ゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その1)

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ゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その1)

 

『7ゼロ生産』実現マニュアル~生産性7つの阻害要因とゼロベース思想~

第1章7ゼロ生産意識改革PICQMDS(ピックエムディーエス)【第1章 目次】

1.ゼロ・ベース経営のすすめ今回の解説記事
2.7つのゼロ・ベース-PICQMDS-

3.問題意識から疑問意識へ 
4.7ゼロ生産5つの指針 
5.7ゼロ生産発想法
 5-1.切替えゼロ発想法一多品種化:(Products)
 5-2.在庫ゼロ発想法一問題表面化:(Inventory)
 5-3.ムダゼロ発想法ーコスト削減:(Cost)
 5-4.不良ゼロ発想法 一品質保証:(Quality)
 5-5.故障ゼロ発想法 一生産保全:(Maintenance)
 5-6.停滞ゼロ発想法 一短納期化:(Delivery)
 5-7.災害ゼロ発想法一安全第一:(Safety)

6.革新のための8つの発想

 

第1章 7ゼロ生産意識改革PICQMDS(ピックエムディーエス)

1. ゼロ・ベース経営のすすめ

意識の変化を根底として、市場、経済、技術、環境に大きな変化が訪れている。また、これらの変化に覆い被さるように、人間と地球の叫びも大きくなってきている。平成のバブル景気に沸いたとき、人手不足も手伝って製造業の3K(きつい、汚い、危険)職場が大いに話題となった。若い人たちが製造業を敬遠するのは、まず3K職場が原因であるとして、人間性豊かな職場へのリストラクチャリングが始められた。これが人間性重視の動きであり、豊かな人間性を育む職場とは一体どんな職場なのか、真剣な検討が加えられている。

 

一方、人間の住む地球そのものへの関心も年を追って増大する。地球温暖化を避けるための本格的な地球プロジェクトもできた。公害防止は勿論のこと、地球の緑を守る、環境自然保護の運動も高まりを見せている。

 

このように世界のモノを視る目が変わろうというとき、戦後日本が経済一辺倒の単一指向の考えではよいとされていた世の中が、なぜか世界の調和を乱すといわれだした。それだけ儲けているのなら人類愛、地球保護などにもっと金を使うべきだとの意見もで始めた。

 

これは、日本という国だけの問題でなくて、企業の評価にとっても同様のことがいえるのではないか。これまで優秀な企業とは1円でも多く黒字を出した企業であり、優秀な経営者とは1円でも多く儲けた経営者だった。このような経済的な一側面だけから捉えれば、優秀な企業の定義はこのように言われていただろう。

 

近代資本主義の推移も、プロフェッショナル・マネージャーを必要とした経営資本主義から株主価値の最大化を目指した株主資本主義へと変わり、顧客を最優先に満足を提供する顧客資本主義へと移行し、社会全体への貢献をしみんなを幸せにする公益資本主義が叫ばれている。

 

しかし、"好きな時に、好きな所へ行ける便利な道具”のはずの自動車が、実際は街に溢れ、排気ガスの害を発生し、地球の温暖化を早め、緑地を道路で占有し、交通戦争で人が死に、莫大に使われるプラスチックが地球を破壊するとさえいわれている。

 

数多くの難問を抱えていながら企業存続だけを第一と考え、そのためには多くの利益を上げることが至上命令とばかり売上げ拡大、原価低減を図る。そして上げた多大なる利益を自分の発展のためのみに使う。これが本当に優秀な企業と呼べるだろうか。

 

いま、まったく別の観点から“優秀”という2文字を定義してみると、近視眼的に利益だけを追い求める日本の企業群に疑問符を打たざるを得ない。企業とは本来何なのか。利益とは本当は誰のものなのか。人間、地球にとって企業は何ができるのか。企業の存在価値や倫理観にまで遡って、真剣に考える必要がある。

 

そうしてみると、人間、地球、社会に還示せずに自分の懐に莫大な利益を溜め込む企業は"悪い”とさえ映る。このように企業はいま、単に利益の大きさだけで優劣を争う時代から複合的な評価尺度を持つ新たな時代に突入したといえる。これは企業を診る目が急速に変化していることを示している。

 

