【調達段階のコストダウン 連載記事】
5.資材・購買でのコストダウンのポイント
前回のその2に続いて解説します。調達活動として、次ののような前提条件を確認しておくことが必要です。
(1)なぜ、買うことにしたのか
社内でつくるか、外部から買うかについての判断のです。コストメリット、専門的な技術、生産能力の不足、固定費の変動費化など、取引先を利用する目的を明らかにすることです。
(2)何を買いたいのか
購入するにあたって、どのような状態で買いたいのか、購入の範囲です。電子部品で買うのか、プリント基板に組付けたアッセンブリ状態で買うのかというようなことです。多くの会社が、部品単品ではなくアッセンブリ単位での購入を指向しています。
(3)どうやって買うのか
自社で直接購入するのか、取引先で購入するのかです。材料や電子部品などを自社で購入するよりも取引先で購入してもらうほうが、材料調達の手間が省けます。しかし、安価で入手できることがポイントです。
(4)どこが注文するのか
注文は、本社の購買部門か、工場の購買部門が発行するかということです。主に複数の工場を持つ会社で検討されていることなのですが、同じ部品や材料をどの工場で購入しても同じ価格にする、まとめて本社で購入することでコストダウンを図るのかといったことです。
(5)取引条件はどうするのか
注文の方法、納品の方法、発注ロットを設定、配送のための条件、検査、支払い方法などを取り決めることです。一般には、買い手側の条件で決まるものですが、売り手側の提案で調達コストを引き下げることができることもあります。これらを整理しておくと、調達品のコストダウンを図る上で、まず見直すべきことになります。
6.情報の取捨選択が大切
経営に必要な要素として、人、物、金(経営の3要素)と言われますが、現在では、これらに情報を加えて、経営の4要素としていることが多いようです。
購買活動でもこの情報は、非常に大切な要素の一つです。新聞や雑誌、テレビなどから豊富に提供され、とくに現在では、インターネットが積極的に活用されています。そして、購買活動では、この情報に関して社内と社外の両方から入手できる重要なポジションにあります。社外の情報には、調達する品目に関するものだけではなく、それらの品目を扱う業界全体の動き、企業の競争関係や競争上の利点・欠点などのポイント、技術的な動向と今後の流れなどを知ることができます。
とくに、取引先を通じて得られる情報は、新聞や業界紙などに掲載されて、多くの人たちの知るところになっているものではなく、その業界や製品に関する生きた情報であり、最新の情報を入手できることができます。
このように多くの社外の情報が、調達部門を経由して会社に入手できるのです。したがって、他社に一歩先んじた購買戦略を考えるためにも、調達部門から得られる情報を大切にするべきです。そして、収集した情報を取捨選択して、自社に重要な情報を整理することです。これらの情報は、とくに価格競争の優位性に大きな影響を与えるものです。
7.新規の取引先開拓に努める
従来多くの会社では、厳しい価格競争に対応して、調達する材料や部品を直接メーカーから購入する傾向が強くあります。これは、代理店を経由すると、代理店の利益分が購入価格に上乗せされて、コストアップになるのではないかと考えたるからです。しかし、本当に直接メーカーから調達することが、ベストな方法なのでしょうか。
大手の材料や部品メーカーの代理店のしくみを確認してください。代理店のしくみの中には、お客様への納入価格を決めて、それから代理店との仕切価格を設定している会社もあります。また、総代理店では、値崩れを防ぐために、価格統制をしているところもあります。この実態を知ってください。
そして、取引先の自社に対する依存度(購入金額)を確認す...
ること大切です。依存度が高ければ、無理な要求をしても対応してくれるでしょう。しかし、取引先から見ると少量であると、無理を聞いてくれることは難しいでしょう。
購入価格だけに目を向けて、取引先について理解をしていないと、納期通りに品物が入らず、いつもバタバタしながら、品物を集めることになってしまうのです。新規の取引先開拓を進めているとそれらの情報を知ることが出来ますし、新たなコストダウンの道を探すことにもなります。
次回、調達段階のコストダウン(その4)は、取引先の整理から解説します。