表示標識でも現場改善の力になる 作業環境:5S、ムダ(その8)

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生産マネジメント

 

 工場の経営者から現場の従業員の方を対象として「作業環境:5S、ムダ」をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(とど)まらず、経営革新まで範囲を広げて、改善とは何か、革新とは何かを、目からウロコ的に連載しておりますが、今回はその第8回目となります。

 

◆ 表示標識にひと工夫するだけで大きな効果が

1. 表示標識は管理監督者や管理者の代弁者

 5S活動をしている工場は非常に多くあります。しかし床面も綺麗(きれい)にして設備や機械、作業台、台車、棚などを整備されていても、なんとなく雰囲気が良くないことを感じる時があります。それは作業や作業準備などをしているオペレーターの様子から伺(うかが)えると共に、その雰囲気とほぼ正比例しているかのように、表示標識の良し悪しに関係しているようです。床は綺麗であっても、ラインテープが汚れていたり、はがれていたり、場所の表示がなかったりしていることなどが見受けられるのです。一見完璧のように見えても、少し立ち止まって見渡すとすぐに感じ取ることができます。

 生産管理板のグラフを見ても、目標値がなかったり、毎日の記述や記入がされていなかったり、どこまでが正常でどこからが異常なのか分からないこともあります。さらに異常だった場合には、どのようなアクションを誰が何時(いつ)対処するのかについても記入してないことも多くあります。

 『パッと見て、ハッと気づき、サッと行動ができる』現場に改善するためには、まだ遠い道を歩む必要がありそうです。例えば、管理図において目標線だけでなく、正常域は緑色、異常(注意)域は黄色、危険(すぐにアクションを取る)域を赤色で着色しておけば、線を引いた時にすぐに分かります。あとは、ちょっとだけ手を加えるだけのことなのです。

 

 設備や機械に取り付けられているアンドンがありますが、点灯する色の意味を尋ねると明確な答えは余り返ってきません。人によっては解釈が違っていることもあり、さらにはアンドンを活用していない工場もあります。同じ工場でも設備や機械のメーカーが違うとアンドンの位置や順番、そして点滅方法も違うことがあります。同じ工場であれば、設置する前に仕様を明確にして、設置後は工場全体で統一されるようにすると、見た目にも使う側にとっても非常に安い分かりやすいものになります。

 オペレーターの標準作業票や標準作業組合せ票があっても、実際の作業と見比べるとまったく違う作業をしていることもあります。また、作業指示や作業標準が設置してあっても、実際に手順をつき合わせてみると違うことに気づかされることもあります。作成した日付を見ますと、かなり昔の時期に作成したものや、一度作成したものがそのまま掲示されていることも多々あるため一体、管理監督者は何を基に作業指導をしているのか疑問を持ってしまいます。「もう慣れているから必要ない」などと開き直ってしまう監督者がいるのは困ったものです。それで本当に品質保証ができるのかと詰め寄ると、急にモゴモゴと口が開かなくなります。表示標識は、管理監督者や管理者の伝えたい事や意思の代弁者でもあるのです。

 

2. 5Sのオーディットを定期的に実施

 表示標識の認識を少し変えてみましょう。「名前は体を表す」とか「男の顔は履歴書」などともいわれます。お札に福沢諭吉が印刷してありますが、これは1万円であり、野口英世の千円ではないのです。それくらい表示標識は意味もあり、価値も持っているのです。千円札に「0」を1つ付けて「はい、新札の1万円です」といったら警察行きになってしまいます。

 伝票も1枚の紙ですが、価値は何万円もすることもあり、看板1枚で数百万円の価値を持つものもあります。職場に表示標識を貼っておくことは、職場で周知徹底しなければならないことを社員に訴えているのですが、その意味や価値の説明を社員に十分伝えていなかったのではと思います。

 

