失敗しない、ロボット導入の第一歩(その1)

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ロボット

 

【ロボット導入の第一歩 連載記事目次】

第1回 自社の作業工程に適したロボットの選び方

 

1.はじめに

労働人口の減少が深刻化する中、ロボットを導入したいが、「どのように導入すれば良いのか」「費用対効果はみられるのか」など、多くの企業が導入に踏み切れないでいます。そこで、この連載でロボット導入から人材育成までの情報を提供します。

 

2.人か専用機かロボットか

自社の作業工程に適したロボットを選ぶには、人と専用機とロボットが、どのような作業に適しているかを知る必要があります。危険作業や悪環境での作業などに専用機やロボットを使います。また専用機やロボットは、決められた作業を時間内で正確に繰り返す能力があるので、そういう仕事でも活躍します。従って、プレス、溶接、塗装の工程では専用機やロボットが多く、組立や検査などの複雑な判断がいる作業やカン・コツのいる仕事は人が中心に行っています(図1)。

 

ロボット

図1 人と専用機とロボットの関係
出典:経済産業省「ロボット導入促進ハンドブック」

 

3.ロボットに向く作業

ロボットは、耐久性や信頼性も高く、作業変更への対応も一定程度可能です。さらに、加工・溶接条件を含むティーチングデータを蓄積することができるので、他のロボットへの利用が可能な点も人より優れています。ロボットは、ある程度の変更には柔軟に対応し、繰返しや大量の作業にも対応できます。ロボットが得意とする領域を正確に見定めることで、大きな成果を期待できます。そのためには、ロボットが得意なことを見つけることが重要です。

 

4.ロボットに有効な作業の洗い出し

品種が毎回変わるような組立工程、柔軟物を含む高度な組立工程などは、ロボット化による費用対効果が十分に得られない場合があります。しかし、たとえ作業が複雑でも、ロボット技術をうまく導入すれば、自動化あるいは作業の簡易化(省力化・省スキル化)が実現できます。たとえば、作業内容が頻繁に変わる場合には、人の作業習熟が追いつかず、ロボット化のメリットが出てきます。このように、自社の事情に合わせて成果を上げるためには、十分な検討が必要です。

 

5.産業用ロボットの主な種類

自社の作業工程に適したロボットを選ぶには、ロボットの形式とそれぞれの得意・不得意をよく知ることが重要です。

 

(1)直交座標型ロボット

直交するスライド軸で構成され、シンプルな構造で設計がしやすいのが特徴です。直線でしか動かないため、誤動作が起こりにくく、ブレが少ない高精度な動作が可能である。さらに低出力で広範囲の動作ができます。低価格なため、大がかりなシステムを構築してもそれほど高価格になりません。デメリットは、複雑な動作ができないことですが、使い方によってメリットも多いロボットです。

 

ロボット

図2 直交座標型ロボット(蛇の目ミシン工業 JC-3)

 

(2)垂直多関節型ロボット

現在の製造現場で最も主流のロボットです。軸は人の関節の働きに近く、他のロボットよりも軸数が多いため、自由度の高い動作ができます。多軸を活かして幅広い作業に対応できます。また、柔軟に姿勢を変えられるため、複数のロボットでも相互干渉しません。小型軽量化も進んでおり、小さなものから大きなものまで、目的に応じたシステムを構築できます。汎用性が高い一方、緻密な制御が必要で、正確なティーチングを行わなければなりません。ただし、剛性が低いため高速動作が苦手で、高速動作をさせると、オーバーシュートや振動が生じます。

 

ロボット

図3 垂直多関節型ロボット(デンソー Robotics)

 

(3)水平多関節型ロボット

水平方向の動きに特化したロボットです。すべての関節が垂直に組まれているため、上下方向の剛性と水平方向の柔軟性を併せ持ちます。この特徴を活かした部品の押込み作業などが得意です。また、構造が簡単なため、高速で動作できます。細かな位置ズレも、センサを利用...

