物流の作業環境を整えるとは

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1. 物流倉庫には所番地を明記する

 物流倉庫では人の入れ替わりが激しく、その都度仕事を教え込む必要があります。そのためには標準作業を作成し、誰がやっても同じ結果が出るように準備することは当然のことです。物流倉庫では作業現場自体がわかりやすくなっているかどうかが重要です。製品置場を例にとって考えてみましょう。どこに製品が置かれているかがベテラン作業者以外でもすぐにわかることがポイントです。そのためには倉庫の中に「所番地」を明記する必要があります。製品を取り出す時に作業者は少なからず探す動作や迷いが発生しています。そこでまずはこれらが発生しない倉庫づくりを考えましょう。
 
 1階の8番地の上から3段目の左から6列目の間口には次のようなアドレスを明記します。
 
  「1-8-36」
  
 このような「意味ありコード」とすることがポイントです。脈絡のない番号をつけるとかえって作業者を迷わすことになります。そしてこの所番地を明記するとともに、ピッキング指示はこれを意識した出し方にします。つまり製品単位に指示を出すのではなく、所番地単位で出すのです。この方法を取ることで、作業者が動き回るゾーンが最小化されます。たとえば8番地と9番地を回って10番地で仕事が終わるような作業順番を意識した指示の出し方をします。所番地の最小単位は「製品」です。最小単位を複数の製品の置かれている場所でセットしてしまうと、その中で該当製品を探し出す手間がかかりますので。
 
 ちなみにピッキング作業者の「探し・迷い」はどれくらいあると思いますか。この比率は少なくとも10%程度は存在します。この動作を改善するだけでも生産性は10%以上向上するのです。ですから誰でも作業できるように物流現場の作業環境を改善することが大きな生産性向上につながるのです。この所番地は何も製品だけに限りません。物流倉庫では梱包資材置き場も明確にしておく必要があります。段ボールや緩衝材など、資材の置場も明確にし、その個々の資材単位に所番地を明記していきます。段ボールはちょっとしたサイズ違いで別物になりますので、ここでも迷いが発生しないように考えておく必要があります。
   

2. 製品コードの導入と間口の色分け

 物流で製品識別のキーになるものは何でしょうか。それは製品コードだと思います。一方でさまざまなメーカーの食品や日用品などを扱っている場合、製品コードが無いケースを多く見かけます。本来であれば業界として製品コードを統一し、それを製品包装に明記することが望ましいのですが、必ずしもそのような状態にはなっていません。その場合、その製品の入出庫を行う物流倉庫は苦労します。作業者は何を見て正しい製品かどうかを判断しているのでしょうか。
 
 多くの場合、その製品の固有名詞で判断しているのです。漢字とひらがな、カタカナ、場合によってはアルファベットの混在した名前を見て判断します。これでは作業者に対する負荷も高まりますし、間違いの原因ともなります。ですから物流倉庫で製品番号を整備し、それをバーコードとセットにして製品に貼付できるように考えてみることもありだと思います。
 
 図書館に行くと必ず分野別に固有コードがあり、それが本にラベリングされています。このイメージで、製品に固有コードを付けて行くことで判断が楽になるはずです。固有コードも複数桁数になります。多い場合は12桁、13桁になることでしょう。その時に今度はすべての桁を読まないと判断できないとまた負荷がかかります。例えば最後の一桁を見れば他の製品と識別ができるのであれば、その一桁だけ、文字を大きくするとか、文字の色を変えるとかする工夫も必要です。
 
 このような工夫を凝らすことで、誰でもできる作業環境が整備されます。新人は製品の識別のために箱の特徴や印字の色などを覚えることは大変です。容易化を通してすぐに作業ができる環境整備をすることが会社利益にもつながります。ぜひ固有コードの導入を進めてみましょう。
 
 次に倉庫内の色分けについてです。人間はモノを識別する際に「色」に反応することが多いと思います。ですからこの事実を使った環境整備も一つのやり方です。たとえば棚の間口の色を変えてみるということはいかがでしょうか。ピッキング指示リストは原則として所番地で指示します。この中に色の要素を入れてみるのです。少なくとも棚の何段目を示す数字は「色」で置き換えることができます。例えば上から1段目は「緑」、2段目は「黄色」、3段目は「赤」などです。色の工夫として、製品の色に合わせた間口の色にすることも一つの方法です。意外と色の違いはインパクトがありますので、それを倉庫に活用することは効果が大きいと思われます。
 

3. 人間工学的な視点

 作業者の方が迷ったり探したりすることのないように物流現場を整備していくことが重要です。そのためには物流職場の整備と共に仕事のしくみの整備が必要になるのです。この製品の梱包にはこの大きさの段ボール箱を使う、緩衝材はこの資材をこれだけ使う、こういった条件を整備し、作業者に教え込むことが望まれるのです。もっと仕事を簡単にしていきましょう。たとえば梱包作業台について考えてみましょう。
 
 まず作業台の大きさと高さについて。大きさは原則として統一しましょう。製品の大きさが極端に異なる場合は複...

