暗黙知の可視化プロセス 技術伝承とは(その8)

更新日

投稿日

 
  技能伝承
 
 前回のその7に続いて解説します。
 

3. 技術伝承:暗黙知の可視化

 

(2) 暗黙知の可視化プロセス

 

④ 作業性の改善

 
 再現性が確保できたら、可視化・形式知化した内容をマニュアル化すると共に、自動化などを検討することが可能になるのですが、ここまでは現状の情報整理のみで、少子高齢社会でのものづくりに対応するための効率化が抜けています。
 
 平成の次の時代へ伝える技術に対しても、生産性向上をこの段階で行い、次世代へムダのない効率的な情報を伝える必要があります.なお改善はあらゆる所に原価を高めるムダがあるという前提で、例えば移動が多い作業を撲滅したり、単位作業毎の作業時間を短縮する (リードタイム短縮) など、作業分解した結果を基に様々な観点で改善と工夫を行っていくことが必要です。
 
 このように暗黙知状態となっている技術者の思考プロセスを作業分解することで、形式知可能な技術と属人的な技能を切り分けて整理することができるため効率的な伝え方ができます。また技術者固有の課題に関しても作業分解の抽出・整理の過程で伝承者と継承者がコミュニケーションをとることで解決方向を見いだすことができると考えています。
 

3.3 どこまで可視化するか

 
 暗黙知をどこまで可視化するかは、誰にどのような内容を伝えるのかによって異なってきます。目的や対象者により、対象となる継承者が判断できる可視化のレベルが異なります。継承者の状態によりケースバイケースになりますが 「何ができていなければならないか」、「何を知っているべきなのか」、「どんな態度をとっておく必要があるか」 などを手がかりにどこまで可視化するのかを検討します。
 
 そのうえで類似知識や経験の有無により伝承スピードにも差がでるため、継承する側の立場で何が必要な情報かを考えれば、どこまで可視化かするかは自ずと明確となります。継承者視点に立ち、また可視化する目的に応じて、「何を、どの程度伝えれば、理解が進むか」 といった観点で考えておくのです。
 
 通常,形式知可能な技術が 7~8割、属人的な技能が 2~3割程度が望ましいといわれていますが、業種や業態によってもその程度...
 
  技能伝承
 
 前回のその7に続いて解説します。
 

3. 技術伝承:暗黙知の可視化

 

(2) 暗黙知の可視化プロセス

 

④ 作業性の改善

 
 再現性が確保できたら、可視化・形式知化した内容をマニュアル化すると共に、自動化などを検討することが可能になるのですが、ここまでは現状の情報整理のみで、少子高齢社会でのものづくりに対応するための効率化が抜けています。
 
 平成の次の時代へ伝える技術に対しても、生産性向上をこの段階で行い、次世代へムダのない効率的な情報を伝える必要があります.なお改善はあらゆる所に原価を高めるムダがあるという前提で、例えば移動が多い作業を撲滅したり、単位作業毎の作業時間を短縮する (リードタイム短縮) など、作業分解した結果を基に様々な観点で改善と工夫を行っていくことが必要です。
 
 このように暗黙知状態となっている技術者の思考プロセスを作業分解することで、形式知可能な技術と属人的な技能を切り分けて整理することができるため効率的な伝え方ができます。また技術者固有の課題に関しても作業分解の抽出・整理の過程で伝承者と継承者がコミュニケーションをとることで解決方向を見いだすことができると考えています。
 

3.3 どこまで可視化するか

 
 暗黙知をどこまで可視化するかは、誰にどのような内容を伝えるのかによって異なってきます。目的や対象者により、対象となる継承者が判断できる可視化のレベルが異なります。継承者の状態によりケースバイケースになりますが 「何ができていなければならないか」、「何を知っているべきなのか」、「どんな態度をとっておく必要があるか」 などを手がかりにどこまで可視化するのかを検討します。
 
 そのうえで類似知識や経験の有無により伝承スピードにも差がでるため、継承する側の立場で何が必要な情報かを考えれば、どこまで可視化かするかは自ずと明確となります。継承者視点に立ち、また可視化する目的に応じて、「何を、どの程度伝えれば、理解が進むか」 といった観点で考えておくのです。
 
 通常,形式知可能な技術が 7~8割、属人的な技能が 2~3割程度が望ましいといわれていますが、業種や業態によってもその程度は異なってくるでしょう。また移動や運ぶといった単純作業は、形式知化可能であっても誰でも理解できる内容であるため、それらの作業を形式知化しておく必要はないのです。
 
 
 次回に続きます。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

野中 帝二

労働人口が減少する中、生産性を維持・向上しつつ、収益性を向上するための支援を行います。特に自律的な改善活動の醸成や少子高齢化での経営など労働環境変化に対応した解決策をサポート致します。

労働人口が減少する中、生産性を維持・向上しつつ、収益性を向上するための支援を行います。特に自律的な改善活動の醸成や少子高齢化での経営など労働環境変化に対応...


「技術・技能伝承」の他のキーワード解説記事

もっと見る
技術・技能伝承の実情と課題 知的資産承継を考える (その2)

1.思うように進まない技術・技能伝承   2007年問題として話題となってから約10年が経過しましたが、その間日本を取り巻く環境は大きく変化しています。...

1.思うように進まない技術・技能伝承   2007年問題として話題となってから約10年が経過しましたが、その間日本を取り巻く環境は大きく変化しています。...


仕組みを作ればうまくいくという誤解 モノづくりと人材育成(その5)

  5.技術技能伝承に関する五つの誤解  誤解④仕組み(技能DB、マニュアル、動画)さえ作ればうまくいく ナレッジやマニュアルなどの仕組み...

  5.技術技能伝承に関する五つの誤解  誤解④仕組み(技能DB、マニュアル、動画)さえ作ればうまくいく ナレッジやマニュアルなどの仕組み...


技術伝承を効率的に進めるには 【連載記事紹介】

  技術伝承、解説の全てが無料でお読みいただけます! ◆技術伝承を効率的に進めるには グローバル化の進展により、日本を取り巻く環境は大...

  技術伝承、解説の全てが無料でお読みいただけます! ◆技術伝承を効率的に進めるには グローバル化の進展により、日本を取り巻く環境は大...


「技術・技能伝承」の活用事例

もっと見る
プラント運転の技術伝承と自動化   作業分解事例 (その1)

1.熟練者により異なる作業手順    大手化学メーカーのA社は、従業員1万人の大企業です。過去作業中に死亡事故を起こしたこともあり、その一因...

1.熟練者により異なる作業手順    大手化学メーカーのA社は、従業員1万人の大企業です。過去作業中に死亡事故を起こしたこともあり、その一因...


【ものづくりの現場から】特注・一品生産の現場づくり(研創)

  【特集】ものづくりの現場から一覧へ戻る ものづくりを現場視点で理解する「シリーズ『ものづくりの現場から』」では、現場の課題や課題解消...

  【特集】ものづくりの現場から一覧へ戻る ものづくりを現場視点で理解する「シリーズ『ものづくりの現場から』」では、現場の課題や課題解消...


メンテナンス作業へのパート社員活用 作業分解事例 (その2)

1.収益性が悪化したメンテナンス事業    前回のその1に続いて解説します。鉄道メンテナンス業のB社は、従業員20名(全て正社員)の中小企業...

1.収益性が悪化したメンテナンス事業    前回のその1に続いて解説します。鉄道メンテナンス業のB社は、従業員20名(全て正社員)の中小企業...