ロゴマークも「応用美術」です。ロゴマーク(以下、「事業を表彰する図案」を意味するものとします。)これも著作物性があるのかどうか、結論は出ていません。一部に、著作権を基礎とした侵害事案もあったようですが、裁判所で著作物性が認められた例はないと思います。
他方、東京オリンピックのエンブレム案が著作権侵害だと主張され、取り下げられました。著作権侵害だと主張した「ロゴ」(劇場の「商標」)に著作物性を認めるのかどうか。著作物性の認定は国によって異なっています。
ざっくり言うと、ヨーロッパは緩やかであり、アメリカは厳格といえると思います。日本は、というと、産業や事業に用いられる作品を著作物だと認定するハードルは高いものでした。裁判所では「純粋美術と同視し得る」ものだけが「著作物」として保護される、という立場でした。鑑賞の対象になるのか、ということです。
この基準で考えると、侵害だという作品(劇場のロゴ)自体、日本の裁判所で「著作物」と認められる可能性は決して高くはなかった。そして、もし著作物だと認められても、委員会での決定案が著作権侵害とされる可能性は低かった、と思います。
さて、「「TRIPP TRAPP事件」判決で言う応用美術の定義、「実用に供され、あるいは産業状の利用を目的とする表現物」によれば、「商標」として制作された図案も「応用美術」であり、創作性が認められれば「著作物」として保護されることになります。この観点からは、劇場のロゴは「著作物」であり、著作権法で保護されることになるでしょう。
ここで、著作権法と商標法の交錯が生じます。著作権法と意匠法との交錯は、「美の一体性」で説明がつくかもしれません(しかし峯はデザイナーのムラーニさんが言う「芸術家は美術館を目指す。デザイナーはスーパーマーケットを目指す」との言葉が肝だと思います。)。しかし、著作物と商標とは表現物が近似しているとしても、その機能は全く違います。著作物は「美」を求め、商標であるロゴは「識別」を求めます。
ロゴデザインに著作物性を認めるとどうなるか。ロゴデザインは企業を識別するためにデザインされます。一般に、企業は守備範囲を持っていて、その範囲でロゴマークが保護されればよいと考えています。しかし、ロゴマークが著作権で保護される、ということになると、企業の守備範囲以外でも、「そのマークを使うな」ということになります。今回の問題もそうです。「劇場」と「オリンピック」は全く違う事業であり、商標法的には問題がないはずです。
欧州共同体意匠規則では、ロゴマークも登録されています。筆者は、これはおかしい、と思っています。
整理すると、「幼児用椅子」判決から類推すると、...