ムダは時間と命をすり減らす:改善のヒント(その11)

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【改善のヒント連載目次】

 

◆ 改善グッズを事前準備しておく

1. 改善のヒント:必要なモノがすぐに取り出せる工夫

 人生の時間の30%はモノさがしをしているという数値を出した心理学者がいるようです。そういわれてみると、欲しいモノを探したり、見えなくなったモノを捜したりするまったくもってムダな時間は、まるで日常作業の一部に溶け込んでいるかのようです。

 毎日、毎回さがすムダが、空気のような存在になって自分自身でわからなくなってしまうのです。考えてみれば私たちの一番大切な「時間」と「命」をいとも簡単に燃やしてしまっているのです。しかもこの2つは自分だけのもので、他人に譲渡することもできませんし、冷凍庫に保存することも出来ません。

 このことに気づくのは、定年退職した時とか大きな病気をした時とか、棺桶に片足突っ込んだ時くらいでしょう。ああそれでは何ともったいないことかと嘆いても、後戻しはできないのです。そのことをほとんどの人は認識していないのが問題でもあります。ムダは大切な「時間」と「命」をもすり減らしていることを、改めて認識したいものです。

 

 仕事は「事前準備」という外段取り、付加価値を生む「作業」そのもの「後始末」の3つで構成されています。段取り八分に仕事二分というほど事前の準備が大切なことを示しています。その段取りにおいても、作業指示書や品質評価票などの帳票類、部品や治工具などの備品、そして設備や機械、さらにはオイルや接着剤などの補材も必要になり、すべて段取りよく揃って初めて作業に取り掛かれます。その立ち上げ時間が短ければ短いほど、付加価値を生む時間が確保でき、売上げさらに利益に貢献できます。それは改善する時も同じです。

 清掃道具はどこだ?ラインテープはどこに行った?パイプ材はどこ?工具がないぞ!など着手する前の準備が整っていないことが多いのです。これによりスタートダッシュから崩れ始め、時間がずれてしまうことで、次々と後の作業が遅れ、混乱を引き起こしてしまいます。これを改めるには、まず現場の5S活動から始めることですが、必要なモノがすぐに取り出せるようにひと工夫したいものです。それが改善グッズです。

 

2. 改善のヒント:必要なモノがサッと使える工夫

 いざ改善を思い立った時に、必要なモノがパッと探せて、スッと持ち運んで、サッと使えるようにしたいものです。

 一目でさがせるようにするには、5Sと目で見る管理の組み合わせです。キーワードはセット化であり、実際の形態としては改善グッズの製作になります。例えば清掃用具もバケツなどにまとめてセットにしておきます。さらには必要な用具や洗剤までをセットにした台車もあればさがす手間が省けます。これはきちんとセットになっているかを、一目でわかるように写真を貼り付けておくとさらに便利です。

 これに加えて改善によく使うラインテープなどもすべて台車にセットしておきます。この中にラベルプリンター、ラミネート、蛍光ペン、マジックなどの標識用具も一式用意しておくと非常に便利になります。注意点は使った後なくなったものは、その時点で補充する仕組みを作っておくことです。そのクセをしっかり身につければ、モノさがしのムダから開放されます。写真を貼り付けると楽に確認ができます。これはちょっとした心掛けで出来るものですから、管理監督者の方は巡回の時のチェック項目にしましょう。

 また段取り替え台車も是非整備すべき改善グッズです。段取り替えのほとんどは、治工具探しで時間を費やされます。合わせてよく使う工具類は、オカモチにしておくとさらに便利になります。これがあるとムダな歩行が一気に数分の1になるほど効果があります。さらに工作台車も用意してみましょう。台車に万力を取り付ければ大抵の加工が対応できます。それに電動工具、電気ドラム、エアーホース、結束バンドなどあって当たり前の備品も、この台車にセットしてさがしのムダをなくしていきます。

 さらにちょっとした工作が出来るように、段ボール、プラスチック段ボール、発泡スチロール、ゴム板、ウレタンなどもあれば、作ろうとするイメージが簡単に形作ることができます。材料をさがすムダがなくなり、イライラもなくなり、想像したことが手短にできることで更なるアイデアが浮かぶのです。このタイムラグがないことは、アイデアの噴出を止めない良いヒントになるはずです。これらは工場の中に保留品や不要品に混じって放置してあります。少し手を加えて整備をすればまたこれらは息を吹き返してくれます。

 

 ライン停止や設備故障などで15分、30分さらには1時間も停止することがわかった時に、すぐにその時間を利用して改善や保全をするようにしたら、ピンチをチャンスに変えることが出来ます。それを「チャンス保全」といいます。例えばその時間がわかるように、15分で何が出来る、30分ではこれが出来るなどと誰でも見えるように管理板に掲示することで、何をしたら良いかという迷う時間をなくすことにもなります。普段からリストアップしておきたいものです。このためにも現場との普段のコミュニケーションが大切です。

 日頃から気づいたことや問題があったことを、気づいたらすぐに書いておく仕組みにしましょう。小さなことですが、小さなことをたくさんやればやがて自信につながっていきます。これを上司の皆さんは小まめに社員とやり取りをしておきましょう。小さなことをやりあげて、すぐ...

