暗黙知の可視化の考え方 技術伝承とは(その5)

更新日

投稿日

【技術伝承とは 連載目次】

 
 前回のその4に続いて解説します。
 

3. 暗黙知の可視化

 

(1) 暗黙知の可視化の考え方

 
 暗黙知とは、判断を伴う作業や感性による作業などを含む複数の技術と技能で構成され、創造性や人間の意思決定を含んでいます。また暗黙知状態の作業は、インプットとアウトプットは見える化できているが、その作業内容やプロセスがブラックボックスになっているケースが多いのです。従って、そのブラックボックス状態から技術者が、何を見て (知覚)、どのように解釈 (判断) 、そして決断したかを制約条件や環境などと共に見える化する必要があります。
 
 このような暗黙知を可視化するには、技術者が頭の中で考えている思考プロセスとその要件を整理していくことが必要です。技術者が頭の中で行なっている思考プロセスは、通常単位作業と要素作業から構成されています。単位作業とはひとつの目的を遂行する作業区分であり、思考工程ともいえます。また要素作業とは単位作業を構成する要素で動作または作業のことです。
 
 技術伝承
図3 暗黙知の可視化の考え方
 
 そこでまず、図3のように暗黙知作業から思考工程である単位作業を抽出したうえで、各単位作業を構成する要素作業を抽出します。そのうえで抽出した要素作業を、形式知が比較的容易な作業なのか、あるいは形式知化が難しい熟練作業 (属人的要素が強い作業) に識別していき、定量化や言語化などによる形式知化を進めます。
 
 形式知化が難しい要素作業をさらに可視化していくには、要素作業を構成する作業動作へ分解し、さらに動作を構成する動作要素へと分解し形式知化していくことです。しかし自動化するような場合でも、要素作業レベルで...

【技術伝承とは 連載目次】

 
 前回のその4に続いて解説します。
 

3. 暗黙知の可視化

 

(1) 暗黙知の可視化の考え方

 
 暗黙知とは、判断を伴う作業や感性による作業などを含む複数の技術と技能で構成され、創造性や人間の意思決定を含んでいます。また暗黙知状態の作業は、インプットとアウトプットは見える化できているが、その作業内容やプロセスがブラックボックスになっているケースが多いのです。従って、そのブラックボックス状態から技術者が、何を見て (知覚)、どのように解釈 (判断) 、そして決断したかを制約条件や環境などと共に見える化する必要があります。
 
 このような暗黙知を可視化するには、技術者が頭の中で考えている思考プロセスとその要件を整理していくことが必要です。技術者が頭の中で行なっている思考プロセスは、通常単位作業と要素作業から構成されています。単位作業とはひとつの目的を遂行する作業区分であり、思考工程ともいえます。また要素作業とは単位作業を構成する要素で動作または作業のことです。
 
 技術伝承
図3 暗黙知の可視化の考え方
 
 そこでまず、図3のように暗黙知作業から思考工程である単位作業を抽出したうえで、各単位作業を構成する要素作業を抽出します。そのうえで抽出した要素作業を、形式知が比較的容易な作業なのか、あるいは形式知化が難しい熟練作業 (属人的要素が強い作業) に識別していき、定量化や言語化などによる形式知化を進めます。
 
 形式知化が難しい要素作業をさらに可視化していくには、要素作業を構成する作業動作へ分解し、さらに動作を構成する動作要素へと分解し形式知化していくことです。しかし自動化するような場合でも、要素作業レベルで定量化しておけば、ほとんどの作業は自動化を進めることができると考えています。作業動作や動作要素まで分解する必要はなく、伝えられるレベルまで分解すれば十分なのです。
 
 
 次回に続きます。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

野中 帝二

労働人口が減少する中、生産性を維持・向上しつつ、収益性を向上するための支援を行います。特に自律的な改善活動の醸成や少子高齢化での経営など労働環境変化に対応した解決策をサポート致します。

労働人口が減少する中、生産性を維持・向上しつつ、収益性を向上するための支援を行います。特に自律的な改善活動の醸成や少子高齢化での経営など労働環境変化に対応...


「技術・技能伝承」の他のキーワード解説記事

もっと見る
暗黙知の可視化プロセス 技術伝承とは(その7)

       前回のその6に続いて解説します。   3. 技術伝承:暗黙知の可視化 &nbs...

       前回のその6に続いて解説します。   3. 技術伝承:暗黙知の可視化 &nbs...


進まない技術・技能伝承 モノづくりと人材育成(その1)

【ものづくりの人材育成とは 連載目次】 1、進まない技術・技能伝承 2、誰でも技術・技能伝承できるという誤解 3、熟練者が技術・技能伝承に積極的...

【ものづくりの人材育成とは 連載目次】 1、進まない技術・技能伝承 2、誰でも技術・技能伝承できるという誤解 3、熟練者が技術・技能伝承に積極的...


技術伝承を効率的に進めるには 【連載記事紹介】

  技術伝承、解説の全てが無料でお読みいただけます! ◆技術伝承を効率的に進めるには グローバル化の進展により、日本を取り巻く環境は大...

  技術伝承、解説の全てが無料でお読みいただけます! ◆技術伝承を効率的に進めるには グローバル化の進展により、日本を取り巻く環境は大...


「技術・技能伝承」の活用事例

もっと見る
メンテナンス作業へのパート社員活用 作業分解事例 (その2)

1.収益性が悪化したメンテナンス事業    前回のその1に続いて解説します。鉄道メンテナンス業のB社は、従業員20名(全て正社員)の中小企業...

1.収益性が悪化したメンテナンス事業    前回のその1に続いて解説します。鉄道メンテナンス業のB社は、従業員20名(全て正社員)の中小企業...


高齢者依存の鋳造プロセス標準化 作業分解事例 (その3)

1.外国人・高齢者に依存した事業構造     前回のその2に続いて解説します。鋳造業のC社は、従業員20名弱の平均年齢が50歳後半...

1.外国人・高齢者に依存した事業構造     前回のその2に続いて解説します。鋳造業のC社は、従業員20名弱の平均年齢が50歳後半...


プラント運転の技術伝承と自動化   作業分解事例 (その1)

1.熟練者により異なる作業手順    大手化学メーカーのA社は、従業員1万人の大企業です。過去作業中に死亡事故を起こしたこともあり、その一因...

1.熟練者により異なる作業手順    大手化学メーカーのA社は、従業員1万人の大企業です。過去作業中に死亡事故を起こしたこともあり、その一因...