物流マンと物流関連知識

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サプライチェーンマネジメント

 

1. 物流関連知識

◆ 最低限知っておくべき物流関連知識

物流マンにとって、勉強が必要なことはいつも申し上げていることです。特に新規顧客の開拓を考えている物流事業者社員にとって勉強は業務同様、時間をかけるべき重要事項です。勉強といってもその範囲は広く、経営や人財マネジメント、財務知識や物流関連知識などさまざまです。今回はこの中から物流関連知識についてお話をしていきたいと思います。

 

実はこの物流関連知識の「関連」という言葉に意味があるのです。これを広くとらえると、また範囲が広がりすぎますので、最低限知っておくべき知識について考えていきましょう。まず大前提ですが、運送業に携わる方は運送に関わる必要知識を、倉庫業に携わる方は倉庫業に関する必要知識を身に付けておく必要があります。

 

例えば、運送に関わる知識の一つとして「運輸安全マネジメント」が挙げられます。このマネジメントを展開していくために、社内の人たちが何をやらなければならないのかを知っておくことは当然です。倉庫であれば「庫内安全」のための知識が必要です。労働安全衛生法ではどのような制約があるのか、フォークリフトのような特定機械を使う場合の法令上の条件とは何かなど、どうしても知っておかなければならない知識を身に付けておく必要があるのです。

 

こういった業界特有の知識というものはその仕事を実施するための必要最低限の知識で、それを身に付けていなければ仕事に取り組んではならないといった類(たぐい)のものでしょう。物流関連知識とは、それ以外の物流事業者が仕事を行う上で必要となる知識のことを指します。

 

私たちが取り組む領域はサプライチェーン全体です。物流という言葉をどう定義するかによっても変わってきますが、昨今ではこの「物流」でカバーしきれない領域が顧客から求められているのです。では一例を挙げて考えてみましょう。

 

顧客から「お客様にお届けするためのリードタイムを短縮したいが、どうしたらよいでしょうか?」こう質問されたら皆さんだったらどのように答えますでしょうか。ここでこのリードタイムとは、どういう意味を持っているのかについて考える必要がありますが、リードタイムを、お客様からの受注からお届けするまでの時間という意味と解釈することは最低限必要でしょう。さらにこれを実現するためにはもう少し範囲を拡大してみる必要があります。

 

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2. 物の調達

◆ 調達知識

自社は運送事業者のため「運送に関する知識」はあるけれど、倉庫内作業や在庫に関する知識は持っていないという会社は多いと思われます。

 

「それは『荷主の領域』だから我々には関係ない」と言い切ってしまう事業者もいます。もちろん「仕事は現状維持、取引先も現状維持で十分」という会社であれば、このような対応でも良いのかもしれません。ただ、世の中の動きや変化は激しさを増していますから、多分このような事業者は淘汰される傾向にあるのでしょう。

 

日本には約6万2000社の運送会社がありますが、これでは過当競争になり、場合によってはコンプライアンス違反を犯している会社が含まれている可能性があります。少なくともコンプライアンス違反を犯してまで事業を継続している会社には、市場から退場していただく必要があるのではないでしょうか。

 

さて話を戻しましょう。

前項の最後にリードタイムの話を出しました。お客様からの発注が入ってからお届けするまでのリードタイム短縮については誰しも考えるところです。これをもっと上流にさかのぼって考えてみましょう。物の調達も物流として持っておくべき知識の一つです。特に調達リードタイムなどは物流にもかかわってくるところです。

 

この調達リードタイムが長いと調達品の在庫が増えます。荷主にとって、これは望ましい状況ではないということを理解しなければならないでしょう。

 

一方で「まとめて買うことで単価が下がる」という事実もあります。リードタイムを短縮したいと考えている荷主に対して、常日頃調達品の輸送や在庫管理を行っている物流会社は、どのようなアドバイスをしたらよいでしょうか。できれば「購買知識」を身に付け、調達先との交渉術なども身に付けておくとよいかもしれません。また調達先の物流改善指導を行うことで調達コストを下げ、リードタイム短縮にも寄与することができる可能性があります。

 