改善

【改善のヒント連載目次】

 

◆ 改善グッズを事前準備しておく

1. 改善のヒント:必要なモノがすぐに取り出せる工夫

 人生の時間の30%はモノさがしをしているという数値を出した心理学者がいるようです。そういわれてみると、欲しいモノを探したり、見えなくなったモノを捜したりするまったくもってムダな時間は、まるで日常作業の一部に溶け込んでいるかのようです。

 毎日、毎回さがすムダが、空気のような存在になって自分自身でわからなくなってしまうのです。考えてみれば私たちの一番大切な「時間」と「命」をいとも簡単に燃やしてしまっているのです。しかもこの2つは自分だけのもので、他人に譲渡することもできませんし、冷凍庫に保存することも出来ません。

 このことに気づくのは、定年退職した時とか大きな病気をした時とか、棺桶に片足突っ込んだ時くらいでしょう。ああそれでは何ともったいないことかと嘆いても、後戻しはできないのです。そのことをほとんどの人は認識していないのが問題でもあります。ムダは大切な「時間」と「命」をもすり減らしていることを、改めて認識したいものです。

 

 仕事は「事前準備」という外段取り、付加価値を生む「作業」そのもの「後始末」の3つで構成されています。段取り八分に仕事二分というほど事前の準備が大切なことを示しています。その段取りにおいても、作業指示書や品質評価票などの帳票類、部品や治工具などの備品、そして設備や機械、さらにはオイルや接着剤などの補材も必要になり、すべて段取りよく揃って初めて作業に取り掛かれます。その立ち上げ時間が短ければ短いほど、付加価値を生む時間が確保でき、売上げさらに利益に貢献できます。それは改善する時も同じです。

 清掃道具はどこだ?ラインテープはどこに行った?パイプ材はどこ?工具がないぞ!など着手する前の準備が整っていないことが多いのです。これによりスタートダッシュから崩れ始め、時間がずれてしまうことで、次々と後の作業が遅れ、混乱を引き起こしてしまいます。これを改めるには、まず現場の5S活動から始めることですが、必要なモノがすぐに取り出せるようにひと工夫したいものです。それが改善グッズです。

 

2. 改善のヒント:必要なモノがサッと使える工夫

 いざ改善を思い立った時に、必要なモノがパッと探せて、スッと持ち運んで、サッと使えるようにしたいものです。

 一目でさがせるようにするには、5Sと目で見る管理の組み合わせです。キーワードはセット化であり、実際の形態としては改善グッズの製作になります。例えば清掃用具もバケツなどにまとめてセットにしておきます。さらには必要な用具や洗剤までをセットにした台車もあればさがす手間が省けます。これはきちんとセットになっているかを、一目でわかるように写真を貼り付けておくとさらに便利です。

 これに加えて改善によく使うラインテープなどもすべて台車にセットしておきます。この中にラベルプリンター、ラミネート、蛍光ペン、マジックなどの標識用具も一式用意しておくと非常に便利になります。注意点は使った後なくなったものは、その時点で補充する仕組みを作っておくことです。そのクセをしっかり身につければ、モノさがしのムダから開放されます。写真を貼り付けると楽に確認ができます。これはちょっとした心掛けで出来るものですから、管理監督者の方は巡回の時のチェック項目にしましょう。

 また段取り替え台車も是非整備すべき改善グッズです。段取り替えのほとんどは、治工具探しで時間を費やされます。合わせてよく使う工具類は、オカモチにしておくとさらに便利になります。これがあるとムダな歩行が一気に数分の1になるほど効果があります。さらに工作台車も用意してみましょう。台車に万力を取り付ければ大抵の加工が対応できます。それに電動工具、電気ドラム、エアーホース、結束バンドなどあって当たり前の備品も、この台車にセットしてさがしのムダをなくしていきます。

 さらにちょっとした工作が出来るように、段ボール、プラスチック段ボール、発泡スチロール、ゴム板、ウレタンなどもあれば、作ろうとするイメージが簡単に形作ることができます。材料をさがすムダがなくなり、イライラもなくなり、想像したことが手短にできることで更なるアイデアが浮かぶのです。このタイムラグがないことは、アイデアの噴出を止めない良いヒントになるはずです。これらは工場の中に保留品や不要品に混じって放置してあります。少し手を加えて整備をすればまたこれらは息を吹き返してくれます。

 

 ライン停止や設備故障などで15分、30分さらには1時間も停止することがわかった時に、すぐにその時間を利用して改善や保全をするようにしたら、ピンチをチャンスに変えることが出来ます。それを「チャンス保全」といいます。例えばその時間がわかるように、15分で何が出来る、30分ではこれが出来るなどと誰でも見えるように管理板に掲示することで、何をしたら良いかという迷う時間をなくすことにもなります。普段からリストアップしておきたいものです。このためにも現場との普段のコミュニケーションが大切です。

 日頃から気づいたことや問題があったことを、気づいたらすぐに書いておく仕組みにしましょう。小さなことですが、小さなことをたくさんやればやがて自信につながっていきます。これを上司の皆さんは小まめに社員とやり取りをしておきましょう。小さなことをやりあげて、すぐに評価してあげて、褒めてあげるこのサイクルをたくさん回すことで、改善のスピードが増してくるものです。自律性も出てきます。

 

3. 改善のヒント:いつでも改善できる改善道場とは

 いつでもアイデアを形にする作業場、つまり改善道場のような必要なモノが揃っている場所を工場の一画に設置しましょう。

 必要なモノが揃っている場所作りは、5Sをやればすぐに確保できます。そして、改善の材料となるパイプ材、Lアングル、さらにこのLアングルを5cm単位でカットしたもの、エアーユニット、モーター、ギア、リレー、リミットスイッチ、タイマー、光電&近接センサー、アンプ、ソケット、エアーパイプ、カッター、バルブなどを順次置けるようにします。それらを確保するには、設備を廃棄する前にこれらを再利用するようにして、使えるものはチームを組んで一気に解体して抽出するのもヒントです。そして区分して保管します。ある工場は、新規設備やラインを作る時にはこの在庫から必要な備品をまず使うようにして、不足したものだけを発注することで多くのコスト削減をしています。まだこれらには寿命があり、心掛け一つで寿命を最後まで全うさせたいものです。

 

 次回に続きます。

 【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

 

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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