輸送編 物流改善ネタ出し講座 (その10)

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【物流改善ネタ出し講座 連載目次】

1. なぜ物流は宝の山なのか

2. 宝の山の見つけ方

3. フォークリフトを考える

4. 荷姿の考察

5. 物流効率化の決め手、荷姿モジュール

6. 供給を考える

7. 回収作業について

8. 保管作業を考える

9. レイアウトの考察

10. 輸送は大きな宝の山

11. 物流業務の出来栄え評価

12. 物流のプロを育成しよう

1.輸送は大きな宝の山

 
 前回の第9回に続いて解説します。物流コストは財務会計では把握しづらいようです。なぜなら物流コストは売上原価や販売管理費の中に含まれていることが多く、表に出てこないからです。管理会計をきっちりと行っている会社でも十分に認識できていない物流コストは存在するのです。では製造業では大体どれくらいの物流コストが発生しているのでしょうか。図1のように、それを知る一つの手がかりとして日本ロジスティクスシステム協会が毎年公表している「売上高物流コスト比率」というデータがあります。2013年度データによると主要製造業71社のそれは6.18%と報告されています
 
          
図1.主要製造業の売上高物流コスト比率
 
 その内訳はどうなっているかというと、輸送が4.02%、保管が1.02%、その他が1.14%となっています。対象企業数が少ないことが難点ですが、参考値としてこのデータを使っても問題はないでしょう。データからも分かる通り、製造業の物流コストの約65%が輸送コストです。つまり工場のコスト改善を行う際に「輸送コスト」は見過ごせない存在となっているのです。年間売上高が100億円の会社であれば4億円の年間輸送コストが発生している計算になります。仮にこの5%を改善したとすれば2千万円のコスト削減になる。製造工程で0.01分を削減する改善ネタをコツコツと積み上げている昨今にあっては信じられないほど大きなアイテムと言えるのではないでしょうか。それ故に特に輸送は大きな宝の山だと認識すべきです。
 

2.輸送モード変更でコストダウン

 
 輸送というと一般的にトラックをイメージしがちです。しかし輸送モード(輸送手段)には鉄道や船舶、航空機などもあります。このモードを組み合わせて適切に輸送を行うことが望まれます。モード選択の主要基準はリードタイムとコストでしょう。輸送距離が長くリードタイムが許せば鉄道や船舶を積極的に活用しましょう。特にトラックドライバー不足の昨今ではこの二つのモードの活用は意義深いものがあります。交渉次第で現在のトラック輸送よりもコストが下がることも十分考えられます。
 

3.トラックの大型化と混載輸送でコストダウン

 
 トラックのサイズアップは輸送コスト削減のための必須アイテムです。4トン車を10トン車へ、10トン車を19トン車へと変更することによって一回で輸送できるボリュームが増えます。今まで部署別に配車していたものを混載することとトラックの大型化を併せて実施することで輸送コスト削減のオポチュニティは広がります。まず工場のどの部署がどこ向けにどのような輸送を行っているのかを調べてみましょう。意外とムダな輸送を行っているのではないでしょうか。工場内でトラック配車を一元管理する担当者を決め、その担当がすべての荷を把握の上配車を行うようにします。このような改善を実施することで大きなコストダウンの金鉱を掘り当てることになるかもしれません。
 
 輸送効率化の決め手は「荷量を集めて混載すること」です。その手段として他社との混載や重量物と容積物との混載、調達品の引き取り化などがあります。これらは少々ハードルが高いかもしれないですがぜひチャレンジしていただきたいアイテムです。図2のように、この中でも比較的取り組みやすいアイテムが「重量物」と「容積物」の混載です。
 
               
 図2.重量物&容積物混載
 
 重量物とは比重が大きいため、容積の割に重い荷物を指す。鉄の塊のような製品がそれに該当します。容積物とは重量の割に嵩が張る荷物を指します。ポテトチップスのような製品がそれに該当します。例えば重量物だけを運ぶ場合には荷台に大きなスペースが空くことになるので、そこに容積物を積むことでトラックの持つ能力を目いっぱい活用することができます。
 

4.製品設計改善でコストダウン

 
 輸送に適した製品とは何でしょうか。それは輸送した時に積載率を低下させない製品のことです。四角い箱にものを入れることを考えてみましょう。入れた時にまわりにたくさんのスペースができてしまうような製品は輸送する時にスペースロスを発生することになります。そのような製品を設計すると常にロス...
 

