水準評価の必要性を考える

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SCM 

1. 仕事と競争力

 皆さんは自社の物流について良いとか悪いとかの判断は何に基づいて実施していますでしょうか。よく会社のお偉いさんが現場に来て評価を行います。また顧客が訪問され、現場についての印象について話をされることがあります。これらは多分に主観的な判断であると思います。何かしらの基準があってその基準とのギャップを認識して話をしているわけではないでしょう。この「何かしらの基準」がないことが物流の弱みでもあるのです。この基準がないということは、会社として目指すべき目標値も曖昧だということになります。できれば物流業界として物流の出来についての水準評価をしたいところです。売上だとか利益であればその絶対値が存在するため、それを従業員数で割れば一人あたりの売上とか利益になります。
 
 つまり経営指標としては一定の数値を把握することができ、会社間の比較は可能です。しかしこれが現場レベルになってくるとなかなかよりどころとなる数値を押さえることはできません。昨年に比べてどうなったとか、先月に比べると何%向上したとかいった傾向地は把握している会社もあるのではないでしょうか。最低限、このトレンドだけは把握し、見える化しておきたいところです。これを倉庫の中で表示しておけば、その現場が改善方向にあるのか否かはわかります。もう一歩突っ込んでみると、倉庫の中の職場ごとの比較ができるようになります。たとえば一人一日当たり運搬量をA課とB課で比較するようなことはできるのではないでしょうか。これを指標を統一するとともに会社全体で比較できればあくまでも会社内ではありますが、水準評価が可能となります。
 
 この水準評価はなぜ必要なのでしょうか。それは自分たちの今のレベルが競争力があるのかどうかを認識するためです。自己満足で仕事をしていても、それが競争力がないのであれば意味がありません
 

2. 業界の基準

 自社の特定倉庫の中で水準比較を行いましょう。前項のA課とB課での比較がこれにあたります。次に自社の異なる倉庫間で比較ができるようにしましょう。そして、その次には子会社などの近い会社との間で比較するなど、少しずつ比較の対象を広げていきます。このようにして徐々に水準評価を根付かせていき、自分たちの実力の「レベル」を把握していくのです。そうすることで今の競争力が十分なのか否かを認識するのです。しかし、自社グループだけで水準比較するだけでは十分とは言えません。本来であれば他社ベンチマークを実施していきたいところです。
 
 皆さんの会社ではピッキング作業の前提はどのような作業でしょうか。ピッキングエリアを歩き回りながらピックしていくことがほとんどだとは思いますが、製品1個ピックする時の平均歩行数はどれくらいでしょうか。たとえばこのピッキング作業一つをとってみても、また同じ製品をピックするにあたっても会社によって「時間値」は異なってくることと思われます。では、もしこのピッキング作業について製品1個あたり歩行は4歩、それ以外は製品とりおきと作業指示書出力だけが作業だと決めたらどうでしょうか。
 
 この基準に対して自社は「こんな余分なことをやっている」とか「レイアウトが悪く10歩要している」とかいった問題点が見えてくるのではないでしょうか。これが一つの目安であり、業界の基準にもなるのです。物流業界で今後必要と思われるのがこういったスタンダードだといえるのです
 

3. 基準との乖離

 水準評価を行うにはこの一定の基準があると良いと思います。その基準に対して自分たちはこれだけ優れているあるいは劣っている、と判断すべきではないでしょうか。できれば基準を作る際にはそのレベルは「あるべき姿」とか「目指す姿」に近いものとすべきでしょう。つまりその作業には異常値やロスを含めないことがポイントになるのです。前項のピッキングの例でいえば次のようになります。
 
・ 歩行は4歩
・ 製品の持ち替えは発生しない
・ ピッキング品の開梱は行わない
・ ピッキング時に迷いは発生しない
・ ピッキング品のショート(品切れ)は発生しない
 
 このように理想に近い形を基準にしておけば、それに向かって改善が進むことが考えられます。そしてこのような基準をいろいろな作業で設定し...
SCM 

1. 仕事と競争力

 皆さんは自社の物流について良いとか悪いとかの判断は何に基づいて実施していますでしょうか。よく会社のお偉いさんが現場に来て評価を行います。また顧客が訪問され、現場についての印象について話をされることがあります。これらは多分に主観的な判断であると思います。何かしらの基準があってその基準とのギャップを認識して話をしているわけではないでしょう。この「何かしらの基準」がないことが物流の弱みでもあるのです。この基準がないということは、会社として目指すべき目標値も曖昧だということになります。できれば物流業界として物流の出来についての水準評価をしたいところです。売上だとか利益であればその絶対値が存在するため、それを従業員数で割れば一人あたりの売上とか利益になります。
 