サプライチェーンの入り口は「物の調達」ですから、物流会社はこの調達に関する知識は必須です。この調達に絡め「下請法」の知識も身に付けておいた方がよさそうです。ユーザーである荷主が、この下請法の知識を身に付けていないために法令違反を犯してしまうことがあります。

 

このような状況を回避するためにも物流会社側が調達品の管理をするとともに、下請法の観点からアドバイスをしてあげられればバリューが高まるのではないでしょうか。

サプライチェーンマネジメント

 

3. サプライチェーン全体を俯瞰する

◆ 生産知識と環境知識

サプライチェーンの中にあってリードタイムといえば「生産リードタイム」も重要な要素の一つです。この生産リードタイムを理解するためには、ものづくりについて一定の知識が必要です。

 

ロット生産とは何か、生産リードタイムを縮めるためにはなぜロットを小さくしなければならないのか、1個づくりとはどういう意味なのか、このような生産知識が物流マンには必要になります。もし皆さんがメーカーを顧客に抱えていらっしゃるのであれば、こういった知識もまた「必須知識」だといえるでしょう。

 

倉庫で在庫保管を行っており、入出庫や輸送も行っていれば製品ごとに何日分の在庫があり、その在庫が本当に必要なのかどうか体感しているものと思われます。その場合、ものづくりに関する知識があれば、在庫削減についての具体的な提案を顧客に行うことが可能になります。もしこういった提案ができるとすれば、それもまたその物流会社の「バリュー」であることは間違いありません。

 

ものの調達、...

サプライチェーンマネジメント

 

1. 物流関連知識

◆ 最低限知っておくべき物流関連知識

物流マンにとって、勉強が必要なことはいつも申し上げていることです。特に新規顧客の開拓を考えている物流事業者社員にとって勉強は業務同様、時間をかけるべき重要事項です。勉強といってもその範囲は広く、経営や人財マネジメント、財務知識や物流関連知識などさまざまです。今回はこの中から物流関連知識についてお話をしていきたいと思います。

 

実はこの物流関連知識の「関連」という言葉に意味があるのです。これを広くとらえると、また範囲が広がりすぎますので、最低限知っておくべき知識について考えていきましょう。まず大前提ですが、運送業に携わる方は運送に関わる必要知識を、倉庫業に携わる方は倉庫業に関する必要知識を身に付けておく必要があります。

 

例えば、運送に関わる知識の一つとして「運輸安全マネジメント」が挙げられます。このマネジメントを展開していくために、社内の人たちが何をやらなければならないのかを知っておくことは当然です。倉庫であれば「庫内安全」のための知識が必要です。労働安全衛生法ではどのような制約があるのか、フォークリフトのような特定機械を使う場合の法令上の条件とは何かなど、どうしても知っておかなければならない知識を身に付けておく必要があるのです。

 

こういった業界特有の知識というものはその仕事を実施するための必要最低限の知識で、それを身に付けていなければ仕事に取り組んではならないといった類(たぐい)のものでしょう。物流関連知識とは、それ以外の物流事業者が仕事を行う上で必要となる知識のことを指します。

 

私たちが取り組む領域はサプライチェーン全体です。物流という言葉をどう定義するかによっても変わってきますが、昨今ではこの「物流」でカバーしきれない領域が顧客から求められているのです。では一例を挙げて考えてみましょう。

 

顧客から「お客様にお届けするためのリードタイムを短縮したいが、どうしたらよいでしょうか?」こう質問されたら皆さんだったらどのように答えますでしょうか。ここでこのリードタイムとは、どういう意味を持っているのかについて考える必要がありますが、リードタイムを、お客様からの受注からお届けするまでの時間という意味と解釈することは最低限必要でしょう。さらにこれを実現するためにはもう少し範囲を拡大してみる必要があります。

 

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2. 物の調達

◆ 調達知識

自社は運送事業者のため「運送に関する知識」はあるけれど、倉庫内作業や在庫に関する知識は持っていないという会社は多いと思われます。

 

「それは『荷主の領域』だから我々には関係ない」と言い切ってしまう事業者もいます。もちろん「仕事は現状維持、取引先も現状維持で十分」という会社であれば、このような対応でも良いのかもしれません。ただ、世の中の動きや変化は激しさを増していますから、多分このような事業者は淘汰される傾向にあるのでしょう。

