社員の意識改善と物流改善

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1. 改善活動のスタート

SCM
 「全社で物流改善を推進しよう」このようにトップが意気込んで改善の取り組みをスタートすることがあります。まずはトップの意気込みはよいのですが、実際の改善は順調に進むでしょうか。何事も同様なのですが、「なぜその行為を行う必要があるのか」についてしっかりと社員に伝達しなければ改善活動はスタートしません。仮にスタートしたとしても間違った方向に向かう危険性をはらんでいます。よく「やらされ感」という言葉を耳にすることがあります。これは自ら進んで行動しようといった積極的なものではなく、どちらかというと「いやいやながら」やっているという行動だと思います。なぜこの「やらされ感」が出てきてしまうのでしょうか。それはトップの思いの伝え方にあるのではないかと思います。会社経営が危機的状況にあるため、社員全員が危機打開のために行動すべき、という話はよくあることです。しかし概して経営者が持つほど一般社員は危機感を持っていません。この社員の危機感の欠如がしだいに会社という船を浸水させ、徐々に沈んでいく方向に向かわせてしまうのです。まずはどのようにしてトップの思いを伝えるかについて考えていきましょう。
 
 会社トップはできるだけ現場を回り、会社の状況を丁寧に説明する必要があります。経営側はこういった努力をする、だから現場ではこういった行動を取って欲しいという自らの考えを伝えるのです。また、なぜ今、物流改善なのかについても伝える必要があります。たとえば工場では生産ラインの改善は何十年も前から永続的に行ってきて最近ネタが細ってきた。だから新たな視点での改善が必要、とか世間の水準に比べると当社の物流コストは高いから、とか何かしらの理由があるはずです。現場改善を実施しようとすると、現場の大半の人は今の仕事のやり方を守ろうとします。現状を変化させることに賛成する人は少数派です。だからこそ改善の必要性について最初にしっかりと行っておく必要があるのです。
 

2. 改善活動と現場のモチベーション

 現場の人たちが現状を変えたがらない理由の一つに「今やっていることがベスト」だという思いがあります。長年仕事をやって来た過程でいろいろと改善を織り込んできたという思いがあるはずです。そこでそれを鼻から全面否定することは危険です。現場のモチベーション低下を招けば物流品質不良につながることも考えられるからです。しかしだからと言ってそのままにしておくことも問題です。何がどのように問題なのかを明確にして現場に説明していく必要があります。まずは現場リーダーにきちんと説明し、改善の必要性について納得してもらう必要があります。
 
 現場と話をしていると、「忙しくて改善を行う時間が無い」という言葉が出てきます。これは半分は真実で半分は言い訳のようなところがありそうです。たとえば改善のために人を投入して欲しい、という要望を出すリーダーがいます。ではその通りに人を投入したら改善が進むかというとそうでもないケースが多いのです。まずは今できることからスタートすることが一番よいと思います。フォークリフトの汚れをとる、床の清掃を行う、今日の出来高を表示する、こういった現場として当たり前のことから始めるのです。もしこういったことに抵抗するリーダーであればそれは職務放棄と言わざるを得ません。
 
 そして現場サイドに立ってものを言うとすれば、まず自分たちでできることを徹底的にやってみることです。1日30分ずつでもよいので5S活動を進める、月に1回時間をとって簡単な改善を実行してみる、勉強会に参加して自分たちの職場の改善すべきところを明確にする、こういったことを着実に行うのです。そしてもうここから先は自分たちだけの力では出来ないというレベルまで到達させ、そこで先ほどのような要望を出せばよいのです。ここから先は大掛かりなレイアウト変更が必要になるので、技術部門の力を借りたい、とか調達品の在庫が多すぎて余分な工数がかかるので購買部に改善をして欲しいとか発信をするのです。
 

3. 目標とコミットメント

 物流改善を進める際に社員の意識を変えていくことが必要になることがわかります。トップの思いが伝わらなければ末端のスタッフは納得して物流改善に取り組むことはできません。だからこそトップマネジメントは強い決意が求められるのです。改善するということを目標にするという表現では強い意志が伝わりますでしょうか。多分この表現では弱いと思います。トップマネジメントは目標よりも一歩突っ込んだ表現でいくべきです。これにふさわしい表現が「コミットメント」です。コミットメントは必ず成し遂げるべき約束のことを指します。これを達成できなかったらそれ...

