炭素繊維の地域ごとにおける消費用途の差 水素エネルギー社会(その5)

◆水素エネルギー社会 連載目次

 

1、炭素繊維の用途

 CF(炭素繊維)の用途は地域ごとに、大きく異なっています。

 日本の国内消費では、スポーツ用品用途が最大です。ゴルフクラブ、テニスラケット、釣り竿(ざお)などです。一方、使用量としてみると航空機用途がトップとなります。前回の記事で、三菱重工大江工場を話題としましたが、ボーイング787向けの川崎重工、富士重工等における部品製造での消費です。

 北米のCF最大用途は、高圧タンク容器向けとのことです。これは意外でした。しかし、確かにアメリカには高圧ガスタンクの製造会社が多数あります。実は調べてみると日本にも同様の会社が数社あります。

 

 燃料電池自動車では高圧水素タンクが重要部品となってます。トヨタ自動車は下山工場に、その一大製造拠点を構えました。おそらくは2020年12月発売の次期MIRAI向けにフル生産状態でしょう。というように、もっぱらの用途は燃料電池自動車向けかと思ってましたが、消防や病院での酸素ボンベ等も、高圧大容量化・コンパクト化の要求対応からCF化され、その消費が多いようです。

 実際、日本にも自動車向け以外の産業用途タンクメーカーが複数あります。今後広がるであろう水素エネルギー社会をみると、車載以外の地上タンクとしてのニーズもあり、使用量は拡大方向でしょう。

 あくまでも推定ですが、トヨタ自動車が東富士に建設するスマートシティでも、水素エネルギー発電の実験には取り組むことと思われます。

 一方、欧州のCF最大用途は洋上発電の羽根です。偏西風が一定に吹くことで、洋上で安定的な発電が可能となることから、広く普及しています。この羽根、1枚が60m程のサイズとなり、それなりの消費先となっています。

 

2、洋上発電の今後の見通しと水素エネルギー社会

 次は、CFの用途に関連して、前述の洋上発電についてです。

 風力発電における洋上の位置づけですが、設置場所の確保・低周波騒音問題・大型化による発電効率の面で、洋上発電が拡大しています。ヨーロッパでは偏西風で安定的な発電が見込めることもあり、大西洋に面した国を中心に洋上発電が盛んです。発電順位トップは圧倒的にイギリス、次いで国土の狭いベルギーです。フランスではあまり見られなかったですが近年着手した状況です。

 大型の洋上発電はプロペラ型です。その羽根は航空機の翼よりも大きいもので、欧州のCFの用途のトップになることもうなずけます。

 

 次世代のビジネスを見据えて欧州の風力発電事業は、住友商事、三菱商事、丸紅など日本の総合商社が参画しています。既に丸紅は、秋田県沖に風力発電風車軍の設置を始めており、2022年供給開始の予定です。秋田洋上風力発電株式会社という会社で、総発電量140MWの国内初、欧州の発電事業2か所分に相当するスケールです。丸紅は、電力販売会社の丸紅新電力も設立しており、その事業とも親和性が高いものとみられます。下記で、三菱商事の欧州風...

力発電事業の概要をご覧下さい。

 

表. 三菱商事の欧州風力発電事業(同社プレスリリースより引用)

 

 2020年5月にプレスリリースされていますが、住商主体のコンソシアムも秋田沖の事業化を計画しているようです。なお、風力発電は発電量が安定しないことが最大のデメリットですが、余剰発電時の電力で、水の電気分解から水素を作り貯蔵するという、水素エネルギー社会も想定されます。蓄電池貯蔵と比較した際の総合的な効率はどちらが高くなるでしょうか。今後が楽しみな分野です。

 次回は、水素エネルギー社会(その6)水素協議会についてです。

 

 【出典】技術オフィスTech-T HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

 

◆関連解説『環境マネジメント』

↓ 続きを読むには・・・

新規会員登録


この記事の著者