ロボット

 

【ロボット導入の第一歩 連載記事目次】

第1回 自社の作業工程に適したロボットの選び方

 

1.はじめに

労働人口の減少が深刻化する中、ロボットを導入したいが、「どのように導入すれば良いのか」「費用対効果はみられるのか」など、多くの企業が導入に踏み切れないでいます。そこで、この連載でロボット導入から人材育成までの情報を提供します。

 

2.人か専用機かロボットか

自社の作業工程に適したロボットを選ぶには、人と専用機とロボットが、どのような作業に適しているかを知る必要があります。危険作業や悪環境での作業などに専用機やロボットを使います。また専用機やロボットは、決められた作業を時間内で正確に繰り返す能力があるので、そういう仕事でも活躍します。従って、プレス、溶接、塗装の工程では専用機やロボットが多く、組立や検査などの複雑な判断がいる作業やカン・コツのいる仕事は人が中心に行っています(図1)。

 

ロボット

図1 人と専用機とロボットの関係
出典:経済産業省「ロボット導入促進ハンドブック」

 

3.ロボットに向く作業

ロボットは、耐久性や信頼性も高く、作業変更への対応も一定程度可能です。さらに、加工・溶接条件を含むティーチングデータを蓄積することができるので、他のロボットへの利用が可能な点も人より優れています。ロボットは、ある程度の変更には柔軟に対応し、繰返しや大量の作業にも対応できます。ロボットが得意とする領域を正確に見定めることで、大きな成果を期待できます。そのためには、ロボットが得意なことを見つけることが重要です。

 

4.ロボットに有効な作業の洗い出し

品種が毎回変わるような組立工程、柔軟物を含む高度な組立工程などは、ロボット化による費用対効果が十分に得られない場合があります。しかし、たとえ作業が複雑でも、ロボット技術をうまく導入すれば、自動化あるいは作業の簡易化(省力化・省スキル化)が実現できます。たとえば、作業内容が頻繁に変わる場合には、人の作業習熟が追いつかず、ロボット化のメリットが出てきます。このように、自社の事情に合わせて成果を上げるためには、十分な検討が必要です。

 

5.産業用ロボットの主な種類

自社の作業工程に適したロボットを選ぶには、ロボットの形式とそれぞれの得意・不得意をよく知ることが重要です。

 

(1)直交座標型ロボット

直交するスライド軸で構成され、シンプルな構造で設計がしやすいのが特徴です。直線でしか動かないため、誤動作が起こりにくく、ブレが少ない高精度な動作が可能である。さらに低出力で広範囲の動作ができます。低価格なため、大がかりなシステムを構築してもそれほど高価格になりません。デメリットは、複雑な動作ができないことですが、使い方によってメリットも多いロボットです。

 

ロボット

図2 直交座標型ロボット(蛇の目ミシン工業 JC-3)

 

(2)垂直多関節型ロボット

現在の製造現場で最も主流のロボットです。軸は人の関節の働きに近く、他のロボットよりも軸数が多いため、自由度の高い動作ができます。多軸を活かして幅広い作業に対応できます。また、柔軟に姿勢を変えられるため、複数のロボットでも相互干渉しません。小型軽量化も進んでおり、小さなものから大きなものまで、目的に応じたシステムを構築できます。汎用性が高い一方、緻密な制御が必要で、正確なティーチングを行わなければなりません。ただし、剛性が低いため高速動作が苦手で、高速動作をさせると、オーバーシュートや振動が生じます。

 

ロボット

図3 垂直多関節型ロボット(デンソー Robotics)

 

(3)水平多関節型ロボット

水平方向の動きに特化したロボットです。すべての関節が垂直に組まれているため、上下方向の剛性と水平方向の柔軟性を併せ持ちます。この特徴を活かした部品の押込み作業などが得意です。また、構造が簡単なため、高速で動作できます。細かな位置ズレも、センサを利用して柔軟な対応が可能なことから、ピック&プレースで積極的に活用されています。構造が簡単なため低価格ですが、動作の精度はパラレルリンクロボットに劣ります。

 

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図4 水平多関節型ロボット(三菱電機 MELFA)

 

(4)パラレルリンクロボット

複数の関節で最終出力先を制御しており、複数のモータ出力を1点に集中させているので、精度と出力が非常に高いのが特徴です。可動範囲は狭いものの、精度と速度の性能はトップクラスです。パラレルリンクロボットは、構造上、重量物を扱うのは難しく、軽量物のピック&プレース以外の作業には活用しにくいものの、適切な作業を行わせれば大きな成果を上げることができます。

 

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図5 パラレルリンクロボット(ロボテック PL3-80)

 

次回は、ロボットシステム構築の大まかな流れについてご説明します。

 

◆関連解説『電気・電子技術』

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この記事の著者

竹内 利一

自動化設備の生産性向上は、おまかせ下さい!  自動化設備のことならどんなことでも、あなたと一緒に考えます。

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