米国への出願戦略を検討するには アメリカ特許法(その1)

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 2011年9月16日にアメリカ特許法の改正法が成立しました。この中で最も重要な改正事項の1つである先願主義への移行に関する改正法の発効日(2013年3月 16日)が近づいています。

 この新しく導入された先願主義には日本の制度とは異なるいくつかの特徴点があり、これまでとは異なった視点から米国への出願戦略を検討しなければなりません。

 ここでは、新しく導入される先願主義の特徴点を説明し、米国出願に際して日本の出願人として留意すべき事項、特に従来法から改正法へ移行する経過期間において留意すべき事項について解説したいと思います。

   まず、第1回目は新しく導入される先願主義の概要について説明したいと思います。

 

1.発効日

   先願主義に関する改正は2013年3月16日に発効します。しかしながら、2013年3月16日以降に出願されたすべての米国出願に改正法が適用されるわけではありません。詳しくは改めて説明しますが、次に述べる「有効出願日」が2013年3月16日よりも前であるかそれ以降であるかによって出願に適用される法律が決まります。

   したがって、2013年3月16日よりも前の日本出願に基づく優先権を主張して2013年3月16日以降に米国出願をする場合、米国出願のクレームと基礎出願との関係で適用される法律(従来法であるのか、改正法であるのか)が変わり得ることに注意が必要です。

 

2.有効出願日

   改正法では「有効出願日(effective filing date)」が新しく定義されました。この有効出願日は、改正法における様々な規定で基準日として用いられているので、改正法の内容を理解するためにはまずこの「有効出願日」を理解する必要があります。

   改正法100条(i)(1)によれば、パリ条約上の優先権を主張している場合には、そのクレームに係る発明に関して優先権の基礎とできる最先の出願の出願日が有効出願日となり、継続出願や分割出願等の場合は、そのクレームに係る発明に関して出願日の遡及効を得ることができる最先の出願の出願日が有効出願日となり、それ以外の場合は実際の出願日が有効出願日となります。

   この有効出願日はクレームごとに判断されますので、1つの出願の中でクレームによって有効出願日が異なるということもあり得ます。

 

 3.新しい米国特許法102条と103条

   これまで新規性と非自明性を規定していた米国特許法102条と103条は今回の改正により大きく書き換えられました。

   新しい102条は、大きく分けて、以下のように分類できます。

  1.新規性に関連する条項 i.新規性を定義する102条(a)(1)

 ii.その例外(グレースピリオド)を規定する102条(b)(1)

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 2011年9月16日にアメリカ特許法の改正法が成立しました。この中で最も重要な改正事項の1つである先願主義への移行に関する改正法の発効日(2013年3月 16日)が近づいています。

 この新しく導入された先願主義には日本の制度とは異なるいくつかの特徴点があり、これまでとは異なった視点から米国への出願戦略を検討しなければなりません。

 ここでは、新しく導入される先願主義の特徴点を説明し、米国出願に際して日本の出願人として留意すべき事項、特に従来法から改正法へ移行する経過期間において留意すべき事項について解説したいと思います。

   まず、第1回目は新しく導入される先願主義の概要について説明したいと思います。

 

1.発効日

   先願主義に関する改正は2013年3月16日に発効します。しかしながら、2013年3月16日以降に出願されたすべての米国出願に改正法が適用されるわけではありません。詳しくは改めて説明しますが、次に述べる「有効出願日」が2013年3月16日よりも前であるかそれ以降であるかによって出願に適用される法律が決まります。

   したがって、2013年3月16日よりも前の日本出願に基づく優先権を主張して2013年3月16日以降に米国出願をする場合、米国出願のクレームと基礎出願との関係で適用される法律(従来法であるのか、改正法であるのか)が変わり得ることに注意が必要です。

 

2.有効出願日

   改正法では「有効出願日(effective filing date)」が新しく定義されました。この有効出願日は、改正法における様々な規定で基準日として用いられているので、改正法の内容を理解するためにはまずこの「有効出願日」を理解する必要があります。

   改正法100条(i)(1)によれば、パリ条約上の優先権を主張している場合には、そのクレームに係る発明に関して優先権の基礎とできる最先の出願の出願日が有効出願日となり、継続出願や分割出願等の場合は、そのクレームに係る発明に関して出願日の遡及効を得ることができる最先の出願の出願日が有効出願日となり、それ以外の場合は実際の出願日が有効出願日となります。

   この有効出願日はクレームごとに判断されますので、1つの出願の中でクレームによって有効出願日が異なるということもあり得ます。

 

 3.新しい米国特許法102条と103条

   これまで新規性と非自明性を規定していた米国特許法102条と103条は今回の改正により大きく書き換えられました。

   新しい102条は、大きく分けて、以下のように分類できます。

  1.新規性に関連する条項 i.新規性を定義する102条(a)(1)

 ii.その例外(グレースピリオド)を規定する102条(b)(1)

   2.我が国の特許法第29条の2に類似する拡大先願に関連する条項 i.我が国の特許法第29条の2に類似する規定である102条(a)(2)

 ii.その例外を規定する102条(b)(2)

 iii.その例外を適用する際の共同研究契約の取り扱いを規定する102条(c)

 iv.102条(a)(2)において先行技術として認められる基準日を規定する102条(d)  

 また、新しい103条は、従来法103条(a)に対応する部分から構成され、従来法103条のその他の部分は削除されました。

   これらの新しい規定のうち日本の出願人にとって特に重要なものについて次回以降に説明したいと思います。

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この記事の著者

森 友宏

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