需要予測にデータ活用することで、効率的なSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)が構築されるでしょう。その変化を予測すると次のようです。
- ユーザーごとのニーズと付加価値を踏まえたサービスの提供。
- 特定分野のデータを他に活用することで新規の価値を創出。
新規産業のビジネスモデル定着には企業対応だけでなく、あらゆる分野の垣根を越えた取り組みが必要となります。
5.日本のCPS戦略とは
CPSを利用したデータ駆動型社会が実現されると、今以上にイノベーティブかつ快適なビジネス環境が構築されます。CPSのメリットは、職人が経験と勘で行ってきたことをデータ化しフィードバックすることで事象を効率化できることです。CPSが注目される理由を具体的に示すと次の通りです。