バリュー・ストリーム・マップは時にはプロセスを単純化し過ぎることもありますが、チームでプロセス全体を把握し、無駄を削減するためのアクションを起こすには極めて有効なツールだと思います。今回は、このバリュー・ストリーム・マップの解説です。
バリュー・ストリーム・マップは改善イベントの中のメイン・イベントとして、チームで作り上げていきます。部屋の壁一面に張った大きな紙と、付箋やカラーペンを使いながら、何時間もかけて(場合によっては何日もかけて)チームでワイワイガヤガヤしながら作り上げていきます。
バリュー・ストリーム・マップは一目で物と情報の流れが掴めるため、プロセスの概要を知るにはとても便利なツールです。しかし実際の作業はもっともっと複雑なことが多いため、バリュー・ストリーム・マップを作った後は「ちょっと単純化し過ぎていないか」と疑問を持つこともあるのですが、そもそもバリュー・ストリーム・マップの目的は、問題点を見つけて、チーム内でその問題点を共有し、プロセスの改善へと導くことなので、少々単純化し過ぎているくらいがちょうど良いのかもしれません。
付箋を張っては並び替えて、意見を交換しながらバリュー・ストリーム・マップを作る作業はとても楽しいだけではなく、チームメンバーがプロセス全体を理解することにも役立ちますし、何よりもチームワークの向上が計れます。
しかし、チームメンバーはそれぞれの仕事の専門家であっても、バリュー・ストリーム・マップの専門家ではありません。またコンピュータの画面上でバリュー・ストリーム・マップを作るのとは違い、大きな紙に付箋やペンを使って作っていくので、レイアウトの変更など、やり直しが簡単ではありません。そのため実際にチームでバリュー・ストリーム・マップを作る際は、決まった手順に従って簡潔に作ることが求められます。
以下はチーム(複数の人々)という環境の下で、僕が実際にバリュー・ストリーム・マップを作るための手順です。
◆ バリュー・ストリーム・マップ(物と情報の流れ図)の作り方(実務編)
- バリュー・ストリーム上、誰が顧客であるかを確認し、顧客をマップの右上の置く
- バリュー・ストリーム上、何がプロダクト(商品)であるかを確認し、プロダクトをマップの右上に置く
- プロセスの最初ステップを確認し、マップの右上に置く
- プロセスの最後のステップを確認し、マップの右上に置く
- マップの右上に置いておいたプロセスの最初のステップを、マップの左端に移動させる
- マップの右上に置いておいたプロセスの最後のステップを、マップの右端に移動させる
- プロセスの残りのステップを、最後のステップから逆方向に、または最初のステップから順方向に順次追加し、マップ上に並べていく(プロセスのステップは、在庫や待ち行列などが積み上がる可能のある作業等。先に SIPOCを作っておくと、この作業が早くなる)
- 三角形の在庫マークを全てのプロセス・ステップの間に置いていく(たとえ在庫がなくても置いていく)
- 人やデータベースなどに対して、情報、物、サービスのやり取りがないかどうか、すべてのプロセス・ステップで確かめる(先に SIPOC を作っておくと、この作業が早くなる)。そして、人やデータベースと各プロセス・ステップを矢印で結ぶ
- 時間線(はしご)をプロセス・ステップの下に置く
- それぞれのプロセス・ステップの作業時間を時間線(はしご)に記入していく
- それぞれの在庫量を三角形の在庫マークに記入していく
- それぞれのプロセス・ステップの成功率(%)を時間線(はしご)の下に記入していく(成功率は、失敗なしに作業が一度で完了する確率)
- 一日の平均需要量を、マップの右上に記入する
- それぞれの在庫のリードタイムを計算する(リードタイム = 在庫(待ち行列)/ 平均需要量)
- 他のすべての情報(シフト、作業者数、など)をプロセス・ステップに記入していく
- それぞれのプロセス・ステップを結ぶ矢印のタイプを決め(押し込み、先入れ先出し、スパーマーケット、等)、記入していく
- パンチ・ライン(強烈なメッセージ)を、バリュー・ストリームの最後に記入する
- どのステップの、どのデータに問題があるのかをチームで検討し、改善箇所に稲妻マークを置いていく
- どのステップの、どのコミュニケーション(データや物、サービスのやり取り)が無駄だったり重複しているのかをチームで検討し、改善箇所に稲妻マークを置いていく
- その他、チーム内で現在のプロセスの問題点を検討し、改善箇所には稲妻マークを置いていく
- 見つけた問題点(カイゼン稲妻マーク)を解決するよう将来のプロセスを設計する
以上です。後は問題点(改善項目)...