【物流改善ネタ出し講座 連載目次】

1. なぜ物流は宝の山なのか

2. 宝の山の見つけ方

3. フォークリフトを考える

4. 荷姿の考察

5. 物流効率化の決め手、荷姿モジュール

6. 供給を考える

7. 回収作業について

8. 保管作業を考える

9. レイアウトの考察

10. 輸送は大きな宝の山

11. 物流業務の出来栄え評価

12. 物流のプロを育成しよう

1.輸送は大きな宝の山

 
 前回の第9回に続いて解説します。物流コストは財務会計では把握しづらいようです。なぜなら物流コストは売上原価や販売管理費の中に含まれていることが多く、表に出てこないからです。管理会計をきっちりと行っている会社でも十分に認識できていない物流コストは存在するのです。では製造業では大体どれくらいの物流コストが発生しているのでしょうか。図1のように、それを知る一つの手がかりとして日本ロジスティクスシステム協会が毎年公表している「売上高物流コスト比率」というデータがあります。2013年度データによると主要製造業71社のそれは6.18%と報告されています
 
          
図1.主要製造業の売上高物流コスト比率
 
 その内訳はどうなっているかというと、輸送が4.02%、保管が1.02%、その他が1.14%となっています。対象企業数が少ないことが難点ですが、参考値としてこのデータを使っても問題はないでしょう。データからも分かる通り、製造業の物流コストの約65%が輸送コストです。つまり工場のコスト改善を行う際に「輸送コスト」は見過ごせない存在となっているのです。年間売上高が100億円の会社であれば4億円の年間輸送コストが発生している計算になります。仮にこの5%を改善したとすれば2千万円のコスト削減になる。製造工程で0.01分を削減する改善ネタをコツコツと積み上げている昨今にあっては信じられないほど大きなアイテムと言えるのではないでしょうか。それ故に特に輸送は大きな宝の山だと認識すべきです。
 

2.輸送モード変更でコストダウン

 
 輸送というと一般的にトラックをイメージしがちです。しかし輸送モード(輸送手段)には鉄道や船舶、航空機などもあります。このモードを組み合わせて適切に輸送を行うことが望まれます。モード選択の主要基準はリードタイムとコストでしょう。輸送距離が長くリードタイムが許せば鉄道や船舶を積極的に活用しましょう。特にトラックドライバー不足の昨今ではこの二つのモードの活用は意義深いものがあります。交渉次第で現在のトラック輸送よりもコストが下がることも十分考えられます。
 

3.トラックの大型化と混載輸送でコストダウン

 
 トラックのサイズアップは輸送コスト削減のための必須アイテムです。4トン車を10トン車へ、10トン車を19トン車へと変更することによって一回で輸送できるボリュームが増えます。今まで部署別に配車していたものを混載することとトラックの大型化を併せて実施することで輸送コスト削減のオポチュニティは広がります。まず工場のどの部署がどこ向けにどのような輸送を行っているのかを調べてみましょう。意外とムダな輸送を行っているのではないでしょうか。工場内でトラック配車を一元管理する担当者を決め、その担当がすべての荷を把握の上配車を行うようにします。このような改善を実施することで大きなコストダウンの金鉱を掘り当てることになるかもしれません。
 
 輸送効率化の決め手は「荷量を集めて混載すること」です。その手段として他社との混載や重量物と容積物との混載、調達品の引き取り化などがあります。これらは少々ハードルが高いかもしれないですがぜひチャレンジしていただきたいアイテムです。図2のように、この中でも比較的取り組みやすいアイテムが「重量物」と「容積物」の混載です。
 
               
 図2.重量物&容積物混載
 
 重量物とは比重が大きいため、容積の割に重い荷物を指す。鉄の塊のような製品がそれに該当します。容積物とは重量の割に嵩が張る荷物を指します。ポテトチップスのような製品がそれに該当します。例えば重量物だけを運ぶ場合には荷台に大きなスペースが空くことになるので、そこに容積物を積むことでトラックの持つ能力を目いっぱい活用することができます。
 

4.製品設計改善でコストダウン

 
 輸送に適した製品とは何でしょうか。それは輸送した時に積載率を低下させない製品のことです。四角い箱にものを入れることを考えてみましょう。入れた時にまわりにたくさんのスペースができてしまうような製品は輸送する時にスペースロスを発生することになります。そのような製品を設計すると常にロス分の輸送コストを発生し続けることになります。先ほどのポテトチップスの事例のように、同じ形にして筒状の容器にびっしりと詰まった製品と、ランダムな形のため風船のような袋に入った製品があることに気づくでしょう。輸送を考慮すると前者の方が望ましい設計であると言えます。先端企業では輸送を考慮した製品設計を実施し、物流コスト削減に寄与しています。皆様の会社でもこのような活動を行うことでライバル企業に物流コストで勝てる可能性があります。今後も続くと考えられる輸送力不足に備え、「運ぶ荷を縮める活動」を仕掛けることも必要でしょう。
 
 この文書は、『日刊工業新聞社発行 月刊「工場管理」掲載』の記事を筆者により改変したものです。
 
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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