荷姿の目的とは

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SCH

1. 物流最重要機能としての荷姿

 物流でも最も重要とされる機能、それが「荷姿機能」です。なぜ最重要なのでしょうか。それはその影響がいろいろなところに及ぶからです。荷姿の収納効率を向上させることで一般的に輸送効率が向上します。同様に保管効率も向上します。なぜならば一つの荷姿に入る数量が向上することで、箱数を減らすことができるからです。荷姿は包装と呼ばれたり、パッケージングと呼ばれたりもします。特に最終消費者にまで行く包装を商業包装と呼びます。
 
 例えば化粧品のパッケージを見てみましょう。化粧箱と呼ばれる綺麗な箱に商品である口紅が入っています。消費者は商品を選択するときに実商品もそうですが、それ以上にパッケージングの見た目も気にします。つまりそのパッケージ自体がバリューだといえます。化粧品のように比較的高額な商品ほど、売り場に並べられた時の見栄えも重要になってきます。一方でパソコンやテレビのような家電製品ではどうでしょうか。このような機能製品は売り場では裸で陳列されています。使う状態で置かれていることで、消費者は使いやすさを確認することができます。併せて商品自体の見た目も確認できるのです。そこでそのパッケージングはというと、段ボールに入れられており、化粧品のような箱の見た目はバリューにはなっていません。
 
 消費者にとってみると家電製品の段ボールは邪魔なごみと判断され、一般的には設置後に捨てられる運命にあります。パッケージング自体がバリューになるものを除き、ほとんどの荷姿が同じ運命をたどります。つまり消費者にとっては不要物であり、その目的は運搬時や保管時の品質維持のためにあると考えられます。では企業間で使われる荷姿はどうでしょうか。どこかの工場で作られた部品が別の会社の工場で使われることがあります。その時に部品は箱に入れられ荷姿になります。それは工業包装と呼ばれます。この工業包装には見た目重視のようなバリューはありません。いかにシンプルで低コスト、ゴミが発生しないなどといった要素が大切になります。ではその目的はどこにあるのでしょうか。
 

2. 荷姿の恩恵を被るのは誰か

 荷姿は何のためにあるのでしょうか。このような疑問を持つことが重要です。今までは当たり前のように発生しているので気にかけていないだけですから。たとえば得意先に製品を届けるための荷姿。この目的は何でしょうか。これは「自社内で保管、運搬するため」と「得意先まで輸送するため」です。この荷姿の場合、それがないと困るのは自社なのです。つまり誰のための荷姿かといえば自社のためということになります。ですから、荷姿にかかる費用は自社で負担するということが自然な考え方です。ではこの製品を得意先が引き取りに来る場合はどうでしょうか。自社内運搬や保管では自社のためといえますが、輸送の主体は得意先になります。したがいまして、輸送に必要な荷姿は得意先のためといえます。
 
 では工場の中を考えてみましょう。工場の中で製造工程に部品を供給するときの荷姿はいかがでしょうか。この荷姿の恩恵を被るのは誰か、です。その人は「工場内物流」です。なぜなら運搬途上で部品にダメージを与えないために荷姿が必要となるからです。保管時点ではどうでしょう。それはその在庫が誰のものかによって変わってきます。サプライヤーが未納を繰り返すために持っている安全在庫であれば、購買のため、ということになります。同一工程で複数製品を生産するために段取り替えが発生する場合はどうでしょう。当然のことながらロット在庫が発生し、それを保管する必要があります。
 
 その場合はロット在庫をコントロールする生産部門のための荷姿だといえます。在庫を発生させている部門のための荷姿が保管用の荷姿だと考えればよいでしょう。荷姿には容器購入費やメンテナンス費がかかります。そこでこの費用はその荷姿の恩恵を被る部署に負担してもらうことがリーズナブルでしょう。一般的には荷姿は物流の一部だから、という理由で荷姿コストを物流部門に負わせているパターンが大半だと思います。でも正確には上記の通り「荷姿の恩恵を被る」部署が負担すべきです。勝手に大量生産をしながらその入れ物である容器費用を負担しないことは無責任ではないでしょうか
 

3. 輸送用荷姿は戦略的に

 工場の中で供給用に使う荷姿は、中身を入れすぎないようにしなければなりません。物流効率から見るとたくさんの部品を一度に運べることがベターですが、あくまでも供給先であるお客様は生産工程です。生産工程ではあまりにもぎっしりと詰め込まれた荷姿だと中身を取り出す際に「やりにくさ」が発生してしまいます。そこで自分たちが運搬上の品質を保護する目的である荷姿は、お客様の要望を優先し、「取り出しやすい」荷姿とする必要があります。ではこの運搬距離が長距離に及ぶ場合はいかがでしょうか。長距離運搬は一般的にトラックや鉄道、船舶で行います。その場合はやはり物流コストが最小になる荷姿を考えなければなりません。つまりできるだけ一度に多くのものを運べることが理想となり、それに適した荷姿が求められます。
 
 ただ単純に今目の前にある箱にぎゅうぎゅう詰めにするこ...
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1. 物流最重要機能としての荷姿

 物流でも最も重要とされる機能、それが「荷姿機能」です。なぜ最重要なのでしょうか。それはその影響がいろいろなところに及ぶからです。荷姿の収納効率を向上させることで一般的に輸送効率が向上します。同様に保管効率も向上します。なぜならば一つの荷姿に入る数量が向上することで、箱数を減らすことができるからです。荷姿は包装と呼ばれたり、パッケージングと呼ばれたりもします。特に最終消費者にまで行く包装を商業包装と呼びます。
 
