宅配物流について考える (その1)

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1. 宅配物流の特徴

SCM
 今となっては国民にとってなくてはならない存在となった宅配物流ですが、かつては郵便小包という不便なサービスが今や民間企業が参入した結果、便利でありがたい物流市場へと取って代わりました。通信販売による購入も当たり前になりましたので、届けてくれる「小売業」も大きく伸びています。ほんの一昔前は実際に自分の目で見て触って、衣服であれば試着して購入しないと怖いという意識がありました。しかし世代も変わり、むしろ通販が主体となりました。届けてもらうことが当たり前になったと言えるでしょう。
 
 物流は自ら新しい商品を生み出し、売り上げを拡大することが可能となりました。この宅配という商品、どの会社でもできるわけではないことがポイントです。各家庭や事業所で集荷した荷物をまとめて全国へ輸送し、そこから今度は届け先である各家庭や事務所に配送を行います。
仕事自体は複雑ではないように見えますが、物流センターや幹線輸送システム、配送システムなどを構築しなければならず、簡単に参入はできません。
 
 つまり現時点で宅配業は名前の知られた複数企業による寡占市場の状態になっているのです。一部のリーディングカンパニーだけができるこの仕事、これらの会社にとっては単価を著しく下げる必要はなく自分たちの市場が守られています。一方で配送担当者の人手不足が大きな問題になっています。運ぶ荷物はあっても運びの担い手の労働環境が悪化しています。宅配物流の最大のお客さんは通販事業者です。小売業である通販事業者は自ら配送を行うのではなく、宅配事業者に業務委託しています。
 
 ここで小売業としてのジレンマが発生しています。それはどういうことかというと、消費者との接点です。実店舗であれば自社の社員(正社員・パート・アルバイト等)が直接消費者と接していますので、教育を施すことでサービス度を保つことができます。しかし宅配事業者に委託するとなると、消費者サービスが思うとおりにいきません。でも消費者にとってみると宅配事業者がその通販事業者そのものなのです。態度が悪かったり、身なりがだらしなかったりすれば印象は悪くなるのは当然です。もうその通販事業者からは買わないということになるでしょう。商品や台車を投げつけるといった事件を起こした業者を使っている通販事業者からは買いたくなくなるのは当然のことなのです
 

2. 個別配送の難しさ

 宅配事業への参入が簡単ではないことは最後に消費者に届けるラストワンマイルの難しさにも表れています。ラストワンマイルとは宅配事業者の配送拠点から、各消費者宅まで配送する行為を指します。企業間物流であれば一定量の物流があり、荷物の受入場も完ぺきではないにせよ整備されています。トラックで進入できますし、フォークリフトでの荷役も可能です。しかし宅配ではすべてが個別のお客様であり、毎日一定の物量があるわけではありません。手荷役が原則です。しかも荷物を受け入れるためのインフラが整備されているわけではありません。
 
 トラックを止める場所も原則として無いようなものです。路上に駐車し、他の交通の邪魔にならない様気にしながら届けなければなりません。届け先に行っても階段やエレベーターを使って個々の消費者宅まで行く必要があります。マンションではオートロックの扉を開けてもらうために呼び出し行為も必要です。オートロック、階段、エレベーター、狭い通路など、物流事業者泣かせの関門が多数存在します。うまく消費者宅までたどり着けても「不在」という関門が待ち受けています。時期や時間帯にもよるのでしょうが、不在率は20%を超えるともいわれています。再配達が必要となり、二度手間三度手間となりがちです。
 
 今度は宅配作業員の難...