企業は生き物である。それゆえ、一度は生まれて、一度は死ぬ。死ぬとはわかっていても、それでも企業は生きようと必死になる。少しでも死を先に延ばそうと努力する。それが死に物ではなく生き物たる所以である。そしてその努力を、変革を企業革新とか企業イノベーションと呼ぶ。ということは、企業存続にとって企業イノベーションは必須事項であり、革新なき企業は死をも意味しているのである。

 

世の中の企業という生き物に対する価値観、倫理観それにその定義さえも変わろうという時代に従来からの発想法ではどうしても打ち破れない壁が残る。この壁を打ち破るのが“ゼロ・ベース発想法” である。

 

これまでの経営における発想法は“低減発想法”が主流である。不良が出ている、この不良を低減させよう。在庫が多過ぎる、それでは在庫を減らそう。すべてこの発想で経営が営ま...

ゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その1)

 

『7ゼロ生産』実現マニュアル~生産性7つの阻害要因とゼロベース思想~

第1章7ゼロ生産意識改革PICQMDS(ピックエムディーエス)【第1章 目次】

1.ゼロ・ベース経営のすすめ今回の解説記事
2.7つのゼロ・ベース-PICQMDS-

3.問題意識から疑問意識へ 
4.7ゼロ生産5つの指針 
5.7ゼロ生産発想法
 5-1.切替えゼロ発想法一多品種化:(Products)
 5-2.在庫ゼロ発想法一問題表面化:(Inventory)
 5-3.ムダゼロ発想法ーコスト削減:(Cost)
 5-4.不良ゼロ発想法 一品質保証:(Quality)
 5-5.故障ゼロ発想法 一生産保全:(Maintenance)
 5-6.停滞ゼロ発想法 一短納期化:(Delivery)
 5-7.災害ゼロ発想法一安全第一:(Safety)

6.革新のための8つの発想

 

第1章 7ゼロ生産意識改革PICQMDS(ピックエムディーエス)

1. ゼロ・ベース経営のすすめ

意識の変化を根底として、市場、経済、技術、環境に大きな変化が訪れている。また、これらの変化に覆い被さるように、人間と地球の叫びも大きくなってきている。平成のバブル景気に沸いたとき、人手不足も手伝って製造業の3K(きつい、汚い、危険)職場が大いに話題となった。若い人たちが製造業を敬遠するのは、まず3K職場が原因であるとして、人間性豊かな職場へのリストラクチャリングが始められた。これが人間性重視の動きであり、豊かな人間性を育む職場とは一体どんな職場なのか、真剣な検討が加えられている。

 

一方、人間の住む地球そのものへの関心も年を追って増大する。地球温暖化を避けるための本格的な地球プロジェクトもできた。公害防止は勿論のこと、地球の緑を守る、環境自然保護の運動も高まりを見せている。

 

このように世界のモノを視る目が変わろうというとき、戦後日本が経済一辺倒の単一指向の考えではよいとされていた世の中が、なぜか世界の調和を乱すといわれだした。それだけ儲けているのなら人類愛、地球保護などにもっと金を使うべきだとの意見もで始めた。

 

これは、日本という国だけの問題でなくて、企業の評価にとっても同様のことがいえるのではないか。これまで優秀な企業とは1円でも多く黒字を出した企業であり、優秀な経営者とは1円でも多く儲けた経営者だった。このような経済的な一側面だけから捉えれば、優秀な企業の定義はこのように言われていただろう。

 

近代資本主義の推移も、プロフェッショナル・マネージャーを必要とした経営資本主義から株主価値の最大化を目指した株主資本主義へと変わり、顧客を最優先に満足を提供する顧客資本主義へと移行し、社会全体への貢献をしみんなを幸せにする公益資本主義が叫ばれている。

 

しかし、"好きな時に、好きな所へ行ける便利な道具”のはずの自動車が、実際は街に溢れ、排気ガスの害を発生し、地球の温暖化を早め、緑地を道路で占有し、交通戦争で人が死に、莫大に使われるプラスチックが地球を破壊するとさえいわれている。

 

数多くの難問を抱えていながら企業存続だけを第一と考え、そのためには多くの利益を上げることが至上命令とばかり売上げ拡大、原価低減を図る。そして上げた多大なる利益を自分の発展のためのみに使う。これが本当に優秀な企業と呼べるだろうか。

