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1. 食用油脂の劣化
食用油脂は、光、熱、酸素の作用により過酸化脂質を生じます。脂肪酸に二重結合を有する不飽和脂肪酸と酸素の反応によって過酸化脂質を形成し、さらにその酸化分解により、二次生成物であるアルデヒド、ケトン、アルカン、アルケンなどが生成します。さらに反応が進むと重合体、エポキシド、低級脂肪酸となり劣化が進行してゆきます。(図1)
図1.油脂の酸化劣化フロー
ここで生成する過酸化脂質やアルデヒドなどのカルボニル化合物には、毒性を有するものがあることが知られており、微生物関連の食中毒より事例は少ないものの発生しています。
フライ油調理や炒め調理等において、適切な使用や管理を行っている範囲では特に問題になることはありません。しかし、あまり油脂の劣化についてさほど知識や関心がない場合などには、過度の油脂の調理使用や、好ましくない保管状態により、油脂が変敗し食品の風味劣化や、それらを摂取することで食中毒症状を発症する場合があります。
2. 過酸化脂質
マウスの経口投与試験において、過酸化物は生体内の酵素を不活性化し、血球の破壊、肝臓、腎臓、肺の肥大化、各組織の細胞変性、壊死等を引き起こしたことが報告されています。1)
過酸化脂質自体は、腸管からの吸収がされにくいため、腸管内壁を傷つけることで下痢や腹痛を引き起こします。劣化食用油脂(変敗油)の有毒成分は過酸化物よりも、吸収され易いヒドロペルオキシアルケナール(...