1. 宅配物流の特徴

SCM
 今となっては国民にとってなくてはならない存在となった宅配物流ですが、かつては郵便小包という不便なサービスが今や民間企業が参入した結果、便利でありがたい物流市場へと取って代わりました。通信販売による購入も当たり前になりましたので、届けてくれる「小売業」も大きく伸びています。ほんの一昔前は実際に自分の目で見て触って、衣服であれば試着して購入しないと怖いという意識がありました。しかし世代も変わり、むしろ通販が主体となりました。届けてもらうことが当たり前になったと言えるでしょう。
 
 物流は自ら新しい商品を生み出し、売り上げを拡大することが可能となりました。この宅配という商品、どの会社でもできるわけではないことがポイントです。各家庭や事業所で集荷した荷物をまとめて全国へ輸送し、そこから今度は届け先である各家庭や事務所に配送を行います。
仕事自体は複雑ではないように見えますが、物流センターや幹線輸送システム、配送システムなどを構築しなければならず、簡単に参入はできません。
 
 つまり現時点で宅配業は名前の知られた複数企業による寡占市場の状態になっているのです。一部のリーディングカンパニーだけができるこの仕事、これらの会社にとっては単価を著しく下げる必要はなく自分たちの市場が守られています。一方で配送担当者の人手不足が大きな問題になっています。運ぶ荷物はあっても運びの担い手の労働環境が悪化しています。宅配物流の最大のお客さんは通販事業者です。小売業である通販事業者は自ら配送を行うのではなく、宅配事業者に業務委託しています。
 
 ここで小売業としてのジレンマが発生しています。それはどういうことかというと、消費者との接点です。実店舗であれば自社の社員(正社員・パート・アルバイト等)が直接消費者と接していますので、教育を施すことでサービス度を保つことができます。しかし宅配事業者に委託するとなると、消費者サービスが思うとおりにいきません。でも消費者にとってみると宅配事業者がその通販事業者そのものなのです。態度が悪かったり、身なりがだらしなかったりすれば印象は悪くなるのは当然です。もうその通販事業者からは買わないということになるでしょう。商品や台車を投げつけるといった事件を起こした業者を使っている通販事業者からは買いたくなくなるのは当然のことなのです
 

2. 個別配送の難しさ

 宅配事業への参入が簡単ではないことは最後に消費者に届けるラストワンマイルの難しさにも表れています。ラストワンマイルとは宅配事業者の配送拠点から、各消費者宅まで配送する行為を指します。企業間物流であれば一定量の物流があり、荷物の受入場も完ぺきではないにせよ整備されています。トラックで進入できますし、フォークリフトでの荷役も可能です。しかし宅配ではすべてが個別のお客様であり、毎日一定の物量があるわけではありません。手荷役が原則です。しかも荷物を受け入れるためのインフラが整備されているわけではありません。
 
 トラックを止める場所も原則として無いようなものです。路上に駐車し、他の交通の邪魔にならない様気にしながら届けなければなりません。届け先に行っても階段やエレベーターを使って個々の消費者宅まで行く必要があります。マンションではオートロックの扉を開けてもらうために呼び出し行為も必要です。オートロック、階段、エレベーター、狭い通路など、物流事業者泣かせの関門が多数存在します。うまく消費者宅までたどり着けても「不在」という関門が待ち受けています。時期や時間帯にもよるのでしょうが、不在率は20%を超えるともいわれています。再配達が必要となり、二度手間三度手間となりがちです。
 
 今度は宅配作業員の難しさを考えてみましょう。先ほどの動線の問題に加え、不在時の消費者とのやり取りが存在します。消費者から電話がかかってきたものに対して対応しなければなりません。限られた時間の中で膨大な量の荷物を捌くだけではなく、消費者対応があるのです。物流サービスの一環として「代引き」の仕事もあります。つまり宅配業務は他の単純な輸送業務とは別の仕事と考えた方がよさそうです。
 
 宅配事業者によってはセールスドライバーと称し、いろいろなものを行った先で売らせるようにしています。もう一つの難しさはお中元、お歳暮といった季節的波動をもたらす要因です。海外ではクリスマスシーズンの物流がこれにあたります。こういった難しさを克服して実行していることが他業者を寄せ付けない要因といえそうです。しかしこれがネックとなって仕事がうまく回らないことがあることも注目が必要です。
 
 次回は、再配達についてです。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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