 例えば化粧品のパッケージを見てみましょう。化粧箱と呼ばれる綺麗な箱に商品である口紅が入っています。消費者は商品を選択するときに実商品もそうですが、それ以上にパッケージングの見た目も気にします。つまりそのパッケージ自体がバリューだといえます。化粧品のように比較的高額な商品ほど、売り場に並べられた時の見栄えも重要になってきます。一方でパソコンやテレビのような家電製品ではどうでしょうか。このような機能製品は売り場では裸で陳列されています。使う状態で置かれていることで、消費者は使いやすさを確認することができます。併せて商品自体の見た目も確認できるのです。そこでそのパッケージングはというと、段ボールに入れられており、化粧品のような箱の見た目はバリューにはなっていません。
 
 消費者にとってみると家電製品の段ボールは邪魔なごみと判断され、一般的には設置後に捨てられる運命にあります。パッケージング自体がバリューになるものを除き、ほとんどの荷姿が同じ運命をたどります。つまり消費者にとっては不要物であり、その目的は運搬時や保管時の品質維持のためにあると考えられます。では企業間で使われる荷姿はどうでしょうか。どこかの工場で作られた部品が別の会社の工場で使われることがあります。その時に部品は箱に入れられ荷姿になります。それは工業包装と呼ばれます。この工業包装には見た目重視のようなバリューはありません。いかにシンプルで低コスト、ゴミが発生しないなどといった要素が大切になります。ではその目的はどこにあるのでしょうか。
 

2. 荷姿の恩恵を被るのは誰か

 荷姿は何のためにあるのでしょうか。このような疑問を持つことが重要です。今までは当たり前のように発生しているので気にかけていないだけですから。たとえば得意先に製品を届けるための荷姿。この目的は何でしょうか。これは「自社内で保管、運搬するため」と「得意先まで輸送するため」です。この荷姿の場合、それがないと困るのは自社なのです。つまり誰のための荷姿かといえば自社のためということになります。ですから、荷姿にかかる費用は自社で負担するということが自然な考え方です。ではこの製品を得意先が引き取りに来る場合はどうでしょうか。自社内運搬や保管では自社のためといえますが、輸送の主体は得意先になります。したがいまして、輸送に必要な荷姿は得意先のためといえます。
 
 では工場の中を考えてみましょう。工場の中で製造工程に部品を供給するときの荷姿はいかがでしょうか。この荷姿の恩恵を被るのは誰か、です。その人は「工場内物流」です。なぜなら運搬途上で部品にダメージを与えないために荷姿が必要となるからです。保管時点ではどうでしょう。それはその在庫が誰のものかによって変わってきます。サプライヤーが未納を繰り返すために持っている安全在庫であれば、購買のため、ということになります。同一工程で複数製品を生産するために段取り替えが発生する場合はどうでしょう。当然のことながらロット在庫が発生し、それを保管する必要があります。
 
 その場合はロット在庫をコントロールする生産部門のための荷姿だといえます。在庫を発生させている部門のための荷姿が保管用の荷姿だと考えればよいでしょう。荷姿には容器購入費やメンテナンス費がかかります。そこでこの費用はその荷姿の恩恵を被る部署に負担してもらうことがリーズナブルでしょう。一般的には荷姿は物流の一部だから、という理由で荷姿コストを物流部門に負わせているパターンが大半だと思います。でも正確には上記の通り「荷姿の恩恵を被る」部署が負担すべきです。勝手に大量生産をしながらその入れ物である容器費用を負担しないことは無責任ではないでしょうか
 

3. 輸送用荷姿は戦略的に

 工場の中で供給用に使う荷姿は、中身を入れすぎないようにしなければなりません。物流効率から見るとたくさんの部品を一度に運べることがベターですが、あくまでも供給先であるお客様は生産工程です。生産工程ではあまりにもぎっしりと詰め込まれた荷姿だと中身を取り出す際に「やりにくさ」が発生してしまいます。そこで自分たちが運搬上の品質を保護する目的である荷姿は、お客様の要望を優先し、「取り出しやすい」荷姿とする必要があります。ではこの運搬距離が長距離に及ぶ場合はいかがでしょうか。長距離運搬は一般的にトラックや鉄道、船舶で行います。その場合はやはり物流コストが最小になる荷姿を考えなければなりません。つまりできるだけ一度に多くのものを運べることが理想となり、それに適した荷姿が求められます。
 
 ただ単純に今目の前にある箱にぎゅうぎゅう詰めにすることではありません。むしろもう少し戦略的に実施していく必要があります。ではどのような戦略が求められるのでしょうか。よく行われていることは、一番よく利用する輸送手段をベースに荷姿を考えることです。たとえば海上コンテナを使って輸出をするケースで考えてみましょう。その場合、40フィートコンテナか20フィートコンテナを使うことになります。40フィートコンテナを使う場合、そのコンテナ内にぴったりとはまる荷姿を考えます。つまりコンテナを縦に横に「輪切り」にしていった際にできる直方体を容器とするのです。こうすることで、原則として満載で運べば無条件でデッドスペースが無くなることになります。では皆さんが日ごろ使っているトラックではこのようになっていますでしょうか。
 
 10トントラックは1.1系パレットとは相性が悪いため、いっぱいに積んでも必ずデッドスペースができてしまいます。ですから国際物流に限らず、国内物流においても同じ考え方をすることが必要になるのです。これが荷姿戦略だということになります。複数の容器があったとしても、お互い積み重ねが可能となることも忘れてはなりません。もし輸送コストを管理する立場にいたとしたら、あなたのための荷姿です。ぜひ輸送時にロスの出ない荷姿を考えていきましょう。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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