 

日本には約6万2000社の運送会社がありますが、これでは過当競争になり、場合によってはコンプライアンス違反を犯している会社が含まれている可能性があります。少なくともコンプライアンス違反を犯してまで事業を継続している会社には、市場から退場していただく必要があるのではないでしょうか。

 

さて話を戻しましょう。

前項の最後にリードタイムの話を出しました。お客様からの発注が入ってからお届けするまでのリードタイム短縮については誰しも考えるところです。これをもっと上流にさかのぼって考えてみましょう。物の調達も物流として持っておくべき知識の一つです。特に調達リードタイムなどは物流にもかかわってくるところです。

 

この調達リードタイムが長いと調達品の在庫が増えます。荷主にとって、これは望ましい状況ではないということを理解しなければならないでしょう。

 

一方で「まとめて買うことで単価が下がる」という事実もあります。リードタイムを短縮したいと考えている荷主に対して、常日頃調達品の輸送や在庫管理を行っている物流会社は、どのようなアドバイスをしたらよいでしょうか。できれば「購買知識」を身に付け、調達先との交渉術なども身に付けておくとよいかもしれません。また調達先の物流改善指導を行うことで調達コストを下げ、リードタイム短縮にも寄与することができる可能性があります。

 

サプライチェーンの入り口は「物の調達」ですから、物流会社はこの調達に関する知識は必須です。この調達に絡め「下請法」の知識も身に付けておいた方がよさそうです。ユーザーである荷主が、この下請法の知識を身に付けていないために法令違反を犯してしまうことがあります。

 

このような状況を回避するためにも物流会社側が調達品の管理をするとともに、下請法の観点からアドバイスをしてあげられればバリューが高まるのではないでしょうか。

サプライチェーンマネジメント

 

3. サプライチェーン全体を俯瞰する

◆ 生産知識と環境知識

サプライチェーンの中にあってリードタイムといえば「生産リードタイム」も重要な要素の一つです。この生産リードタイムを理解するためには、ものづくりについて一定の知識が必要です。

 

ロット生産とは何か、生産リードタイムを縮めるためにはなぜロットを小さくしなければならないのか、1個づくりとはどういう意味なのか、このような生産知識が物流マンには必要になります。もし皆さんがメーカーを顧客に抱えていらっしゃるのであれば、こういった知識もまた「必須知識」だといえるでしょう。

 

倉庫で在庫保管を行っており、入出庫や輸送も行っていれば製品ごとに何日分の在庫があり、その在庫が本当に必要なのかどうか体感しているものと思われます。その場合、ものづくりに関する知識があれば、在庫削減についての具体的な提案を顧客に行うことが可能になります。もしこういった提案ができるとすれば、それもまたその物流会社の「バリュー」であることは間違いありません。

 

ものの調達、そして生産の領域まで踏み込めればサプライチェーン全体を俯瞰することが可能となります。物流マンにはぜひこの領域での知識を身に付けてほしいと思います。

 

さらに、今回は「環境」に関する知識にも触れておきましょう。物流事業者もそうであると同様、荷主の立場でも「CO2排出量の削減」に取り組むことが求められます。また環境という側面からは「森林資源」を保護するために木材や段ボールなどを、流通過程で使用しない取り組みも必要であると考えられます。

 

物流作業のためのパレットは木製から樹脂製へ、保管や運搬のための容器は段ボールからプラスチック容器へと変えていくことも、環境を考慮した物流の取り組みといえます。CO2削減のため、輸送をトラックから船舶や鉄道に変更していくことも物流会社であれば提案することは容易でしょう。

 

物流マンは顧客へのサービス水準向上に向け、今までお話してきたような「物流関連知識」を身に付けなければなりません。くれぐれも知識の幅を狭め過ぎないように注意が必要です。積極的に外部セミナーで知識を吸収したり、顧客の現場に入り込んで知識を身に付けていきましょう。これらの身に付けた知識が、新たな取り引きや会社収益拡大につながるのです。

 

 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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