1. 物流作業速度の違い
日本の産業の内、グローバルで競争力のあるものはそれほど多くありません。競争力に優れているという産業は製造業の一部です。物流は残念ながら競争力がない産業に区分されると思います。しかし、悲観することはありません。私たちが努力することで競争力をつけることは十分に可能だからです。私たち物流業は改善の余地があるのに、それに気づいていないだけだと思われます。なぜなら、物流業に携わる人たちは他の産業を見たことがない可能性が大きいからです。
製造業の中にもいろいろな物流作業があります。企業によっては物流事業者よりずっと規模の大きい物流を行っているケースもあります。製造業の中の物流は、物流業のそれよりも改善が進んでいます。それはなぜでしょうか。それは製造も物流の同じ建屋の中にいるからです。製造現場が常に改善を繰り返すことに刺激を受けた物流も同様のことを行っているわけです。会社としても製造だけではなく、物流にも効率化目標を課していると思われます。そして、それは自然な流れであると考えられます。そうした改善を行うことが当たり前という企業文化を構築していきたいものです。まず物流業としては製造業の現場を見に行くとよいでしょう。
製造業の現場では、さまざまな違いに気づくことでしょう。意外とサプライズな点があるかもしれません。特に大きな違いとして作業速度が挙げられます。標準時間に基づいて作業を行っている製造業と、作業者にペースを任せ、マイペースで作業を行っている物流業とでは当然、大きな差が出てくるのです。「同じピッキング作業」を行っても、4倍以上の差があることに驚くことでしょう。物流業としては驚いているばかりではよいわけがありません。同じ人間がやることですから、これに追い付かなければなりません。そうでなければ生産性が4倍違うのですから、給与格差を設けなければならないかもしれません。その他に見えてくる違いについて引き続き考えていきましょう。
2. 管理技術を学ぶ
製造業は一般的に標準化が進んでいます。なぜならそれを怠れば製品品質に影響を与えてしまうからです。標準化で手を抜くわけにはいかないのです。この状況は物流業でも原則として同様なのですが、物流の場合には仕事がそれほど複雑ではなく、未習熟作業者でも一定のレベルまでできてしまう傾向があります。しかし得意先が厳しい荷主であれば、物流業でもきちんとした標準作業を確立して仕事をしています。このような例は別としても、やはり標準化は実施したいものです。
どのような手順で作業を実施するのか、物流品質を左右する急所はどこなのか、その作業をどれくらいの時間でこなしたらよいのかは定めておく必要があります。この標準化についても製造業に学ぶところは大です。標準作業に定められていないことは原則として実施することが許されません。物流業では入ってきたばかりのパートさんに、簡単な説明をしただけで、あとはお任せ、となっているケースが多々あります。これでは均一の物流品質をアウトプットすることはできないでしょう。
製造業では固有技術以外に管理技術というものを保有しています。この管理技術、たとえば現場管理を例にとるとわかりやすいかもしれません。今月の品質不良の低減目標を掲げ、それを管理グラフ化して現場に掲示しています。現場作業者は常に掲示されている管理ボードの前を通りますから、今の職場の品質状況が頭にインプットされるのです。この活動の手法を管理技術と呼びます。これはSQDCMすべての領域に当てはめることができます。管理グラフ化することで、一目で今の状態が正常なのか異常なのかがわかるのです。このような管理技術に基づく活動といったしくみを物流業は導入していきたいものです。
5Sについても製造業に学ぶところが大きいと思います。物流は本来5Sがきちんとできている上に成り立っていると考えるべきです。しかし、物の置き場もあいまい、表示類もつけられていない、保管製品はほこりだらけ、といった状況に陥っていませんでしょうか。製造業の工場を訪問し、ものの置き方や床の線の引き方、表示のつけ方などをぜひ学んできましょう。それをまねするだけでも会社は大いに改善することでしょう。
3. 物流人財育成のしくみづくり
皆さんの会社ではどのような人材育成をされていますでしょうか。仕事の習熟度に応じて仕事ランクを設け、それが人事制度へとつなげている会社もあるかもしれません。人がモチベーションを上げるためには、自分の成長が目に見えるようになっているとよいでしょう。そのために頑張って仕事の質を上げれば仕事ランクが上がり、その結果として給料が上がるといった仕組みをつくっておくとよいのではないでしょうか。
製造業では仕事ランクが明確になっています。そして、それぞれのランクごとに、何ができなければならないのかが決まっています。物流業は製造業に学び、最初にこの基準をつくることが望ましいでしょう。たとえば、仕事ランクを1~6の6つに設定したとしましょう。1は新入社員レベル、2は一つの領域についてだけ自分で仕事ができるレベル、といったように定義づけをしましょう。そして今の作業者をそれぞれどのランクのレベルに該当する...