 

いま、まったく別の観点から“優秀”という2文字を定義してみると、近視眼的に利益だけを追い求める日本の企業群に疑問符を打たざるを得ない。企業とは本来何なのか。利益とは本当は誰のものなのか。人間、地球にとって企業は何ができるのか。企業の存在価値や倫理観にまで遡って、真剣に考える必要がある。

 

そうしてみると、人間、地球、社会に還示せずに自分の懐に莫大な利益を溜め込む企業は"悪い”とさえ映る。このように企業はいま、単に利益の大きさだけで優劣を争う時代から複合的な評価尺度を持つ新たな時代に突入したといえる。これは企業を診る目が急速に変化していることを示している。

 

企業は生き物である。それゆえ、一度は生まれて、一度は死ぬ。死ぬとはわかっていても、それでも企業は生きようと必死になる。少しでも死を先に延ばそうと努力する。それが死に物ではなく生き物たる所以である。そしてその努力を、変革を企業革新とか企業イノベーションと呼ぶ。ということは、企業存続にとって企業イノベーションは必須事項であり、革新なき企業は死をも意味しているのである。

 

世の中の企業という生き物に対する価値観、倫理観それにその定義さえも変わろうという時代に従来からの発想法ではどうしても打ち破れない壁が残る。この壁を打ち破るのが“ゼロ・ベース発想法” である。

 

これまでの経営における発想法は“低減発想法”が主流である。不良が出ている、この不良を低減させよう。在庫が多過ぎる、それでは在庫を減らそう。すべてこの発想で経営が営まれてきた。これでは従来の旧い殻を壊すことは絶対にできないし、相変わらずその体質は居残り続け、そこに企業イノベーションなどという酒落た言葉は見当たらない。「工程の仕掛在庫を減らそう」ではなくて「仕掛在庫はゼロで生産できるはずだ」とか「製品在庫を1/2にしよう」ではなくて「製品在庫をゼロで生産・販売する方法は?」といった強い発想の転換が望まれる。

 

たとえば、今100の在庫がある。低減発想法では、この在庫を上から観る。100の在庫を上から捉えて、これを1/2にしょうとする。そして改善という中で大いに苦労をして目標の1/2、つまり在庫が50になった。人の心情としてどう思うか。苦労すればするほど「ようやく、50」の感が強くなる。再度目標1/2の25に、さらに目標1/2の13になどという気力はそこにはない。

 

一方、ゼロ・ベース発想法ではどうか。まず、在庫はゼロをベースとする。「在庫がゼロでできる方法は?」と胸の内に強く念じる。すると今のやり方とはまったく違ったいくつかのやり方が知恵として湧いてくる。理想形とか本来あるべき姿が描き出せれば、あとは行動あるのみ。設備を小型化したり、ライン化を図ったりして改革を実践する。

 

改革の結果として、任減発想法と同じ50の在庫が残ったとする。確かに結果の在庫50は同じである。しかし、その在庫の観方が低減発想法では上から観て「ようやく50」と思うのに対し、ゼロ・ベース発想法では、在庫をゼロとして下から視る。そして「まだ、50」という思いにかられる。過去に在庫が100あろうが200であろうがそれは一切関係ない。過去へのこだわりよりも、在庫50という現実と将来の在庫ゼロの姿だけが残る。これに対し、低減発想法では、この間まで100の在庫があったのに、それが半分の50になったという過去から現在を観る思いが強くなる。

 

企業活動にとって重要なのは過去ではない。未来であり、将来である。これを強く思うとき、そこに絶えざる企業イノベーションが発生する。それゆえ、過去に捉われる低減発想法ではなく、将来に思いをはせたゼロ・ベース発想法が重要となるのである。

 

次回に続きます。

 

【出典】「『7ゼロ生産』実現マニュアル」ジット経営研究所刊 平野裕之著より、ジット経営研究所 古谷誠 編著(編著者のご承諾により連載)

 

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この記事の著者

古谷 誠

「5S・3定」で改革・改善の基礎をつくり!JIT思想でムダを徹底して取り!心を生かしたモノづくりを目指す!

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