『7ゼロ生産』実現マニュアル~生産性7つの阻害要因とゼロベース思想~
第1章7ゼロ生産意識改革PICQMDS(ピックエムディーエス)【第1章 目次】
1.ゼロ・ベース経営のすすめ
2.7つのゼロ・ベース-PICQMDS-
3.問題意識から疑問意識へ
4.7ゼロ生産5つの指針
5.7ゼロ生産発想法← 今回の解説記事
5-1.切替えゼロ発想法一多品種化:(Products)
5-2.在庫ゼロ発想法一問題表面化:(Inventory)
5-3.ムダゼロ発想法ーコスト削減:(Cost)
5-4.不良ゼロ発想法 一品質保証:(Quality)
5-5.故障ゼロ発想法 一生産保全:(Maintenance)
5-6.停滞ゼロ発想法 一短納期化:(Delivery)
5-7.災害ゼロ発想法一安全第一:(Safety)
6.革新のための8つの発想
第1章 7ゼロ生産意識改革PICQMDS(ピックエムディーエス)
5. 7ゼロ生産発想法
5-1. 切替えゼロ発想法一多品種化(Products)
市場における人々の多様化や個性化の現象は、ますます強くなってきている。とくにファッション製品はこの傾向が一段と強い。昔は、デパートでの若い女性の洋服売場では、同じデザインの洋服を2着並べて吊るすと、これがなかなか売れないという。若い女性の心理として、そのデザインの洋服は気に入った。しかし、1着は自分が買うとしても、もう1着残る。これを誰か他の人が買って着る。世の中で自分と同じ服を誰かが着ることになる。若い女性は、これが嫌だと言う。そこで世の中に1着しかない洋服を求めて、専門のブティックやデザイナーズ・ショップへ足を運んでいた。
しかし、近年では有名人が着ている同じ服が欲しい、あの人が着ている服がかわいい、と同じ服を着ることで帰属意識が生まれ、どこかで繋がっているという感覚を持っていたいのではないか。
また、購入場所も昔は店舗まで自分の足を運び直接実物を見て肌触りを感じ、実際に試着して店員さんの口説き文句で気分が向上し、決断し購入したものであった。今ではネット通販なるもので、有名人やモデルが着ている画面に映る商品を、自分が着たら、使ったらどうなると想像しパソコンのボタンをついつい押して購入してしまう。ネットは無理という方々は、テレビショッピングで同じようについついダイヤルを回して、注文してしまうのである。昔に比べ購入までのプロセスが単純でスピーディーである。それゆえに安易に購入してしまう。しかし、いざ手に取り、着たり使ったりしていると直ぐに飽きる。想像していたものとは何か違っているのである。
高度経済成長が始まった頃の売り方といえば、冬が近づけば、デパートにはジャンパーが所狭しと並べられた。それもみんな同じ形、同じ色のジャンパーである。今ではちょっと考えにくいことだが、その古臭いデザインの数多く並べられたジャンパーが飛ぶように売れた。当時、服装は個人の主張ではなかった。それは"暖をとる”といった機能面をまず顧客が望んだからである。そこで仕組みとして大量仕入れ・大量販売が採られる。仕組みはいつの世にもニーズに合わせて創られるものである。
最近では、多くなり過ぎた品種を少なくする企業がある。この現象だけを観れば、多品種化は終篤したかと錯覚する。そしてこれにつられて“変種変量生産”などと、言葉尻をもてあそんだ言い方までが出現する。企業が品種を少なくしているのは、古くなり過ぎた製品や売れない製品を整理して、アウトレットなどと称して安く販売しているのもうかがえる。これはその企業のプロダクト・ミックスに対する無策振りを露呈したに過ぎないし、毎年の製品構成の見直しの中でごくごく普通にやられていることある。
しかし、この見直し周期が短くなってきている。そこには、様々な製品特有のニーズの流れ”時間と空間“がある。それにしても市場のニーズはこれからもっと多様化・個性化していくであろうし、これからも“多品種少量生産”に一層の拍車がかかるであろう。このような現象は、工場にさらなる切替えを要求し、ますます複雑さと困難さをもたらす。工場での切替えは、組立工程では“品種切替え”と呼び加工部門では“段取り替え”という。これからすると単なる“切替え”という呼び方は、この両者の総称にすぎない。
組立現場や加工現場に数十分でも立っていれば、多品種対応をしている工場なら間違いなく切替えを見ることができる。この切替えを見た瞬間が大切であり、この時にどのような発想をするかで、次の施策が決まってしまう。
- Aさん「大変だなあー」(温情家タイプ)
- Bさん「なぜ、こんなに時間がかかるんだろう」(改善屋タイプ)
- Cさん「なぜ、切替えをするんだろう」(革新家タイプ)
Aさんの発想で、次の施策は何が出てくるか。ほとんど何も期待できない。その仕事に感心したり、同意してしまってはそこに革新の芽も出てこない。「大変だなあー」と感じたその人からは、せいぜい出ても、ひと言の「お疲れさん」くらいなもの。
これでは革新家失格で、なれてもせいぜい、“口ばかりの温情家”である。
Bさんタイプの発想は、これまでの日本の工場の多くの人々がとってきた発想法で“改善屋”タイプ。こんな人に限ってすぐにストップウオッチを取り出し、作業内容の時間分析に入る。そして、次は動作分析をして、いまの切替え時間をなんとか短くしょうとする。この方法はこれで、段取り時間が短縮するので悪くはない。しかし、頭からこの方法では、どうも首をひねりたくなる。切替え時間を短縮する前に、何かやることがありそうな気がする。
Cさんの発想が“革新家”タイプである。いろいろ難しいことは考えず、備えるものは子供のような純粋な日と旺盛な好奇心。そして、素直に今やっている切替えを見つめて「なぜ、切替えをするのか?」という素朴な疑問から始まる。まず何よりも大切なことは、素朴で純真な疑問を第一に持つこと。そこでは問題意識よりもまず“疑問意識”が優先する。
そして「なぜ、切替えをするのか」の疑問に対する答の出し方が、次に重要なことになる。その答には、次の3つがある。
- Dさん「計画のつくり方が悪い」:自己防衛タイプ
- Eさん「多品種化の時代だからしょうがない」:遁世(とんせい)タイプ
- Fさん「今のやり方のどこかおかしいな」:自己革新タイプ
Dさんの人は、何が起きてもいつも他人のせいにするタイプである。たとえばDさんは製造部。仮に製品の納期遅れを出してしまった。そこで言うことが、「購買が部品をちゃんと入れなかった」とか「設計の出図が遅れた」などと周りで起きた問題を自分を正当化するために並べたてる。これは“自己防衛”タイプの人といえる。
Eさんは、Dさんとは少し違う。誰のせいにするわけではない。だからといって自分のせいでもなし。すべて世の中が悪いんですと開きなおるタイプ。たとえば切替えの発生について、「世の中が多品種化だからしょうがない」とあきらめ顔をする。
問題解決型ではなく逃避型であり、煩わしさから逃れたいどちらかと言うと世をはかなんだ"遁世(とんせい)”タイプに多く見られる。
最後のFさんは、自己の悪さを見つけこれを...