 社員の意識を喚起するために呼び掛けや再度の説明も大事ですが、それにひと工夫して盛り込んでみましょう。その味付けを加えるだけで、見る側と使う側の意識と行動が変わるものです。床のライン引きはフォークリフトなどが走っているとペンキでも長持ちはしないものですが、たとえ面倒でも定期的に塗り直したり、張り替えたりしたいものです。推奨しているのは、全部線を引かないで、コーナーのL字部分や道路のようにポイントごとに表示するものです。ある程度は消耗品と点検だと思って取り組んでみてください。

 「割れ窓理論」というのがあり、それは建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないことを示し、やがてすべての窓が壊されるという考え方です。このように乱れたものを放置しておくと、次第に周囲の作業環境まで悪影響が及ぶことになります。日ごろから管理監督者の皆さんは点検整備をしておきたいものです。

 先に述べましたグラフには、緑・黄・赤の3色を入れるだけで、一目で状況が分かります。そして管理板や掲示板には、責任者の笑顔の写真(これが肝心です!普通の顔だと人は見向きもしません)と名前、電話番号まで記入して責任感を明示します。さらに誰でも分かるように、ルールや取るべきアクションも明記しておきます。アンドンには色の意味を記入して取り付けます。標準作業票や標準作業組み合わせ票は3ケ月で見直します。このように定期的に不具合があったらすぐ処置や対策を講じるように組織化していきます。5Sのオーディット(監査)のようなものを組織として定期的に行うことで、維持継続が容易になります。いつもきちんとしていれば、普段の作業も効率よくなるものです。努力なしでは改善されないことを再認識したいものです。近道はありません。

 

3. 形状と色分けで分かりやすく表示

 表示標識の解釈で大きな違...

生産マネジメント

 

 工場の経営者から現場の従業員の方を対象として「作業環境:5S、ムダ」をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(とど)まらず、経営革新まで範囲を広げて、改善とは何か、革新とは何かを、目からウロコ的に連載しておりますが、今回はその第8回目となります。

 

◆ 表示標識にひと工夫するだけで大きな効果が

1. 表示標識は管理監督者や管理者の代弁者

 5S活動をしている工場は非常に多くあります。しかし床面も綺麗(きれい)にして設備や機械、作業台、台車、棚などを整備されていても、なんとなく雰囲気が良くないことを感じる時があります。それは作業や作業準備などをしているオペレーターの様子から伺(うかが)えると共に、その雰囲気とほぼ正比例しているかのように、表示標識の良し悪しに関係しているようです。床は綺麗であっても、ラインテープが汚れていたり、はがれていたり、場所の表示がなかったりしていることなどが見受けられるのです。一見完璧のように見えても、少し立ち止まって見渡すとすぐに感じ取ることができます。

 生産管理板のグラフを見ても、目標値がなかったり、毎日の記述や記入がされていなかったり、どこまでが正常でどこからが異常なのか分からないこともあります。さらに異常だった場合には、どのようなアクションを誰が何時(いつ)対処するのかについても記入してないことも多くあります。

 『パッと見て、ハッと気づき、サッと行動ができる』現場に改善するためには、まだ遠い道を歩む必要がありそうです。例えば、管理図において目標線だけでなく、正常域は緑色、異常(注意)域は黄色、危険(すぐにアクションを取る)域を赤色で着色しておけば、線を引いた時にすぐに分かります。あとは、ちょっとだけ手を加えるだけのことなのです。

 

 設備や機械に取り付けられているアンドンがありますが、点灯する色の意味を尋ねると明確な答えは余り返ってきません。人によっては解釈が違っていることもあり、さらにはアンドンを活用していない工場もあります。同じ工場でも設備や機械のメーカーが違うとアンドンの位置や順番、そして点滅方法も違うことがあります。同じ工場であれば、設置する前に仕様を明確にして、設置後は工場全体で統一されるようにすると、見た目にも使う側にとっても非常に安い分かりやすいものになります。

