組織、集団、およそ人が集まる場所でマウント行為をする人がいます。「マウント」とは、人との関係で圧力を誇示し、自分の立場を優位に持ち込もうとする行動で、賞賛されるというより厄介な部類の行為として認識されています。マウント行為について紐解き、悩める側の対応について解説しています。今回は、ものづくり企業も要注意!マウント行為の考察(その1)に続いてマウント行為をしている可能性のある側について解説していきます。
【目次】
1. マウント行為と疑われるケース
2. 他者に圧力をかけてしまう心理
3. 自分と向き合うために
4. 自分を振り返ってみる時の参考に
1. マウント行為と疑われるケース
(1)相手の反応から自分の行為を判断してみる
マウント行為は、発言によるものが多く、その内容はステータスの誇示に終始します。行為の特徴は《 聞かれてもいないのに発言する 》です。人は尋ねてもいない強調された自慢話には、心を閉ざしがちになります。日本人特有の露骨な表現を苦手とする傾向があるためです。あからさまに制止することはなくても、目が泳いだり、腕組したり、距離を離したり、愛想笑いという態度や表情を用いて行為を回避しようとします。相手の非言語の情報を観察することで、自分の行為が行き過ぎたかどうかを知ることができます。
(2)マウント行為かどうか判断するには ①
マウント行為に当たるのかは次のどちらに該当するかが目安になります。
「話題として披露したこと」か「自分を高く評価して欲しいと望んでいるか」です。一過性の盛り上がりに対し、評価してほしい欲求が働く場合は、そこに目的が発生しており、目的がクリアされたと納得するまで繰り返す可能性があります。
(3)マウント行為かどうか判断するには②
対象がいるかいないかです。話題として自慢話をする場合、対象を明確にすることはあまり重要ではありません。自分の価値を高める意味があるマウント行為では、ターゲットとなる個人や、属する集団など対象が必要となります。
(4)マウント行為と自己顕示欲の違い
自己顕示欲もマウント行為も心理学的にある種【防衛本能】が働く点で似ていますが、自信を補填させる自己顕示欲に対し、マウント行為は自分の優位性を対象に認めさせたい点で、より能動的です。
2. 他者に圧力をかけてしまう心理
(1)主な指摘
マウント行為を説明する解説には、自身の中にある弱い部分が、優位を示すことで満たされるという解釈が目立ちます。「劣等感によるもの」「承認欲求を満たすため」「自己肯定感が低いから」「優越感を求める」「目立ちたいだけ」という記述まであります。
(2)自分を鼓舞するため
自分の中に弱い部分があるのは誰しも当たり前のこと。しかし、それが許されない立場や状況、期待を裏切れない場合だったらどうでしょうか。弱さを弱さとして開示できないとき、鎧を着て武装する必要があります。新入社員と呼ばれなくなった時点で、組織からかけられる期待が増えます。最初のスタートは同じなのに、差を感じるようになれば焦燥感が生まれて当たり前なのです。同僚に限らず部下にも先を越される下克上の現代では、組織を生き抜くため自分の存在を誇示する必要に迫られているともいえます。
(3)時代に追い込まれる
総転職時代。リカレントによってキャリアを発展させる時代。転属や、会社の合併吸収・経営転換などによって、同じ組織で同じ仕事をこなし職人のように成長できた以前の働き方が見直されている時代です。個人の力量だけで勝負するとき、同じ境遇の人間があふれていることに気づきます。自分の立場を明確にするため、周囲を威嚇し抜きんでようとする行動をとるのは、顕示欲だけでは十分といえないのです。
3. 自分と向き合うために
(1)マウント行為は意味がない
マウント行為にいたるやむを得ない背景があっても、マウント行為はいまや無意味で、自分を優位に見せる効果は期待できません。マウント行為は歓迎されない厄介な行為として認識されつつあり、研究によって対策の方法が多くの文献によって公開されているからです。対策が取られてしまえば、自分が優位に立つことも、相手の気持ちに先手を打つこともできません。
(2)繰り返すむなしさ
自分の誇示が成功し、相手の出鼻をくじいて先手必勝の効果を得られたと感じても、新たなステージは出現します。現代の背景によって対象が入れ替わる頻度が増せば、無限ループのように繰り返すむなしさを味わうことになります。
(3)柔を取り入れる
あらゆる場面でタフな精神を必要とするのは昔も今も変わりません。強さにもいろいろありますが、屈強さより柔軟さの方が変化の激しい現代に...