全体の流れ 効率的な実験手順を考える(その1)

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【効率的な実験手順を考える 連載目次】

1. 全体の流れ

2. 実験の目的と評価項目、方法、目標を設定する

3. 因子のリストアップと選定

4. 直交表実験の準備と実行

5. 直交表実験の解析と確認

 

 実験とは「仮説」をたてて、それを「試してみる」「評価する」「確認する」ことです。 一般的には後半の「確認」に労力を取られますが、「仮説」が間違っていると多大な労力を費やしたにもかかわらず良い結果は出ません。もっと仮説そのものや、解決のためのアイデアを考えるところに努力すべきです。ここが最も創造的=クリエーティブな作業であり、将来コンピュータやロボットが発達しても、ここは最後まで人間の仕事として残るでしょう。

 一方仮説の評価、検証は「省力化、効率化」が可能な分野です。「直交表/タグチメソッド」などの効果的なツールを使うことで、圧倒的に短い時間、少ない労力で同じ結果が得られます。私の経験で最も効果が顕著だったのは、2名が1年半かけて最適条件を探索していた開発テーマに対し、1名3週間の実験でそのアイデアに実用的な解がないことを立証したケースです。25倍の効率と言えます。そんなところに時間を無駄にせず、他のアイデアを考えなければなりません。

  目新しい話ではありませんが、効率的実験の典型的な手順は以下のようになります。

1.実験の目的と評価する項目、方法、目標を設定する
2.実験目的の内容、緊急度、許容されるサンプル数などに応じて直交表/タグチメソッドなどから実験形式/直交表の種類を選定する。
 3.目標を達成するための仮説を複数設定し、それらに関連する因子をできる限りたくさんリストアップする。
 4.前項の因子から制御因子について優先度を設定し、タグチメソッドを使う場合は誤差因子、信号因子も設定する。
 5.直交表に各因子を割り付け、水準を設定する。
 6.前項で設定した実験の組み合わせが実現可能であることを確認し、実験の準備をする。
 7.実験を実施する。
 8.実験で得られたデータを解析ツールに入力して解析する。
 9.解析された最適組み合わせでもう一つサンプルを作り、再現性を評価する。

効率的な実験の手順
図1.効率的な実験手順

 もし直交表を使わない場合は手順1→3の後に1因子あるいは2,3因子を組み合わせて実験し、表やグラフなどで評価するのが一般的でしょう。その場合の問題点は以下のようなものです。

(1)限定された条件のもとでの結果であるため、実験しなかった条件の組合せで生産されたり、ユーザーに使われた場合は期待した結果にならないケースが頻繁に起こる。
(2)ばらつきの影響が定量的に評価されず、誤った結論を導く危険性がある。

 後者に関...

 

【効率的な実験手順を考える 連載目次】

1. 全体の流れ

2. 実験の目的と評価項目、方法、目標を設定する

3. 因子のリストアップと選定

4. 直交表実験の準備と実行

5. 直交表実験の解析と確認

 

 実験とは「仮説」をたてて、それを「試してみる」「評価する」「確認する」ことです。 一般的には後半の「確認」に労力を取られますが、「仮説」が間違っていると多大な労力を費やしたにもかかわらず良い結果は出ません。もっと仮説そのものや、解決のためのアイデアを考えるところに努力すべきです。ここが最も創造的=クリエーティブな作業であり、将来コンピュータやロボットが発達しても、ここは最後まで人間の仕事として残るでしょう。

 一方仮説の評価、検証は「省力化、効率化」が可能な分野です。「直交表/タグチメソッド」などの効果的なツールを使うことで、圧倒的に短い時間、少ない労力で同じ結果が得られます。私の経験で最も効果が顕著だったのは、2名が1年半かけて最適条件を探索していた開発テーマに対し、1名3週間の実験でそのアイデアに実用的な解がないことを立証したケースです。25倍の効率と言えます。そんなところに時間を無駄にせず、他のアイデアを考えなければなりません。

  目新しい話ではありませんが、効率的実験の典型的な手順は以下のようになります。

1.実験の目的と評価する項目、方法、目標を設定する
2.実験目的の内容、緊急度、許容されるサンプル数などに応じて直交表/タグチメソッドなどから実験形式/直交表の種類を選定する。
 3.目標を達成するための仮説を複数設定し、それらに関連する因子をできる限りたくさんリストアップする。
 4.前項の因子から制御因子について優先度を設定し、タグチメソッドを使う場合は誤差因子、信号因子も設定する。
 5.直交表に各因子を割り付け、水準を設定する。
 6.前項で設定した実験の組み合わせが実現可能であることを確認し、実験の準備をする。
 7.実験を実施する。
 8.実験で得られたデータを解析ツールに入力して解析する。
 9.解析された最適組み合わせでもう一つサンプルを作り、再現性を評価する。

効率的な実験の手順
図1.効率的な実験手順

 もし直交表を使わない場合は手順1→3の後に1因子あるいは2,3因子を組み合わせて実験し、表やグラフなどで評価するのが一般的でしょう。その場合の問題点は以下のようなものです。

(1)限定された条件のもとでの結果であるため、実験しなかった条件の組合せで生産されたり、ユーザーに使われた場合は期待した結果にならないケースが頻繁に起こる。
(2)ばらつきの影響が定量的に評価されず、誤った結論を導く危険性がある。

 後者に関しては統計的な配置実験をして「分散分析」する事で誤差の評価は可能ですが、ばらつきを減らしてロバストな技術や製品をつくることはまた別の話です。

 次回からは、上記のステップについて、詳しく説明していく事とします。  

 

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この記事の著者

熊坂 治

ものづくり革新のナレッジを広く共有、活用する場を提供することで、製造業の課題を解決し、生産性を向上します。

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