シックスシグマは1980年代にアメリカで生まれた経営手法です。日本で当時、広く活用されていたTQC(現TQM)を手法開発のお手本としていたため、日本では製造現場における狭義の品質改善手法と誤解されることが多いのですが、本質的には経営改革のためのマネジメント手法であり「組織におけるあらゆるプロセスのバラツキを削減して不良を減らし、コスト低減と顧客満足度を上げることで、企業利益に貢献する全社活動」といえるでしょう。
本題に入る前に、この手法が開発された歴史的背景についてご紹介します。
みなさんもご存知の通り、日本の製造業は1970年代から80年代にかけて目覚ましい発展を遂げ「安かろう悪かろう」から「安くて高品質」というジャパンブランドを確立し、アメリカ企業のシェアを奪っていきました。
その結果、モトローラ社も長い歴史を誇るQuasarというブランドのテレビ事業の売却を余儀なくされ、当時の松下に事業を売却したところ、居抜きで買い取った工場をほとんど追加投資せずに、ほぼ1年で黒字に転換したそうです(昨今、日本のテレビ事業が縮小・撤退を行っていることを考えると、盛者必衰の理、ということになるのでしょうか)。
これにショックを受けたモトローラ社は、生き残りを懸けて日本の製造業の強みであるTQCを徹底的に研究し、更にその上を行く手法を開発しようと作り上げられたのがシックスシグマです。
しかし、シックスシグマを現在のマネジメント手法に精錬させたのは、GE(ジェネラルエレクトリック社)の当時のCEO、ジャック・ウェルチ氏です。
1995年にシックスシグマ導入を決めたウェルチ氏は、この手法を単なる製造部門の品質改善ではなく企業内のあらゆる業務に適用するマネジメント戦略として活用、巨額なセービングを実現し大きな成果を挙げました。
これに倣うように多くの製造業、続いて金融サービス業界へと導入が広がり、現在ではヘルスケア業界の多くの企業が取り入れています。
1. 進化を続けるシックスシグマ
シックスシグマにおける改善活動では、DMAIC(D:定義、M:測定、A:分析、I:改善、C:管理詳細は後述)という5つのフェーズからなる問題解決手法を核としていました。しかし1990年代後半から、トヨタ生産方式を体系化したリーン(Lean:「贅肉のない=ムダ取り」という意味の英語)手法との融合を図り、更に多様な問題に対応できる手法に変化しました。
また、DMAICは基本的には既存プロセスの改善に適した手法ですので、開発・設計など製品やサービス、プロセスをデザインするために有効なDFSS(デザインフォーシックスシグマ)、更に近年ではイノベーションなど、R&Dからサービスに至るまで企業のバリューチェーン全体に適用できる手法を取り入れて進化を続けています。
2. ISO発行:国際規格化するシックスシグマ
シックスシグマは問題解決のグローバルスタンダードになりつつあります。2011年9月には、ISOがシックスシグマの国際規格として下記2本を発行しています。
- ISO 13053-1:2011
Quantitative methods in process improvement -- Six Sigma -- Part 1: DMAIC methodology(プロセス改善における計量法 -- シックス・シグマ -- パート1:DMAIC手法)...