 つまり経営指標としては一定の数値を把握することができ、会社間の比較は可能です。しかしこれが現場レベルになってくるとなかなかよりどころとなる数値を押さえることはできません。昨年に比べてどうなったとか、先月に比べると何%向上したとかいった傾向地は把握している会社もあるのではないでしょうか。最低限、このトレンドだけは把握し、見える化しておきたいところです。これを倉庫の中で表示しておけば、その現場が改善方向にあるのか否かはわかります。もう一歩突っ込んでみると、倉庫の中の職場ごとの比較ができるようになります。たとえば一人一日当たり運搬量をA課とB課で比較するようなことはできるのではないでしょうか。これを指標を統一するとともに会社全体で比較できればあくまでも会社内ではありますが、水準評価が可能となります。
 
 この水準評価はなぜ必要なのでしょうか。それは自分たちの今のレベルが競争力があるのかどうかを認識するためです。自己満足で仕事をしていても、それが競争力がないのであれば意味がありません
 

2. 業界の基準

 自社の特定倉庫の中で水準比較を行いましょう。前項のA課とB課での比較がこれにあたります。次に自社の異なる倉庫間で比較ができるようにしましょう。そして、その次には子会社などの近い会社との間で比較するなど、少しずつ比較の対象を広げていきます。このようにして徐々に水準評価を根付かせていき、自分たちの実力の「レベル」を把握していくのです。そうすることで今の競争力が十分なのか否かを認識するのです。しかし、自社グループだけで水準比較するだけでは十分とは言えません。本来であれば他社ベンチマークを実施していきたいところです。
 
 皆さんの会社ではピッキング作業の前提はどのような作業でしょうか。ピッキングエリアを歩き回りながらピックしていくことがほとんどだとは思いますが、製品1個ピックする時の平均歩行数はどれくらいでしょうか。たとえばこのピッキング作業一つをとってみても、また同じ製品をピックするにあたっても会社によって「時間値」は異なってくることと思われます。では、もしこのピッキング作業について製品1個あたり歩行は4歩、それ以外は製品とりおきと作業指示書出力だけが作業だと決めたらどうでしょうか。
 
 この基準に対して自社は「こんな余分なことをやっている」とか「レイアウトが悪く10歩要している」とかいった問題点が見えてくるのではないでしょうか。これが一つの目安であり、業界の基準にもなるのです。物流業界で今後必要と思われるのがこういったスタンダードだといえるのです
 

3. 基準との乖離

 水準評価を行うにはこの一定の基準があると良いと思います。その基準に対して自分たちはこれだけ優れているあるいは劣っている、と判断すべきではないでしょうか。できれば基準を作る際にはそのレベルは「あるべき姿」とか「目指す姿」に近いものとすべきでしょう。つまりその作業には異常値やロスを含めないことがポイントになるのです。前項のピッキングの例でいえば次のようになります。
 
・ 歩行は4歩
・ 製品の持ち替えは発生しない
・ ピッキング品の開梱は行わない
・ ピッキング時に迷いは発生しない
・ ピッキング品のショート(品切れ)は発生しない
 
 このように理想に近い形を基準にしておけば、それに向かって改善が進むことが考えられます。そしてこのような基準をいろいろな作業で設定し、業界として共通基準にしていけばよいのではないでしょうか。各社はこの基準に対する「乖離度」を認識するようにします。ある会社は基準の1.5倍の時間がかかっているかもしれません。別の会社は2倍かかっているかもしれません。このようなデータを業界で集約することで、自社の水準がどれくらいに位置するのかを把握することができるようになるのです。
 
 実際にJILSが売上高物流コスト比率について毎年アンケートをとって集約しています。そしてこの数値が自社のレベルを判断する一つの目安になっています。データの集約の仕方はこのやり方と同様にやっていけばよいと思いますが、このデータはあくまでも売上高に対する物流コストの比率に過ぎず、「あるべき姿」とのギャップが把握できません。つまりその値が良いのか悪いのかは判断しづらいのです。そこでやはり一定の基準に対して良いのか悪いのかがわかるようにすることは非常に重要になってくるのです。まずは社内だけでもこういった水準判断のための仕組みを構築してみてはいかがかと思います。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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