1. 改善活動のスタート

SCM
 「全社で物流改善を推進しよう」このようにトップが意気込んで改善の取り組みをスタートすることがあります。まずはトップの意気込みはよいのですが、実際の改善は順調に進むでしょうか。何事も同様なのですが、「なぜその行為を行う必要があるのか」についてしっかりと社員に伝達しなければ改善活動はスタートしません。仮にスタートしたとしても間違った方向に向かう危険性をはらんでいます。よく「やらされ感」という言葉を耳にすることがあります。これは自ら進んで行動しようといった積極的なものではなく、どちらかというと「いやいやながら」やっているという行動だと思います。なぜこの「やらされ感」が出てきてしまうのでしょうか。それはトップの思いの伝え方にあるのではないかと思います。会社経営が危機的状況にあるため、社員全員が危機打開のために行動すべき、という話はよくあることです。しかし概して経営者が持つほど一般社員は危機感を持っていません。この社員の危機感の欠如がしだいに会社という船を浸水させ、徐々に沈んでいく方向に向かわせてしまうのです。まずはどのようにしてトップの思いを伝えるかについて考えていきましょう。
 
 会社トップはできるだけ現場を回り、会社の状況を丁寧に説明する必要があります。経営側はこういった努力をする、だから現場ではこういった行動を取って欲しいという自らの考えを伝えるのです。また、なぜ今、物流改善なのかについても伝える必要があります。たとえば工場では生産ラインの改善は何十年も前から永続的に行ってきて最近ネタが細ってきた。だから新たな視点での改善が必要、とか世間の水準に比べると当社の物流コストは高いから、とか何かしらの理由があるはずです。現場改善を実施しようとすると、現場の大半の人は今の仕事のやり方を守ろうとします。現状を変化させることに賛成する人は少数派です。だからこそ改善の必要性について最初にしっかりと行っておく必要があるのです。
 

2. 改善活動と現場のモチベーション

 現場の人たちが現状を変えたがらない理由の一つに「今やっていることがベスト」だという思いがあります。長年仕事をやって来た過程でいろいろと改善を織り込んできたという思いがあるはずです。そこでそれを鼻から全面否定することは危険です。現場のモチベーション低下を招けば物流品質不良につながることも考えられるからです。しかしだからと言ってそのままにしておくことも問題です。何がどのように問題なのかを明確にして現場に説明していく必要があります。まずは現場リーダーにきちんと説明し、改善の必要性について納得してもらう必要があります。
 
 現場と話をしていると、「忙しくて改善を行う時間が無い」という言葉が出てきます。これは半分は真実で半分は言い訳のようなところがありそうです。たとえば改善のために人を投入して欲しい、という要望を出すリーダーがいます。ではその通りに人を投入したら改善が進むかというとそうでもないケースが多いのです。まずは今できることからスタートすることが一番よいと思います。フォークリフトの汚れをとる、床の清掃を行う、今日の出来高を表示する、こういった現場として当たり前のことから始めるのです。もしこういったことに抵抗するリーダーであればそれは職務放棄と言わざるを得ません。
 
 そして現場サイドに立ってものを言うとすれば、まず自分たちでできることを徹底的にやってみることです。1日30分ずつでもよいので5S活動を進める、月に1回時間をとって簡単な改善を実行してみる、勉強会に参加して自分たちの職場の改善すべきところを明確にする、こういったことを着実に行うのです。そしてもうここから先は自分たちだけの力では出来ないというレベルまで到達させ、そこで先ほどのような要望を出せばよいのです。ここから先は大掛かりなレイアウト変更が必要になるので、技術部門の力を借りたい、とか調達品の在庫が多すぎて余分な工数がかかるので購買部に改善をして欲しいとか発信をするのです。
 

3. 目標とコミットメント

 物流改善を進める際に社員の意識を変えていくことが必要になることがわかります。トップの思いが伝わらなければ末端のスタッフは納得して物流改善に取り組むことはできません。だからこそトップマネジメントは強い決意が求められるのです。改善するということを目標にするという表現では強い意志が伝わりますでしょうか。多分この表現では弱いと思います。トップマネジメントは目標よりも一歩突っ込んだ表現でいくべきです。これにふさわしい表現が「コミットメント」です。コミットメントは必ず成し遂げるべき約束のことを指します。これを達成できなかったらそれなりの責任を取ることは当然と言えます。
 
 目標と言う言葉の裏には「達成できないかもしれない」という気持ちが含まれているような気がしてなりません。もちろん、そうではない会社もあるかもしれませんが、日本の会社では約束を守らなくても責任を取らない風土がありそうです。そこで、経営者は経営者としてのコミットメントを持つ。そして現場は現場なりのコミットメントを持つ。このコミットメントはどんなことがあっても死守するくらいの決めごとで進めるべきでしょう。もしコミットメントが達成できなければ賞与は減額するくらいのことをやらないと、真剣になりません。物流改善をコスト5%削減と決めたらそれを必ず達成し、未達の場合はそれなりのペナルティがあるくらいでちょうどよいのではないでしょうか。トップのコミットメントの数字は順次下にブレークダウンされていきます。現場に落とされた数値は現場監督者が責任を負うとともに、スタッフ全員がそれぞれ責任を負うコミットメントを持つようにしましょう。正社員もパートもアルバイトも皆一緒です。それぞれの職位に見合ったコミットメントを掲げて改善活動に拍車をかけていきましょう。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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