◆ブランドの権利を調べるときの考え方
~ブランドの権利は、商標、意匠、品種登録のどれを調べるのか~
「ある農産物をブランド化したいので他社の権利を調査したいが、商標を調べればいいのか、それとも種苗法に基づく品種登録を調べればいいのかが、分からない」という質問を受けました。知的財産権に関する法律には、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、種苗法、著作権法などがあります。
今回は「1.知的財産権の種類とそれぞれの制度の違い」で知的財産権の種類と違いを紹介し、「2.ブランドの要素を考えて調査対象の知的財産を決める」でブランドを構成する要素から調査対象の知的財産権を決める方法を紹介します。
1.知的財産権の種類とそれぞれの制度の違い
それぞれの知的財産権(特許、実用新案、意匠、商標、種苗、著作権)がどのようなものを対象にしたものかについて、簡単に説明します。(注:不正競争防止法、半導体集積回路の回路配置に関する法律等も知的財産権に含まれるとされていますが、説明は省略します。)
● 特許法、意匠法、商標法、種苗法、著作権法の条文を見てみましょう。
例えば特許法では、第一条に特許法の目的が書いてあります。
第一条 この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与
することを目的とする。
第二条第1項には、特許法の定義が書かれています。
第二条 、この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
つまり、特許で保護されるものは、発明(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)であることがわかります。
● 商標の場合は、
第一条 この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、
もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。
第二条 この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、
記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」とい
う。)で、次に掲げるものをいう。
1、業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
2、業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの
(前号に掲げるものを除く)
このように、知的財産権に関する条文には、法令の目的とそれぞれの知的財産で保護できるものが書かれています。特許、実用新案、商標、意匠で保護できるものを考えると、
・ 特許(特許法2条1項):発明(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)
・ 実用新案(実用新案法第1条):考案(物品の形状、構造又は組合せに係る考案で、自然法則を利用し
た技術的思想の創作(実用新案法第2条1項)に関するもの)
・ 商標(商標法2条1項):人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立
体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音、その他政令で定めるもの
・ 意匠(意匠法2条):物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色
彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるもの(物品の部分の形状、模様若しく
は色彩又はこれらの結合には、物品の操作(当該物品がその機能を発揮できる状態にするために行わ
れるものに限る。)の用に供される画像であつて、当該物品又はこれと一体として用いられる物品に
表示されるものが含まれる)意匠法の「視覚を通じて美感を起こさせるもの」は、「美しいと感じる
ものでなければならない」という意味ではなく、何かの美感を起こすものという程度です。なお、工
業デザインの場合でも、商品の特定の位置に同じ色をつける場合は位置商標に該当する可能性が考え
られるので注意してください。
・著作権(著作権法2条1項):文章、芸術作品、音楽、画像、動画や映画、コンピュータプログラム、
データベース等(著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音
楽の範囲に属するもの)なお、著作権は著作物の創作により権利が発生し、登録等の手続きが必要な
いという制度の事情から、権利等を調査することはできません。
・種苗法(種苗法1条):農林水産植物の新品種(農産物、林産物及び水産物の生産のために栽培される
種子植物、しだ類、せんたい類、多細胞の藻類その他政令で定める植物(種苗法2条1項))なお、育
成者権は収穫物や収穫物から生産された加工品(種苗法施行令第2条で定めるもの)にも及びます。
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