 オペレーターの標準作業票や標準作業組合せ票があっても、実際の作業と見比べるとまったく違う作業をしていることもあります。また、作業指示や作業標準が設置してあっても、実際に手順をつき合わせてみると違うことに気づかされることもあります。作成した日付を見ますと、かなり昔の時期に作成したものや、一度作成したものがそのまま掲示されていることも多々あるため一体、管理監督者は何を基に作業指導をしているのか疑問を持ってしまいます。「もう慣れているから必要ない」などと開き直ってしまう監督者がいるのは困ったものです。それで本当に品質保証ができるのかと詰め寄ると、急にモゴモゴと口が開かなくなります。表示標識は、管理監督者や管理者の伝えたい事や意思の代弁者でもあるのです。

 

2. 5Sのオーディットを定期的に実施

 表示標識の認識を少し変えてみましょう。「名前は体を表す」とか「男の顔は履歴書」などともいわれます。お札に福沢諭吉が印刷してありますが、これは1万円であり、野口英世の千円ではないのです。それくらい表示標識は意味もあり、価値も持っているのです。千円札に「0」を1つ付けて「はい、新札の1万円です」といったら警察行きになってしまいます。

 伝票も1枚の紙ですが、価値は何万円もすることもあり、看板1枚で数百万円の価値を持つものもあります。職場に表示標識を貼っておくことは、職場で周知徹底しなければならないことを社員に訴えているのですが、その意味や価値の説明を社員に十分伝えていなかったのではと思います。

 

 社員の意識を喚起するために呼び掛けや再度の説明も大事ですが、それにひと工夫して盛り込んでみましょう。その味付けを加えるだけで、見る側と使う側の意識と行動が変わるものです。床のライン引きはフォークリフトなどが走っているとペンキでも長持ちはしないものですが、たとえ面倒でも定期的に塗り直したり、張り替えたりしたいものです。推奨しているのは、全部線を引かないで、コーナーのL字部分や道路のようにポイントごとに表示するものです。ある程度は消耗品と点検だと思って取り組んでみてください。

 「割れ窓理論」というのがあり、それは建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないことを示し、やがてすべての窓が壊されるという考え方です。このように乱れたものを放置しておくと、次第に周囲の作業環境まで悪影響が及ぶことになります。日ごろから管理監督者の皆さんは点検整備をしておきたいものです。

 先に述べましたグラフには、緑・黄・赤の3色を入れるだけで、一目で状況が分かります。そして管理板や掲示板には、責任者の笑顔の写真(これが肝心です!普通の顔だと人は見向きもしません)と名前、電話番号まで記入して責任感を明示します。さらに誰でも分かるように、ルールや取るべきアクションも明記しておきます。アンドンには色の意味を記入して取り付けます。標準作業票や標準作業組み合わせ票は3ケ月で見直します。このように定期的に不具合があったらすぐ処置や対策を講じるように組織化していきます。5Sのオーディット(監査)のようなものを組織として定期的に行うことで、維持継続が容易になります。いつもきちんとしていれば、普段の作業も効率よくなるものです。努力なしでは改善されないことを再認識したいものです。近道はありません。

 

3. 形状と色分けで分かりやすく表示

 表示標識の解釈で大きな違いがあります。表示は3メートル離れた場所からでも認識できるよう設定します。小さな文字や汚れで判読できなければ即刻直していきます。その判断基準があるだけですぐに行動ができます。表示標識のイメージは、誰でも分かるように設定されているスーパーマーケットです。また表示標識を喚起するには、色を用いることが一番です。ただし余り多く使うと混乱するので5色程度にとどめます。

 次に「○、△、□」などの形状を用いるものです。形では「バナナ」、「リンゴ」などの形状と色の組み合わせで確実に認識できるものがあります。看板を振り分ける時、メーカー名の替わりに用いて捌(さば)くスピードを数倍にして間違いをなくした実績があります。その次は数字です。桁(けた)数は3桁までとし、認識しやすく覚えやすくします。最後に文字ですがこれもできるだけ少なくします。数字と文字の組み合わせは4桁までがよいでしょう。これに色や形を加えることもアイデアです。ラインテープなどを一式用意して台車も準備しましょう。これらを探すことなく、すぐに実行できるような仕組みづくりも大切です。

 次回は、現場改善:「作業環境:5S、ムダ (その9) 見えるムダと見えないムダ」から解説を続けます。

 

 【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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