QCサークル活動は、なぜ効果の出ないマンネリ化した活動になってしまうのでしょうか。多くの工場では、多品種少量、受注生産で忙しい状態が常態化しています。しかし、間接工数の増大、取引先の値下げ要求など、売り上げや利益は伸び悩んでいます。そんな中で、日常業務と別に片手間で行う小集団活動にどんな効果が期待できるでしょうか。
1. 工場の改善活動3つのパターン
工場の改善活動の種類は、ボトムアップの小集団活動、トップダウンで行う部門共通課題を解決するプロジェクト活動、社長の方針展開の3つです。すべての問題をQCサークル活動で解決するという考え方は間違いです。3つの活動はそれぞれ独立して行うのではなく、密接に関連しあっています。そして、改善活動は現場の一人一人が、身の回りの小さな問題を解決できる力を持っていなければ、工場としての大きな問題は解決できません。そこで、まず問題の大きさ別にランク分けを行います。
(1) 小集団で解決できる問題・・・・5S、ムリムラムダの排除、ヒヤリハットの排除
(2) 他部門と共同で解決する問題・・4M変更管理改善、慢性不良の低減
(3) 工場全体で解決する問題・・・・リードタイム短縮、在庫圧縮、生産効率アップ
その中で「小集団活動でどの範囲の問題を扱うのか」を明確に決める必要があります。なんでも小集団活動で解決しようと考えるのは所詮無理な相談です。
2. QCストーリーによる改善とは
QCストーリーは、もうおなじみのステップですが、小集団による改善活動は必ずしもこの通り進みません。その理由は、テーマを設定して活動を始めるのは、なかなか解決が難しい共通の問題や、工場全体の問題に限られるからです。このような問題は、職場の小集団の力だけでは解決しません。
3. 山積する課題
毎日生産に追われ、納期問題、人的ミスの発生、設計変更などを処理する中でさまざまな要因で思うように生産性が上がらない、むしろ下がっていく方向にあるなど、難しい問題が山積みとなっています。このような工場の問題を解決するには、プロジェクト組織を結成して各部署からメンバーを選んで改善活動を進めます。一般的には、次のような課題です。
・慢性不良の撲滅
・付加価値生産性向上
・リードタイム短縮
これらの活動は、トップのリーダーシップにより推進するものであり、小集団に丸投げしただけでは解決しません。
4. 小集団に何を期待するのか
そうすると、小集団によるQCサークル活動に何を期待したらいいでしょうか。生産活動に直接携わっているのは現場のスタッフ(小集団)であり、現場の実態を一番詳しく把握しています。しかし、小集団だけでは解決できない問題も多く発生します。そこで、小集団によるQCサークル活動の役割として次の2点があります。
(1) 日常作業のなかで問題を捉えて解決を図る
(2) 小集団で解決できない共通の課題、工場全体の課題を管理層へ提起する
問題の提起を受けた管理層はすぐさまフォローし、解決に向けての方策を講じます。共通の課題、工場全体の課題の取り組みは、テーマがはっきりしているので、プロジェクトチームを組んでQCストーリ―により計画的に課題解決を図って行きます。このような、プロジェクト活動をQCサークル活動として行っている企業も見受けられますが、これには、工場のトップ、管理層の支援、フォロ...
ーは欠かせません。このような支援、フォロー体制がないまま、小集団だけに活動を任せきりにしていると、QCサークル活動の衰退につながります。
5. 小集団で「問題の発生を未然に防ぐ」
何といっても、毎日の生産で問題が発生しないように、事前に手を打つことが重要です。
・4Mの変化を捉えて、事前に問題が発生しないように手を打つこと
・管理ルールの不備を見つけ是正すること
・新人のOJTを進めること
小集団による改善活動の原点はここにあります。このような改善では、QCストーリーは使いません。