電子化されたユニットのFMEA解析 (その3)
2017-05-26
電気自動車をはじめ、電子化されたユニットのFMEA解析はどうするのか。簡易評価法では、電機・電子制御(ソフト組込み)ユニットを対象としたFMEAの進め方、実施事例を提案しています。世の中のほとんどのFMEA解説は、機構ユニット・機構部品の解析手順に偏っており、電子・電気、ソフトウエアに関するFMEAの解説は、殆ど見かけないのが実態です。近年、自動車をはじめ、殆どの製品がマイコン搭載の電子ユニットで構成されることからこの分野の製品のFMEA手順の確立が待ち望まれていました。
その1で解説した通り、ソフト組み込みユニットの故障モードは、システムの構造破壊と定義しました。
その2では、FMEAを実施する対象として、SEM:States Event Matrix(状態遷移マトリクス)をシステム構造として扱う事としました。
今回の解説では、「故障モード(システムの構造破壊)の正しい定義」について解説します。故障モードの定義ですが、機構部品の場合は、物理的な破壊、劣化と定義しました。例えば、破損、錆び、材料の化学変化などです。では、システムでは、破壊モードをどのように定義したらいいでしょうか。システムの故障モード(システムの構造破壊)の正しい定義こそ、電子ユニットのFMEAが正しく効果的に実施できるかどうかの最大のポイントなのです。では、事例で説明します。下図は、電熱器のブロック図を示しています。旧モデルに対して新モデルでは振動検出センサーを追加しました。この事によって、転倒した時、又はそれ以外で発煙事故など重大な事故が起きないかどうか、FMEAで検証します。
下図は、このヒータユニットのSEM(状態遷移図)です。この図を作成することによって、転倒時あるいは他の事象によって確実に異常検出ができ、ヒーターがオフするように設計を行います。
FMEAを実施する時には、S3,S4,S6の各部品,制御基板、ヒーターの故障モードを列挙します。(この図は簡素化しているので、すべての故障モードは列挙していません)制御基板50点の部品が搭載されており、組込みソフトが搭載されています。従って、50点の部品一点一点について故障モードは列挙せずに、SEMの構造破壊を故障モードとします。
本来、FMEAではすべての部品について故障モードを列挙し、製品に与える影響を列挙しなければなりません。しかし、ソフトウエア動作との組み合わせにおいて、一点一点の部品の故障モ...
ードがどのように作用するのか解析する作業は膨大な時間が掛かり、現実的ではありません。そこで、SEM(状態遷移図)を一つの構造として考え、SEMの構造破壊を故障モードとみなします。これは、モーター、センサー、あるいはPC、タブレットなど市販されている機能部品・ユニットを製品に組み込む場合にも同じように適用できると考えられます。このような考え方を基に、正しいFMEA実施手順を適用すると、転倒時やその他の異常発熱による発煙は起きない事が分かります。