モノよりコトの品質が問われる時代です。製造業の品質改善の進め方として、今回は、「コトの品質」についてです。
「わが社は品質を重視している」とほとんどの経営者は答えます。ただ、品質を強みとしてしてきた日本の製品ですが、そのレベルが低下していると感じている人も多いと思います。では、なぜ日本の品質レベルが低下したのでしょうか?
モノの品質は、現在では新興国でもそこそこの品質のものを作ることが可能です。しかし、海外製品に対して、なにか不安を感じてしまうのは、時として期待通りの「モノ」が納入されないのではないか?という不安があることです。そして、案の定、実際に期待通りのモノが納入されない「コト」があるからです。二つ返事で引き受けた仕事でも、状況が変わると、それを理由に納期が遅れたり勝手に図面とは異なるものを作ったりします。ところが、日本でも最近、期待通りの「モノ」が手に入らない「コト」が増えています。
「モノ」の品質は良くて当たり前であり、不良品を外へ流出させる「コト」は論外です。つまり、「モノの品質」より、不良品や、図面通りでないものを外へ流出させた「コトの品質」の問題が顧客を不安に陥れているのです。不安にさせないためには、顧客が望んだ仕様のモノを、期待通りの納期で、期待通りの価格で提供することです。不良品が混じっていることは論外です。
では、コトの品質を良くし、顧客に不安を与えないようにするためには一体何が必要でしょうか?それは、経営者の「コトの品質」重視の考え方とそれに応える「現場力」です。
◆「コトの品質」重視の考え方とそれに応える「現場力」
第一に、経営者のコトの品質に対する考え方を現場に伝え、自らの行動で示すことです。企業を取り巻く環境は時々刻々と変化しており、またお客様のニーズは多種多様に亘っています。常に新しい「物作り」にチャレンジしていくことが必要であ、とくに、受注生産工場では、顧客のきめ細かい要求を満たして行くことが、多品種小量生産時代に生き残っていく条件となっています。
経営者は、社員全員に環境の変化への対応、顧客の多様な要求に応えなければ企業が成り立たないことを繰り返し伝える努力を怠らず、肝に銘ずることが重要と考えられます。
第二に、ものづくりのやり方を変えること(熟練技術者の技から、組織力と連携へ)コトの品質を良くするためには、熟練の技重視の品質から、組織力と社員の連携を重視した品質に変えていかなければなりません。つまり、コトの品質へ対応可能な「現場力」を強化することです。
今まで、日本品質の優秀さは、熟練技能に支えられてきました。しかし、多品種小量生産では、臨機応変の対応が求められ、正しい情報を基にした組織としての対応力、連携が求められるのです。
そのために必要なのは、次の3点です。
・現場監督者、管理者の教育訓練、作業者のOJT
・コミュニケーションツールの整備(必要な部署に、必要な時に、正しい情報を)
・部署間、あるいは職場内の連携のためのツールの整備(朝礼、現場ミーティング)
第三に、スピード(速いレスポンスと行動)を重視することです。顧客に不安を与え...