B社では、断熱容器と防振の車いすを製造しています。断熱容器は、低温状態のまま細胞を維持できることから、大学病院等から引き合いが多く、将来性のある商品のようです。最近、小規模の会社でも、キラリと光る商品を開発し、その販路開拓の相談を受けることが増えています。それでは、B社の事例をもとに販路開拓の仕方を考えてみましょう。
1.販路開拓、見込み客を選定
B社の役員の方から、油分を分解し、洗浄できるH溶剤を紹介され、一緒に販路開拓をしないかという提案を受けたことです。B社は、O社が製造・販売しているH溶剤を協力して、販売していましたが、売上高が伸び悩んでいました。この案件に対して弊社では、以前工場ゼロエミッション活動から、廃液や廃油に興味を持ち、その対策を調査・研究していました。そして、独自にH溶剤の商品テストや検証を行い、ユニークで優れた、社会貢献できる商品であると判断しました。つぎに、廃液処理方法のときの経験を生かし、廃液処理機器メーカーD社と協業し、販路を開拓できないかと思い、一緒に評価テストをお願いしました。結果は、期待したものになりませんでしたが、販路開拓を進めるにあたって、市場を絞り込む参考情報を得ることができました。
販路開拓には、まず見込み客になりそうな対象を選定することから始めます。つまり、見込み客の、設定 ⇒ 整理 ⇒ 優先順位を決めてアプローチしていくことを準備します。単に顧客になりそうだと思った会社にアプローチしていくだけでは、「本当に有望な顧客は、どのような会社であるのか。」を確認できないからです。
2.セーリング・プロセスを考える
次に、セールス活動のステップを準備、整理しておくことが必要です。見込み客へのコンタクトの仕方から、商品説明 ⇒ 興味の喚起 ⇒ テスト・評価 ⇒ 受注(クロージング)などのストーリーを作成し、そのための資料を準備することです。それは、プレゼンの資料だけを準備することではありません。ストーリーの各ステップに必要になる資料を考えることです。これが、販促ツールです。この販促ツールでは、お客様に強く興味を持っていただける資料を準備しなければなりません。その代表は、実績とデモではないでしょうか。実績は、会社がその商品を使ってあげた成果であり、お客様(見込み客)が同様の成果を期待できるかを判断できます。また、デモの結果は、見込み客の期待値を挙げることができ、商品に強い興味を持ってもらうことができます。
O社の場合には、これらの資料が不十分であり、「何が不足しているのか。」を整理できなかったのです。よい商品であっても、訴求すべきデータでなければ、印象が全く違ってしまいます。もっとも困ったことが、あいまいな数値を用いていることでした。簡単に述べますと、油1gに対してH溶剤は何g必要になるかということです。これが、あいまいな数値ですと、費用対効果もあいまいになって、しっかりと評価することができません。B社、O社ともに、実績データを整理することなく、あいまいに効果の説明に終始していたのです。この点を指摘したのですが、まったく重要と考えていませんでした。
弊社が、代理店としてある会社を紹介したとき、その会社が取引を決断するまでに長い期間を必要としました。それは、次の(1)から(4)の準備を自社で作成しなければならな...
かったのです。
(1)H溶剤の見込み客になる会社はどこになるのか
(2)どのくらいの市場規模が望めるのか
(3)それらの会社への商品説明をそのように進めるのか
(4)興味をどのように引き出すか
結局、頻繁にO社及びB社に同行いただいて、販路開拓の支援を受け、販路の開拓と自社の販促ツールを作成することになったのです。これに対して、弊社にB社の役員から、代理店との同行営業の費用負担が多いと苦情があり、費用負担を要求してきました。販路開拓の準備不足を理解できず、弊社も唖然としてしました。このように効率的な販路開拓の活動は、論理的なセーリング・プロセスを考え、その資料を準備することが重要です。販路開拓活動では、しっかりと必要な準備を整えることが、効率的な成果を生むことになります。