1. 物流倉庫には所番地を明記する

 物流倉庫では人の入れ替わりが激しく、その都度仕事を教え込む必要があります。そのためには標準作業を作成し、誰がやっても同じ結果が出るように準備することは当然のことです。物流倉庫では作業現場自体がわかりやすくなっているかどうかが重要です。製品置場を例にとって考えてみましょう。どこに製品が置かれているかがベテラン作業者以外でもすぐにわかることがポイントです。そのためには倉庫の中に「所番地」を明記する必要があります。製品を取り出す時に作業者は少なからず探す動作や迷いが発生しています。そこでまずはこれらが発生しない倉庫づくりを考えましょう。
 
 1階の8番地の上から3段目の左から6列目の間口には次のようなアドレスを明記します。
 
  「1-8-36」
  
 このような「意味ありコード」とすることがポイントです。脈絡のない番号をつけるとかえって作業者を迷わすことになります。そしてこの所番地を明記するとともに、ピッキング指示はこれを意識した出し方にします。つまり製品単位に指示を出すのではなく、所番地単位で出すのです。この方法を取ることで、作業者が動き回るゾーンが最小化されます。たとえば8番地と9番地を回って10番地で仕事が終わるような作業順番を意識した指示の出し方をします。所番地の最小単位は「製品」です。最小単位を複数の製品の置かれている場所でセットしてしまうと、その中で該当製品を探し出す手間がかかりますので。
 
 ちなみにピッキング作業者の「探し・迷い」はどれくらいあると思いますか。この比率は少なくとも10%程度は存在します。この動作を改善するだけでも生産性は10%以上向上するのです。ですから誰でも作業できるように物流現場の作業環境を改善することが大きな生産性向上につながるのです。この所番地は何も製品だけに限りません。物流倉庫では梱包資材置き場も明確にしておく必要があります。段ボールや緩衝材など、資材の置場も明確にし、その個々の資材単位に所番地を明記していきます。段ボールはちょっとしたサイズ違いで別物になりますので、ここでも迷いが発生しないように考えておく必要があります。
   

2. 製品コードの導入と間口の色分け

 物流で製品識別のキーになるものは何でしょうか。それは製品コードだと思います。一方でさまざまなメーカーの食品や日用品などを扱っている場合、製品コードが無いケースを多く見かけます。本来であれば業界として製品コードを統一し、それを製品包装に明記することが望ましいのですが、必ずしもそのような状態にはなっていません。その場合、その製品の入出庫を行う物流倉庫は苦労します。作業者は何を見て正しい製品かどうかを判断しているのでしょうか。
 
 多くの場合、その製品の固有名詞で判断しているのです。漢字とひらがな、カタカナ、場合によってはアルファベットの混在した名前を見て判断します。これでは作業者に対する負荷も高まりますし、間違いの原因ともなります。ですから物流倉庫で製品番号を整備し、それをバーコードとセットにして製品に貼付できるように考えてみることもありだと思います。
 
 図書館に行くと必ず分野別に固有コードがあり、それが本にラベリングされています。このイメージで、製品に固有コードを付けて行くことで判断が楽になるはずです。固有コードも複数桁数になります。多い場合は12桁、13桁になることでしょう。その時に今度はすべての桁を読まないと判断できないとまた負荷がかかります。例えば最後の一桁を見れば他の製品と識別ができるのであれば、その一桁だけ、文字を大きくするとか、文字の色を変えるとかする工夫も必要です。
 
 このような工夫を凝らすことで、誰でもできる作業環境が整備されます。新人は製品の識別のために箱の特徴や印字の色などを覚えることは大変です。容易化を通してすぐに作業ができる環境整備をすることが会社利益にもつながります。ぜひ固有コードの導入を進めてみましょう。
 
 次に倉庫内の色分けについてです。人間はモノを識別する際に「色」に反応することが多いと思います。ですからこの事実を使った環境整備も一つのやり方です。たとえば棚の間口の色を変えてみるということはいかがでしょうか。ピッキング指示リストは原則として所番地で指示します。この中に色の要素を入れてみるのです。少なくとも棚の何段目を示す数字は「色」で置き換えることができます。例えば上から1段目は「緑」、2段目は「黄色」、3段目は「赤」などです。色の工夫として、製品の色に合わせた間口の色にすることも一つの方法です。意外と色の違いはインパクトがありますので、それを倉庫に活用することは効果が大きいと思われます。
 

3. 人間工学的な視点

 作業者の方が迷ったり探したりすることのないように物流現場を整備していくことが重要です。そのためには物流職場の整備と共に仕事のしくみの整備が必要になるのです。この製品の梱包にはこの大きさの段ボール箱を使う、緩衝材はこの資材をこれだけ使う、こういった条件を整備し、作業者に教え込むことが望まれるのです。もっと仕事を簡単にしていきましょう。たとえば梱包作業台について考えてみましょう。
 
 まず作業台の大きさと高さについて。大きさは原則として統一しましょう。製品の大きさが極端に異なる場合は複数種類も受けてもよいかもしれませんが、原則1種類です。作業台の高さは作業者の背丈に応じて変更できるようにしておくとよいでしょう。やはり高さが背丈に合っていないと疲れやすいと思います。誰でもできる作業環境には「人間工学的な視点」も必要です。人間はかがんだり伸び上がったりすることで疲労が蓄積します。
 
 床から重いものを持ち上げることは体に大きな負荷がかかることは皆さんも体感していることだと思います。体に負荷がかかる作業を洗い出し、それらを極力なくしていくことを考えましょう。これらの作業を「難作業」と位置づけ、それをつぶすのです。誰でもできるとは男性でも女性でも、高身長の方もそうでない方もという意味です。そしてもう一つは作業経験の長い方も短い方もできるという意味と解釈しましょう。
 
 よくこの仕事は男性でなければ無理だ、ベテランでないとこなせない、という会話が出ているかと思います。それを解消することが物流現場の生産性を上げることにつながるのです。文字の大きさも同様です。あまり細かい字だと高齢者にとっては「難作業」につながります。製品表示や棚の表示はこの点に注意することが望ましいでしょう。言葉を変えていえば「人にやさしい物流現場」を作ろうということです。作業者が楽をして仕事をできる方策を考えていきましょう。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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